「海と灯台プロジェクト」スタート―全国51灯台49市町村がネットワーク― [2020年12月03日(Thu)]
「海と灯台プロジェクト」スタート ―全国51灯台49市町村がネットワーク― 日本には現在、3000基もの灯台がある。幕末から明治維新期に建設が始まり、日本の海運、ひいてはわが国の近代化に大きな足跡を残してきた。しかしGPSなど航海計器の普及でその役割を終え、廃棄される灯台も増えつつある。後世に、その美しいたたずまいとともに文化的・社会的、さらに歴史的価値を引き継いでいく必要があるー。 そんな思いで日本財団では海上保安庁と協力、「灯台の日」である11月1日から同8日までを「海と灯台ウィーク」とするとともに、北海道から沖縄県まで51基の灯台について地元49市町村と連携して「海と灯台プロジェクト」をスタートさせることになった。今後3年間にネットワークを80基まで広げ、歴史の中で灯台が果たした役割と意義を後世に伝える一方、地域の振興にも役立てたいと思う。 役割を終えた灯台の廃棄が全国各地で進む中、国の文化審議会は10月16日、千葉県銚子市の犬吠埼灯台など4基を重要文化財に指定する答申を行っており、年内には活動中の灯台としては初めて重要文化財に指定される見通し。また連携する49市町村は、全国灯台文化価値創造プロジェクトで「恋する灯台のまち」として組織化されており、灯台の価値を見直す動きは全国的に広がりつつある。 東京・赤坂の日本財団ビルで10月26日に行われた「海と灯台ウィーク」発足記念イベントで筆者は「わが国が灯台を通じてどのように海を守ってきたか、その歴史を若い人に是非、知ってもらいたい」とプロジェクトに対する思いを語った。奥島高弘・海上保安庁長官も「敷地の一部を地元に提供し利活用してもらうことで、より多くの人に灯台の魅力を知ってもらいたい」とプロジェクトの発展に期待を述べられた。 「灯台の日」は、1868年(明治元年)11月1日にわが国初の洋式灯台である奈川県横須賀市の観音崎灯台が起工されたのを記念して定められ、新たに8日までを「海と灯台ウィーク」とすることで、灯台に対する関心の一層の拡大を目指すことになった。ウィーク期間中を中心に、灯台の利活用に関する幅広いニーズ調査やモデル事業、灯台サミットなど多彩な取り組みを進める計画だ。 灯台は映画「喜びも悲しみも幾年月」(1957年、木下恵介監督)や美空ひばりの「みだれ髪」など内外で多くの文学作品や歌にも取り上げられてきた。日本財団が今年夏、全国の男女1050人を対象に行ったアンケート調査では62%が灯台を訪れた経験を持つ。しかし、灯台に対するイメージは、どちらかと言えば「心が穏やかになる」といった情緒的な内容が多い。様々な取り組みを通じ、灯台が果たした歴史的役割や文化的価値に関しても広く光を当てていきたいと考えている。 |