「日本財団母乳バンク設立」―記者会見― [2022年03月30日(Wed)]
「日本財団母乳バンク設立」 ―記者会見― ※以下は、私の記者会見の発言内容です。 **************** お忙しい中集まり頂きありがとうございます。日本財団会長の笹川です。御高承の通り、日本財団は未来を背負う子どもの健やかな成長と、健全な精神・肉体をもって日本の将来を背負っていただきたいというのが活動の中心にあります。詳細を申し上げれば、特別養子縁組の推進や全国30ヶ所を超える難病を抱える子どもたちの施設作り、児童施設で育った子どもに対する奨学金制度の提供、18歳で児童施設を出た方が社会生活を自立的に行うための相談員の配置、少年院から出た子どもたちが再犯しないよう中小企業社長の協力による職親事業などです。2023年にこども家庭庁が発足する運びとなりましたが、日本財団はこども家庭庁が「仏作って魂入れず」にならないよう「子ども基本法」(仮称)の制定の必要性を訴える論陣を張っています。 子どもたちの世界は実に荒れています。日本財団による18歳の意識調査をご覧いただいているかもしれませんが、15歳未満で性の経験がある割合は22%を超えています。一方、性に対する知識がないために犯罪になってしまうケースもあります。また、「18歳は大人と思うか、子どもと思うか」という質問に対し、60%を超える日本の若者たちは選挙権を有しながら子供であると認識しています。同様の調査を世界8ヶ国で行いましたが、ほとんどの国で80%以上の方が大人と認識しているという結論が出ている中で、日本の調査結果は驚くべき数字であるといえます。18歳未満で不幸にして亡くなるケースがありますが、亡くなる原因の一番は病気でも交通事故でもなく自殺となっていることからも、子どもの世界が痛んでいるといえるのではないでしょうか。 日本財団では既に全国500ヶ所、将来的には1000ヶ所、子どもと大人が集える学校でも家庭でもない第三の居場所の整備を進めています。第三の居場所は、子どもが年配の方から昔話を聞く、将棋や碁を教えてもらう、また学生からサッカーなどのスポーツを教えてもらえる場所を目指しています。現実に、生まれてこのかたカレーを食べたことがない6歳の子どもがいらっしゃいましたし、1ヶ月お風呂に入っておらず公園の水道で体をふいている子どもいらっしゃいました。実に7人に1人の子どもが貧困家庭というのが日本の現実です。未来を背負う子どもがそれでいいのかと考え、日本財団は懸命に取り組んでいるところです。 日本財団母乳バンクの設立経緯ですが、たまたまテレビで水野先生が切々と超早産・極低出生体重児に母乳を提供する施設を運営しているが、なかなか拡大が難しいというお話をされているのを拝見いたしました。あくる日に日本財団から連絡し、協力させていただきたいと申し出て今日この機会を得ることが出来ましが、後程水野先生より詳しいお話があろうかと思いますが、毎年5000人を超える超早産・極低出生体重児が誕生しています。こうした赤ちゃんには人口のミルクよりも母乳を提供しなければなりません。人口のミルクではうまく育たないのです。これは命の問題です。そして未来を背負う子どもたちのことでもあります。 毎年、5000〜7000人の超早産・極低出生体重児が誕生するということですから、一人でも多くのお子さんを健康に育てることが日本人として、そして国民の義務であると考えています。先ほど来申し上げております通り、子どもの環境が悪化しております。その中ですべてを国に或いは行政に任せるという時代から、日本人が古来持っている助け合いの精神で活動していくことが重要であると日本財団は考え、活動範囲を広げています。余った母乳を提供して下さるというのは助け合いの精神そのものであると私は考えています。まさに、日本人が持っている心の優しさの原点がここにあるのではないでしょうか。 現在ドナー登録者数は260人ほどと聞いています。本日お越しの報道関係の皆さん、一人でも多くの方が、子どもを助けるためにドナーになって欲しいと発信いただき、皆様のお力添えを頂きたいというのが切なる願いであります。全国にはこうした超早産・極低出生体重児を預かる病院が250ほどあるそうですが、50の病院にしか届いていないと聞いております。日本全国250ヶ所、そして全ての超早産・極低出生体重児の命を助けるために、一人でも多くのお母さんからドナーミルクを頂戴したいと考えております。そして、全ての子どもたちが健やかに育つようにしていきたいというのが、日本財団が日本財団母乳バンクを作るにあたり、水野先生と合意に達した基本的な考え方です。重ねて申し上げますが、一人でも多くの方から母乳を頂戴し、全国250ヶ所、5000〜7000人といわれる超早産・極低出生体重児すべてにいきわたるよう、皆さんのご協力を頂きたいと思います。ありがとうございました。 ※3月17日付「世界日報」の記事を全文拝借しました。 **************** 毎年5000人を超える新生児が、28週未満で生まれる超早産児や1500グラム未満の極低出生体重児として生まれる。「日本財団母乳バンク」は、こうした新生児に人工ミルクではなく、ドナー(提供者)から集めた「母乳」をNICU(新生児集中治療室)に提供するサービスを今年4月から開始する。それに先立ち、16日、メディア発表会が日本橋小網町スクエアビル(東京都中央区)で行われた。 同財団の笹川陽平会長はあいさつで「子供たちの世界が荒れている」と話し、こども家庭庁に触れ「われわれは『こども基本法案』の制定も求める論陣だ」と主張した。また、母乳バンクが開設に至った経緯を説明し、「日本人が持つ助け合いの精神でドナーになってほしい」とドナー登録の協力を仰いだ。 同バンクの水野克巳理事長は「産みの母親の母乳が出るのを長時間待つことは、超早産児に悪い影響がある」とし、「経腸栄養の確立(母乳の投与)が早い方が、3歳時点での脳性麻痺(まひ)、視覚・聴覚障害、在宅酸素、認知機能障害の割合が低くなる」という研究結果を示し「母乳バンクの必要性」を解説した。 また、母乳バンクの仕組みを紹介した田中麻里・同バンク常務理事は「同バンクは日本で2カ所目の施設であり、将来的にはオーダーメイドのドナーミルクを提供できる世界初の研究体制を目指す」を語った。 実際に母乳バンクを利用した2人からビデオメッセージが寄せられた。母乳の提供を受けたレシピエントの親・池田望実さんは「すぐに母乳を与えられなかった辛(つら)さがあったが、母乳の提供によって産後の身体回復に専念できた。子供も3カ月後に退院し、順調に育っている」と感謝の意を表した。また、ドナーとして母乳を寄付したことのある古田南さんは「搾乳は大変なことではあるが、子育てのみで閉塞(へいそく)感があった私でも、困った親子を助けることができる。社会とのつながりを感じることができた」と振り返った。 根本匠衆院議員・衆議院予算委員長も出席し、「現在、政策テーマで取り上げてこなかったことに問題がある」と指摘し、「厚生労働科学研究で取り組みを続ける」と意気込みを語った。このほか、同ビル1階に新設された研究施設などの内覧が行われた。現在のドナーは約260人で、日本全国に行き渡らせるためには約2900人の登録が必要だという。 |