「世界ハンセン病の日」―私の活動― [2021年02月15日(Mon)]
「世界ハンセン病の日」 ―私の活動― 毎年1月31日は「世界ハンセン病の日」であること、その日に毎年ハンセン病の差別撤廃のグローバル・アピールを発信していることは2月10日のブログで報告させていただいた。 その日の記録、世界の反響も留めておきたいと思う。 残念ながら日本のメディア皆さんの関心はあまり高くないようだが、世界各地では、この日に合わせて、ハンセン病にかかわる差別・偏見の撤廃を訴えるための啓発活動が様々な形で行われている。今年の世界ハンセン病の日に際し、私自身が携わった活動についていくつか紹介したい。 WHO制圧制圧大使メッセージ 私は2001年から「WHOハンセン病制圧大使」を務めている。毎年、世界ハンセン病の日に合わせて、WHOのウェブサイト上で親善大使としてのメッセージを発信している。今年は「コロナ禍においてもハンセン病問題が置き去りにされるべきではない。私たちは、ハンセン病問題のない世界を実現するために、ハンセン病を経験した患者・回復者・その家族らが尊厳を持って生活し、社会の一員として受け入れられるよう、あらゆる障害を取り除き、共闘していく必要がある。」と訴えた。幸いにもこのメッセージは国連や公衆衛生関係のニュース媒体に加え、スペイン、インドネシア、ナイジェリアなど、世界各地のメディアでも取り上げていただいた。このほかにも動画メッセージを作成しSNSに投稿したところ、300万以上のリーチがあり、多くの方々に関心を持っていただけたようである。 (詳細はこちらを参照) ウェビナー「誰のためのハンセン病ゼロ戦略か」 日本財団および笹川保健財団共催によるウェビナー「誰のためのハンセン病ゼロ戦略か」(1月26, 28〜30日開催)において、主催者を代表してあいさつをさせてもらった。このウェビナーには、世界17か国21のハンセン病当事者団体が参加し、コロナ禍におけるそれぞれの取り組みや、世界ハンセン病の日に向けたメッセージが紹介された。4日間で24か国から述べ300人が参加した。私は30年近く前から、ハンセン病との闘いおいて、当事者が中心的な役割を果たすべきと主張してきたが、冒頭のメッセージの中で「当事者以上にハンセン病のことを熟知している者はいない。彼らの言葉一つは、私自身の100の言葉より価値がある。ハンセン病ゼロの実現のために、まずは当事者の声に耳を傾けるべき。」という点を強調し、幸いにも多くの方々からご賛同をいただいた。 (詳細はこちらを参照) 「啓発用紙芝居」の制作・配布 インドでは、マハトマ・ガンジーが生涯をかけてハンセン病問題に取り組んだ功績を称えるため、毎年1月30日がハンセン病の日と定められている。インドは現在も世界の年間新規患者数の6割近くを占めており、私はこの国からハンセン病をなくすために少しでも貢献したいと思い、すでに60回以上訪問している。今回は、国内各村でASHAと呼ばれるコミュニティヘルスワーカーが患者発見活動に活用する「啓発用紙芝居」を、保健家族福祉省およびWHOと共同で制作した旨を発表した。これは、村人に対し、ハンセン病とは何か、治療を受けずにそれを放置してしまった場合、どのようなデメリットがあるのかなどを図柄で分かりやすく解説したものである。ハンセン病は早期発見・早期治療を行えば、障がいが残らず完治が可能なので、ASHAによる草の根レベルでの患者発見活動は、インドにおけるハンセン病対策の根幹に位置付けられるといっても過言ではない。インドには約80万人のASHAが存在するとされているが、まずはハンセン病が蔓延する6州(チャティスガール、オリッサ、ビハール、ジャールカンド、西ベンガル、グジャラート)において、2021年3月までに約31万部を制作・配布する予定となっている。本件については、大きな反響があり、インド国内の120以上のメディアに取り上げていただいた。 (記事の一部はこちらを参照) WHOは「2021〜2030年世界ハンセン病戦略」を発表し、その中でハンセン病ゼロ(病気、障がい、差別をゼロに)を目指す方針を新たに打ち出した。WHOの積極的な姿勢は評価できるが、この野心的な目標の実現のためには、まず一人でも多くの人たちにハンセン病に関する正しい知識を伝えていくこと重要だ。私はハンセン病問題の根本にあるのは「無関心」だと考えている。世界ハンセン病の日は、この世からハンセン病をなくす、つまりハンセン病を経験したことで苦しむ人々がいなくなる世界の実現に向けて、世界中の人々が共に手を携え、協力し合える貴重な機会といえる。私は、微力ではあるが、今後もこのような啓発活動へ積極的に携わっていきたいと考えている。なぜなら、この「無関心」を正すことは私自身のライフワークでもあるからだ。 |