「再犯防止運動」―悪戦苦闘― [2021年06月16日(Wed)]
「再犯防止運動」 ―悪戦苦闘― 刑務所・少年院の出所者・出院者を、親のような立場になって経営者が雇用し、定着させて再犯を防止する「職親プロジェクト」を開始して9年目に入る。しかし、職親企業の経営者の懸命の努力にもかかわらず、定着率は残念ながら今一つ芳しくない。 出所・出院者に定職についた経験がないとか、加減乗除の計算すら出来ない学力、通常の勤務に耐えられない体力の者も多い。このところ毎月のように職親企業の経営者と話し合いと行っているが、皆さん、一人でも多く定職させたいと、意欲、熱意は十分である。 法務省におかれても、上川陽子法務大臣は三回目の就任で、この職親プロジェクトに大きな関心とご協力を下さっている。又、法務省の皆さんも、長い伝統的な管理体制から脱し、我々の努力を認めて下さり、徐々にではあるが、我々の活動に協力的である。しかし、更なる協力なくして年間約4500人の出所・出院者を定職に着かせることは難しい。 そこで今回、職親企業の声を集約して上川法務大臣に要望書の形で改善についてお願いに参上したわけである。法務省、日本財団、職親企業が一体となり、再犯防止のための長期雇用の実現と、出所・出院者の再チャレンジを実現し、世界のモデルにすべく、悪戦苦闘をしながら成果を上げたいと頑張っている。 以下は、上川法務大臣に提出した要望書である。 ******************** 法務大臣 上川陽子 様 日本財団 会長 笹川陽平 再犯防止・更生支援のための 官民協働の取組みに関する要望書 日本財団職親プロジェクトでは、年間出所・出院者約2万2千人のうち帰住・就労先がない者(法務省提供:4,524人/2019年度)の在所・院中内定の促進を図るため同プロジェクトにおける5ヵ年目標を設定、貴省との連携強化について、下記の通りご要望申し上げます。 記 <今後5ヵ年の目標> 日本財団職親プロジェクト参加企業1,500社による、4,500人/年の在所・院中内定 <要望事項> 1. 受刑者の就職先の選択肢を広げる職業体験の実施 現状:限られた職種から就職先を選択するため、適性にあわない事例が多く、職場 定着につながりにくい。 要望:介護、IT、飲食、宿泊業など、受刑者の関心が高い職種、雇用ニーズのある 業種の参入を得て職業訓練を実施する。 2. 面接時間の十分な確保 現状:在所・院内面接を実施しているが、時間が限られているため受刑者の性格や 人柄など人間性を見極める時間が持てない。 要望:受刑者に人間的なアプローチできる十分な時間として1時間程度の時間を 確保する。 3. 就労予定地(就職先)を考慮した帰住調整の実施 現状:企業が内定を出しても、帰住先が職場と異なることから採用できない。 要望:企業内定を考慮した帰住地の再調整を行える仕組みを導入する。 4. 協力雇用主制度登録企業への日本財団職親プロジェクト関連情報の提供 現状:更生支援に取り組む一方で、困難を抱える協力雇用主は少なくない。 要望:日本財団職親プロジェクトへの参加を促すために、雇用実績がある協力雇用 主制度登録企業1,500社(2019年10月1日時点)の情報を提供いただきたい。 5. 映像を使った職業紹介の導入 現状:求人票による就職情報だけでは、仕事経験の乏しい在所・院者にとって就労 のイメージがわかない。 要望:受刑者が仕事や職場のイメージを具体的に持てるよう、企業が作成する職業 紹介映像を所・院内で放映する。 6. パソコン技能取得のための継続的な学習支援 現状:就職後、パソコン技能が不足するために就労困難に陥る出所・院者は少なく ない。 要望:就労に必要なパソコン技能を取得させるための環境整備と、継続的なパソコ ン技能を取得するための学習支援を実施する。 7. 官民協働会議への参加 現状:日本財団職親プロジェクトの開始以降、官民合同勉強会(2014年)や、同 プロジェクト参加企業による連絡会議(2013年から合計91回)を通じて、 官民協働で再犯防止に取り組んできた。 要望:更生支援の更なる強化のために、官民協働会議を継続、本省・各施設責任者 の参加をお願いしたい。 ※就労支援の課題を共有、解決に向けて議論する連絡会議 (大阪、福岡:各3〜4回/年) ※職親企業代表者との戦略会議(日本財団:月1回) 8. 再犯防止を目的とした官民合同研究会(日本財団、法務省)の開催 要望:再犯防止の推進を官民が連携して実施するための施策を策定するための合 同研究会を開催する。 ※日本財団 職親プロジェクトのホームページも覗いてみて下さい。 |