「ちょっといい話」その133―パラアスリートらの手紙― [2020年05月22日(Fri)]
「ちょっといい話」その133 ―パラアスリートからの手紙― 日本財団は永年、日本は勿論、世界中の未来を背負う若者のためのさまざまな奨学金制度を実施してきた。 世界の著名大学69校、世界海事大学、アメリカのろう者の大学、世界海洋研究所、国連での研修、アメリカ・カナダ大学連合の日本研究者、児童養護施設で育った子どもたちへの「まごころ奨学金」等々である。 今回の手紙は、パラリンピック等の出場を目指すアスリートのために、日本体育大学に10億円を拠出して設置した奨学金の受給者の一人から、1枚の写真と共に近況報告が届いた。 障害がありながら、しっかりとした考えと目標を持って努力されている姿は清清しく、将来、ろう者の指導者として社会で活躍される姿を見守りたい。 ここに掲載させていただいます。 *************** 公益財団法人日本財団会長 笹川陽平様 私は日本財団様よりパラアスリート(クレー射撃競技)としてご支援いただいております、日本体育大学大学院生の宮坂七海と申します。いつも温かいご支援をありがとうございます。 私は生まれつき耳が聞こえません。第一言語は日本手話で、第二言語は書記日本語を使用している「ろう者」です。普段は筆談や身振りなどを用いて聴者とコミュニケーションを取っています。 小学5年生の時に大田区の東競武道館で豊村東盛先生に出会い、剣道を始めました。日体荏原高校を卒業後、日本体育大学に進学、剣道部に所属しました。大学2年生の時に日本財団笹川陽平会長様より日本体育大学グループに在籍する学生を対象にパラアスリート奨学金制度が設置されました。その際に、学校法人日本体育大学松浪四郎理事長からのご推薦もあり、クレー射撃を始めることができ、現在に至ります。 この度は、日頃の温かいご支援へ感謝の気持ちをお伝えしたく手紙を書かせていただきました。 私はクレー射撃競技を始めて2年経ちます。いつもご支援いただいているおかげでクレー射撃の練習も充分にでき、少しずつではありますが結果を残せるようになってきました。ジュニアオリンピック史上最年少、史上最高スコアで優勝することができ、全日本女子選手権では銅メダルを獲得することができました。また、JOC令和元年度オリンピック有望選手にも認定、今年度も同じくJOCオリンピック有望選手に認定していただきました。 常に道場の先生がおっしゃる「練習は不可能を可能にする」を信じ稽古を積み重ねたことにより、剣道で磨いてきた集中力をクレー射撃競技に活かせています。このようなチャンスを下さり本当にありがとうございます。 私の夢はろうの子供たち(ろう児)の自信を育てることができるようなロールモデルになることです。「聞くこと以外なんでもできる」「報われるまで努力する」という信念を持ち、「ろう者」として誇りを持ち聴者の世界で様々なことに挑戦する姿をろう児に見せることで、ロールモデル、可能性の道を示していきたいと思っております。 自分の実力で活躍してきたわけではなく、両親も先生方も仲間たちも沢山支えてくださったおかげで、今があります。その感謝の気持ちを忘れずに精進していきます。また大学院に進学した理由は、4年後のパリオリンピックに向けて更に挑戦していくためです。どうか引き続きご支援を賜りますようにお願い致します。 コロナウイルスの影響により大変な状況になっていますが、笹川会長もどうぞお身体にお気をつけてお過ごしください。 |