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「外交とワインと庶民感覚」その1 [2010年10月27日(Wed)]

蔵書よりもワインが大切!?(写真左・ピーター・マサイヤス教授)


「外交とワインと庶民感覚」その1


フランス滞在中に目にした日本の新聞に「会計検査院は海外にある大使館や領事館など、在外公館に対する会計経理の検査結果を発表した」とした上で、「三つの公館が会食に出す高級ワインなどが年間使用量の5倍以上となる計16,770本所蔵していた」と問題視した記事が報道されていた。

また「海外211ある公館のうち、大使館29、領事館15、政府代表部7の計51公館で計53,000本と、年間使用量の約2倍で、うち4,000本は1本2万〜3万円以上の高級ワインだった」と、いわゆる『庶民感覚』といわれる目線で批判している。

一般の読者がこの記事を読むと「外交官は贅沢をしていてけしからん!」ということになる。しかし、外交に庶民感覚は通用しないのである。

私はワインの専門家でも外交の専門家でもないが、日本人としては海外に出張する機会が多く、要人や外交官と接する機会も多い。そして夕食の席では、特にヨーロッパにおいては、天気や音楽、美術展などの話と共に、ワインの話が当たりさわりのない話題として話される。

どこの国の外交官も、毎日毎日、パーティーと夕食会の連続である。外交官は酒と胃袋が強くないと勤まらない職業といってもいいほどである。したがって、食事やワインには精通していて当然である。

日本の在外公館においても、首相、大臣クラスから、社会的に影響力のある人々をしばしば招いて夕食を差し上げ、人脈を拡げるのが重要な外交手段である。日本料理はともかくとして、どんなワインが出るかは招いた客に注目されるところで、高級ワインでも年代物が出されるとその一点で客は大満足となるわけで、手塩にかけた日本料理に加え、いつも高級ワインを出すわけにもいかないだろうが、ここ一発、賓客の場合には、夕食会が思い出に残るようなワインを出すべきである。

在外公館での食事が客の思い出に残ってこそ接客が成功したことになるわけで、招待客の格に合わせたワインの選択は、大使のもっとも苦労されるところである。

報道によると「年間使用量の5倍も所蔵していた公館が三カ所であり、2倍のところも多く、4,000本は1本2万〜3万円の高級ワインであった」という。ワインは通常購入してから熟成させるために3〜5年はワインセラー(貯蔵庫)に保存するもので、当たり年といわれる優秀なワインは、余分に買い入れておかなければならない。したがって、年間使用の5倍では少ないのである。

私は今回の記事で、在外公館のワイン貯蔵の貧弱さに驚いた次第である。以前、外務省の飯倉公館には贅沢なワインがありすぎると批判されたことがある。もっての外で、当たり年や安い時に大量に買い入れた担当者は評価されるべきで、このことが批判の対象になったことは、世界の外交官の世界では物笑いになっていることだろう。

かつて中国の胡錦濤国家副主席来日の折、小渕首相主催の夕食会のワインは、何年物か忘れたが、シャトー・ラトゥールであった。失礼ながら、当時の中国人にとっては猫に小判であったかも知れないが、出席者はその意味を理解していたはずであり、私も中国人によく説明した憶えがある。

ご指導いただいた野村証券の田淵節也元社長に、彼の誕生年のワインを二本進呈したことがある。田淵氏は、来日した初対面の大手取引先のボスがワイン通であるとの情報を得て夕食にこのワインを出したら大喜び。ワイン話に花が咲き、和やかな雰囲気となったところで「もう一本同じものがあるから飲んでほしい」と所望したところ、丸い目をさらに大きくして「このワインを二本も持っているなんて信じられない」と言い、大満足で帰って行ったという。もちろん商売は大成功であったことは言うまでもない。

また、極端な話ではあるが、ソウル・オリンピック招致成功の裏で活躍した人の話である。フランスの最高級レストランでの接待で6人ほどで約6万ドルの請求書にはさすがに驚いたと、当人は苦笑いをしていたが、店が保存している最高級のワインで接待し、その懸命な努力は相手を説得するに十分であった。「考えてみれば、ソウルに招待するより結果的に安かった」と述懐していた。

石原慎太郎都知事が東京オリンピック招致を発表された折、これは失敗に終わるとブログで明言したことがある。日本には国際オリンピック委員会の委員に人脈がないこと。その上、委員を満足させる接待費のないことを理由に挙げた。

亡父・笹川良一を尊敬していた、当時、世界一のワインコレクターいわれていたサンフランシスコ郊外の歯科医・ベン・イチノセ氏は、亡父がワシントンD.C.を訪問することを知り、わざわざホテルのレストランに連絡を取り、料理にマッチするワインを持参してくれたことがあった。

反対に、或る国の日本名誉総領事を勤める某氏(その国の人)は、私を自宅に招待してくれ、自慢のワインコレクションを小一時間案内、説明してくれた。意地汚い私は、夕食にどんなワインが出るのか楽しみにしていたら、平凡なワインが出てきて、その人の人格まで疑ってしまったことがある。

かつて、イギリスのケンブリッジ大学の重厚な図書館での夕食会でのこと、ピーター・マサイヤス教授(皇太子殿下の教官)は、「万一ここが火災になった場合は、貴重な図書よりも地下のワインを先に避難させることが第1番ということになっている」とジョークを飛ばされた。

外務省にも正すべきことは多々あるかもしれないが、外交は庶民感覚とは無縁なもので、国家の代表として誇りを持って外交を展開できるように配慮しなければならない。

「角を矯めて牛を殺す」ことになってはならない。



(次回10月29日は、「外交とワインと庶民感覚・その2」です)
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コメント
笹川陽平 様

高尚なテーマから私の好きな俗っぽいテーマまで
一応パスしないで毎回ブログを拝見しております。

外交とワインのテーマについて一言述べさせて戴きます。
私自身、鹿児島出身で1970年にパリの大学に留学し多くの
キャリアを積んでまいりました。
民間外交満として現在もアラブ、ロシアを中心に飛び回っております。
貴殿は以前のブログでも外務省外交官を称賛しておられましたが、それは貴殿が海外へ視察される先々で現地日本大使館がVIPとしての便宜供与を受けておられるから
Posted by: 赤堀憲夫  at 2010年10月29日(Fri) 12:17

まったく同感であり、会計検査院は本来、
褒めるべきを批判していると思います。

同時に、それを鵜呑みに報道している
メディアの愚かさも批判されるべきではないでしょうか。

私の尊敬する友人に、山中湖畔に、「ワインセラーのための家」を持っている人がいます。この人から多少手ほどきを受け、外国人との間で極端に恥をかかないよう努めていますが、もちろんまだまだ勉強が足りません。

外交官の言う職業の友人がたくさんいますが、
失礼ながら、中には、もう少しワイン文化を勉強されたほうが
お国のためになる方もいます。

会計検査院のみなさんも、同様に、「庶民感覚」だけではなく「欧州文化感覚」「国際感覚」「世界の常識」を学習されてはいかがでしょうか。
Posted by: 吹浦忠正  at 2010年10月28日(Thu) 23:53

笹川先生の「外交とワインと庶民感覚」楽しく拝読させていただきました。外地に住んでいますので、今の「沈没日本」が心配でなりません。大使館の高級ワインの数が多すぎるとか日本で騒がれてることに違和感を感じていました。外務省在外公館の責務に、外国の情報収集という重要な任務があります。第二次世界大戦は情報戦で日本が負けたと言われていますが、21世紀現在の日本がどれだけ情報収集能力があるか疑問です。今だに島国根性。まるで世界の情勢を見る判断がありません。英国人やアメリカ人を凄い僻地、山、ジャングルで会いますが、日本人にあったことがありません。いまだに有名な観光地だけを見て、外国を知った気分になってるだけです。まったく、世界の情勢に疎いです。

日本のメーカーが努力して画期的な製品を世界に出しても、日本の製品が世界の統一規格になりません。それは、日本政府の外交による根回し外交がまったく足りないからです。今まで素晴らしい技術が埋もれています。21世紀こそ日本は、最先端技術と情報で生き残る事しかありません。

笹川先生は、いろんなケースを紹介し我々に警鐘を鳴らしておられます。何人の方が理解するか解りませんが、先生の深い配慮に敬服いたします。

在インド:蒲 章 則
Posted by: 蒲章則  at 2010年10月27日(Wed) 11:05

とても関心を持って拝読しました。外交も含め国際的な国の付き合いや、他国と競争しイベント誘致をするため世界の人との人脈作りをするには、ワインとともに、一緒に食をすることが必要です。ワインの話と少しずれますが、アジアでも欧米でも一定の水準を維持する接待費が必要不可欠であり、特に、飲食の予算が厳しく制限された場合には貧弱なものになります。接待が裏目にでるのならやらないほうがいいことになります。自腹をきってやっている人もいますが、それは美徳でもなく本来的な仕事をするのであれば十分に手当てすべきものでしょう。飲み食いに税金を使うことのアレルギー反応が過敏すぎるのは、過去に、いろいろ問題があったためと思いますが、ワインに限らず、飲食に関して庶民感覚だといって報道が批判するのはいかがなものでしょうか。国際的な付合いに関しては、国際的な常識や視点から大人の報道をしてもらえればいいと思います。
Posted by: 原 祥隆  at 2010年10月27日(Wed) 10:57

 ご指摘の通り、考えてみれば、この問題への単純な批判は当てはまりませんね。私も、二人の子供たちが生まれた年の赤ワインを、上の子の分はパリに住むいとこの家に、下の子の分は我が家の倉庫の奥に保存していることを思い出しました。上の子のワインはもう17年、下の子のワインも14年経っています。豆腐はすぐ食べる、ワインはすぐ飲まない、ということは常識でしょうし、相手にマッチしたワインを出すことがご馳走であることも当然です。最近、ボトルワインをあまり飲んでいないので、そんな感覚を忘れかけていました。(そういえば、先月会ったイタリア人の友人(軍の将官です)が、2006年のトスカナのワインは大当たり、と言っていました。)
Posted by: 橋本 靖明  at 2010年10月27日(Wed) 10:37

外交の世界の事が理解できました
ワインも大切な外交ですね
萩原
Posted by: 萩原  at 2010年10月27日(Wed) 09:33

政治とワインと庶民感覚ーーこれは最近の報道のあり方に対する鋭い警告と揶揄として面白く拝読いたしました。庶民感覚とか国民のためという言葉遊びに終わり、何が本当に重要で何を優先すべきかを十分に物事を検証して、国民生活を向上させ、この国の政治・経済・文化3面がバランスがとれた世界一のモデル国に進化させるために、より優れた報道のあり方が、今、日本に求められていると思います。
報道の世界ももっともっと世界を広く見て報道して欲しいと
念願いたします。
Posted by: 千田俊章  at 2010年10月27日(Wed) 09:26