「究極のおもてなし」―天皇陛下お茶のお招き― [2019年11月08日(Fri)]
「究極のおもてなし」 ―天皇陛下お茶のお招き― 秋晴れの11月5日、ホテルオークラで令和元年度の文化功労者顕彰式が行われました。21名の文化功労者の1人として栄誉を賜り、その後皇居において天皇陛下のお茶のお招きがありました。 14:00に皇居宮殿に到着し、北溜にてしばらくの休憩の後、連翠(南)の間で文化勲章受章者6名と共に文化功労者も一列に並び天皇陛下のお出ましを待ちます。合図があり、侍従の先導のもと天皇陛下、皇后陛下、皇嗣秋篠宮殿下、皇嗣妃、眞子内親王、佳子内親王の順にお部屋に御成りになり、整列する1人1人にゆかしい笑みで労をねぎらわれました。1人1人とのご挨拶が終ると「努力を重ね大きな成果を上げられたこと誠に喜ばしく、今後も健康に留意して活躍されるように」との短いお言葉の後、連翠(北)の間に移り、お茶会となります。 事前のご案内にもありましたが、お茶会という名のフランス料理のフルコースです。丸テーブルが6卓あり、1卓に7人が着席します。私のテーブルは石井幹子(照明デザイン)、田渕俊夫(日本画)、大林宣彦(映画)、宮城能鳳(組踊人間国宝)の各氏で、文化勲章受章者6人に文化功労者20名、宮内庁長官、侍従長、女官長、文部科学省幹部も席に着き、総勢42名の始まりです。 皇族方はおふた方一組となられ6卓のテーブルを順番にお廻りになられます。私たちのテーブルには、はじめに美しい白襟紋付のしとやかなお姿に笑みを浮かべて眞子内親王と佳子内親王がご着席下さり、話が弾みました。 5人の活動内容を良く知っておられるのには驚かされ、20分ほどのご歓談で次のテーブルに移られると同時に皇嗣秋篠宮殿下と皇嗣妃がおみえになり、話題の豊富さと専門的なお話しに花が咲きました。私の右隣りは沖縄の宮城能鳳さんで、首里城の火災も話題となりました。 あまり天候にめぐまれない日が続きましたが、この日は手入れの良く行き届いた庭越しに見る雲ひとつない秋天は感動的でありました。 最後に天皇陛下と皇后陛下がご来臨下さり、日ごろから努めて各方面に心を寄せていらっしゃるのでしょう。着席者の功績をよくご存知で、話は尽きないほどでした。皇后陛下は連日の激務にもかかわりませず、終始笑顔を絶やさず、会話を楽しんでお聞きになっているご様子で、ご健康のご回復に涙を禁じ得ませんでした。 秀でたワインに素敵なフランス料理を賞味しながら、やんごとなき方々とテーブルを共にさせて戴いたことはこの上もなく有り難いことで、人生80才、至福の一時でした。両陛下をはじめ皇族方はほとんど食事をなさる間もなく、我々の話にじっくり耳を傾けられているお姿は究極のおもてなしであり、万感胸に迫るものがありました。 秋天まさに暮色に変わる頃にお開きとなりました。天皇陛下皇后陛下をはじめ皇室の弥栄(いやさか)のご繁栄をお祈りしながら暮れ泥む皇居を後にしました。 |
