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「新聞報道から」その103―元年 疫病禍でも前を向いて― [2021年01月29日(Fri)]

「新聞報道から」その103
―元年 疫病禍でも前を向いて―


とうほく本の散歩道
編集者・文芸評論家 小林 直之

 疫病禍に揺さぶられ続けた令和2年も、今日を含めて残りあと5日。令和元年の翌年が「感染拡大予防元年」「テレワーク元年」「アマビエ元年」等々になろうとは、1年前の今頃には思いもしなかった。

 本の世界も少なからず影響を受けた。勤務先の大学出版でいえば、4月の教科書販売が最初の関心事となった。各大学がリモート授業を導入する中、通学できない学生にどのように買ってもらえばよいのか、同業仲間とオンライン会議で情報交換を重ねた。

 幸いにも、全国の大学生協書籍部のおかげで通販手段が確保され、ほぼ従来通りに学生に教科書を届けることができた。リモートか対面かの授業形態には議論が残るが、今後その揺れの中で、教科書としての本の存在意義も新たに問われるのかもしれない。

 災い転じて…とも言えるような現象もあった。日本財団による18歳意識調査によると、「コロナ禍の影響で読書量が増えた」との回答が約25%に上った。外出自粛が読書量アップにつながったとも考えられる。

 ちょうどその外出自粛の頃に読んだミシェル・クオ著「パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会」(白水社)は、今年読んだ本の中で最も印象深い一冊だ。

 アメリカの貧困地区に教師として赴いた著者は、荒廃した学校で才能ある少年パトリックと出会う。その後、法律家を目指していた著者のもとに、パトリックが拘置所にいるとの報が入る。著者は面会に通い、共に本を読むことで心の再生を試みる。

 困難な状況において、本に記される文章が支えや希望となり、やがて生きる力になっていく。読んでいると、師である著者の言葉が、教え子のパトリックに深く優しく染み込んでいく様子が目に見えるようにも感じられる。本を通した師弟の信頼。読書人の魂に深く響く傑作である。

 「コロナ元年」となってしまった今年は、あまり良い年ではなかったと振り返る方も多かろう。私事ながら、秋には厚恩を受けた師を亡くした。それでも、前掲書が訴えるように、前を向いてまっとうに生きていかねばならない。

 違逆の道は久しく全(また)からず(「三国志」)。ゆく年を悔やまず、くる年に逆らわず、皆さま、どうぞ良い年をお迎えください。

※2020年12月27日付「河北新報」です。

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