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「フォーラム2000」―プラハでの国際会議― [2011年11月21日(Mon)]



「フォーラム2000」
―プラハでの国際会議―


チェコのハベル大統領(当時)と初めて「フォーラム2000」を開催してから今年で15回目となった。

9月11日のニューヨークの事件直後は全て国際会議が中止されたが、我々はこのような時期こそ開催意義があるとのことで意見が一致し、開催したこともある。今やプラハを中心に、知識人の間では秋の名物といわれる会議に成長した。

ただ、ハベル大統領の健康は思わしくなく、出席可能か否か、主役の動静に気をもんだが、昨年より一回り小さくなられたが元気に出席された。小さな待合室で式典直前にチェコの地酒「ヘベレスカ」を一杯引っかけるのも恒例となった。

恒例の教会での開会式の筆者のスピーチは下記の通りです。

******************


オープニング・スピーチ
原文・英語

2011年10月9日


ハヴェル氏とともに、私達の社会が直面する構造的かつ根本的な諸問題を対象にした議論の中から希望ある将来を見出そうと、1997年にこのフォーラム2000を立ち上げました。今回で15回目となるこのフォーラムが今日まで続いたのは、ご参加いただいている皆様、そしてこれまで本フォーラムにご協力いただいた方々の情熱と信念によるものだと確信しています。

世界には経済大国として急速に台頭している一方で、市民社会としての発展が追い付いつかず、人権弾圧や不正が横行している国があります。また、市民が圧政を倒したものの民主主義や法の支配が確立されていないために、社会混乱による犯罪や不正、暴力などが蔓延している国もあります。しかしこのような状況をどうにか打開し自らの意思に基づく社会を形成しようと、それぞれ国民は民主主義や法の支配の確立に向け歩みだそうとしています。

このように、市民社会の実現を目指して奮闘している市民が民主主義と法の支配に基づいた国をどのように作っていくのかということについて、みなさんの経験や知識をもってこの会議の中で深化させていっていただきたいと思います。

またその一方で、民主主義と法の支配の制度が確立し、成熟した市民社会が形成されたからといって、そこに住む市民はその状況に安堵していてよいのでしょうか。法の支配が確固たるものになると、市民は法律に守られ、一見するとその中で自由を享受しているように思われます。しかしながら、高度に細分化された法律が市民の後見人となり、市民社会の確立のための手段である法律が目的化し、逆に市民社会の健全な発展を妨げてしまう可能性もあります。このような社会では寛容、自主性、多様性といった市民社会の健全な発展に必要な要素が危うくなってしまいます。これをトクヴィルは「穏やかで平和な隷属状態」と表現したのかもしれません。

その意味で、フォーラム2000のように政治、科学、宗教など様々な分野の指導者が集まるこの会議で民主主義と法の支配について考察するということは、非常に重要なことです。フォーラム2000は直接的な対処療法を提示するのではなく、諸問題の根源を探る事を特徴として継続してきました。今年の会議も民主主義と法の支配という大きなテーマの中で健全な市民社会の在り方について深く掘り下げて考え、自らの意思による社会形成を目指している市民、そして成熟した社会で「穏やかで平和な隷属状態」に陥る危険性のある市民にとって有益な議論が展開されることを切に期待しています。
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