「軽団連?」―世にも珍しい組織― [2020年02月17日(Mon)]
「軽団連?」 ―世にも珍しい組織― 現在の「経団連」は、私が2018年8月13日のブログで指摘したように、今や「軽団連」とも言うべき古色蒼然たる組織で、日本の経済界の元締めとしては誠に存在感が薄く、往年の経団連とは比較するすべもない。 グローバリゼーションが進む今日に必要なスピードある経済政策の立案もなく、その実行を政府に要請・実行させる力のある組織でもなくなった。勿論、世界と戦っている素晴らしい企業が数多く存在することは否定しない。だが、経団連は経済界を代表する存在でありながら、その実は旧態依然、古色蒼然、養老院の如き組織であり、意思決定のスピード化が要求される今日、その存在感は誠に希薄である。 今年も安倍首相が経団連に賃上げを要請された。経団連は後日、今年の春闘について「業界横並びの集団的な賃金交渉は実態に合わない」とするとともに「賃上げ交渉は、個別企業の労使に全面的に任せる」との方針を打ち出した。今後、経団連は、労働者の賃上げに関与しないということだろうか。 今や日本企業は、現金、預金などに限っても200兆円を超す資産を持つ。本来、投資、株主への配当、労働者の賃上げなどに使用されるべき金である。企業側には100にも上る理由はあろうが、国民からは“金の使い方を知らない無能な経営者”と揶揄する言葉も聞こえてきそうだ。 1月25日の日本経済新聞によれば、上場企業の役員報酬と従業員賃金の格差は4年連続で拡大して4.2倍に達しているという。武田薬品工業の格差は44倍にも達しており、15倍以上の格差がある上場企業は、トヨタ自動車、資生堂など50社にも上る。経団連加盟各社の従業員賃金が横ばい傾向をたどる中、役員たちが我が世の春を謳歌していることにもなる。 政府の総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍首相)は、厳しい状況にある若手研究者の環境改善に向け、企業に採用増を促すという。経団連加盟各社は障害者雇用に関しても十分とはいえず、仮に採用されても働く環境の整備は遅れている。最近、経済同友会から経済・財政・社会保障の長期推計を担う「独立財政機関」を参議院の下に新設する提言が発表された。これに対する経団連のコメントは寡聞にして知らない。 自ら政策提言が出来ないのなら、同友会に協力して実現すべきではないだろうか。何もしない、何もできない巨大組織・経団連の存在意義が、今、問われているのである。 ここにその実態を示す資料の一部が公表されているので、提示してみたい。 特に異様なのは組織形態である。名誉会長が5名、会長 中西宏明氏(74才)に、何と18名の副会長(66才から74才)が存在し、その下に事務総長、専務理事2名、常務理事3名がいる。さらに役割は不明だが、審議会なるものが存在し、議長 古賀信行氏(70才)の下に副議長18名が鎮座しておられる。 政策活動については下記のような各種委員会があり、一つの委員会になんと3名の委員長がおられる。裁判も合議の場合は3人の裁判官が担当するが、裁判長は一人である。3名の委員長で、どのように最終判断を下すのだろうか。更に「官僚」に比して「民僚」とも呼ばれるプロパー組織があり、その上に18名の副会長・・・考えただけでも頭が痛くなる。この組織の形態を見ると、経営者たちが陰口で「何も決められない経団連」と揶揄しているのも、「さもありなん」と思う。 下記に、委員長が2名以上の委員会を列挙してみた。 カッコ内は委員長の数である。 ・震災復興特別委員会(2名) ・スタートアップ委員会(3名) ・経済財政委員会(2名) ・行政改革推進委員会(2名) ・社会保障委員会(3名) ・人口問題委員会(2名) ・税制委員会(2名) ・金融・資本市場委員会(3名) ・産業競争力強化委員会(2名) ・地域経済活性化委員会(3名) ・農業活性化委員会(3名) ・観光委員会(2名) ・都市・住宅政策委員会(3名) ・生活サービス委員会(3名) ・イノベーション委員会(3名) ・デジタルエコノミー推進委員会(2名) ・サイバーセキュリティ委員会(2名) ・知的財産委員会(2名) ・資源・エネルギー対策委員会(2名) ・環境安全委員会(2名) ・企業行動・SDGs委員会(3名) ・ダイバーシティ推進委員会(2名) ・消費者政策委員会(2名) ・オリンピック・パラリンピック推進委員会(2名) ・社会基盤強化委員会(2名) ・教育・大学改革推進委員会(2名) ・雇用政策委員会(2名) ・外交委員会(2名) ・通商政策委員会(2名) ・開発協力推進委員会(2名) 更に地域国別活動 ・アメリカ委員会(3名) ・カナダ委員会(2名) ・ヨーロッパ地域委員会(2名) ・アジア・大洋州地域委員会(2名) ・南アジア地域委員会(2名) ・中国委員会(2名) ・日本・インドネシア経済委員会(2名) ・日・タイ貿易経済委員会(2名) ・日本ベトナム経済委員会(3名) ・日本ミャンマー経済委員会(2名) まだまだある。香港、中南米、中東、アフリカ、ロシア等々である。地域・国別活動は、企業進出・投資のために必要不可欠な委員会だろう。しかし、2名とか3名の委員長の他に委員もおられるわけで、「何も決まらない、決められない経団連」は、その組織形態にも原因があるのではないか。 特別活動として ・21世紀政策研究所 ・むつ小川原開発推進委員会 なる不思議な名存実亡の組織もある。 委員会は病気の話か孫自慢、「会議は踊る」ではなく「会議は眠る」となってはいないか? 時代に即した組織の大改革こそ、中西会長の最大の使命ではないだろうか。 |