「国会図書館デジタル化」
―日本財団―
日本財団は、長く社会福祉施設の障がい者就労支援問題について努力を続けてきた。
当初は、福祉施設が運営するクリーニング屋、パン屋、印刷所、お菓子屋の運営等に協力してきたが、いずれも「かわいそうだから」との一時的同情だけで、長続きしなかった。
そこで一般の会社と競争できる商品を販売する福祉施設に日本財団の登録商標である「真心絶品」を付与して努力してみたが、結果的には失敗だった。
福祉施設で働くB型障がい者の1ヶ月給与の平均は1万5,000円前後であり、何とか3倍にしたいとさまざまな努力を傾注し、部分的には花屋さんでの勤務やお菓子屋さんでの勤務など、外勤の方々の給与は3倍程度の3万円〜4万5,000円程度は確保できたが、全国的にはほんの一部でとても成功とはいえなかった。
現在はワインの製造やビニールハウスでの野菜を全量引き取る企業と契約し、建設費の負担は日本財団が負担する実験的プロジェクトも実施中で、障がい者は国の援助で生活するという常識から、障がい者の給与を月額10万円程度にすることによって国からの支援で生活するのではなく、自立してわずかでも納税者になることで厖大な国の社会福祉費を軽減させたいと悪戦苦闘している。
最近、国会図書館のデジタル化の作業を障がい者に請け負ってもらう仕事が軌道に乗りかけてきた。私の夢が実現可能になりつつあるが、ここまでの道のりは長く、時間はかかったが着実に進んでいることを報告したい。
前段が長くなったが、山田太郎参議院議員のご協力もあり、国会図書館の膨大な書籍のデジタル化を社会福祉の一環として障がい者の仕事にしたいと努力しているところである。
当初、この話を国会図書館の担当者にしたところ、大切な書籍のデジタル化を障がい者に?と「信じられない」という顔で返答された。日本財団では1億円のスキャナー機器を購入し「コロニー東村山」で練習を実施。それを見学した国会図書館の担当者からは、驚きと共にこれなら実施可能ですとのお墨付きを戴いた。
そこからが又一山あり、従来大企業が入札でこの仕事を受注していたところに日本財団が新規参入となったわけで、実績もないところから当初は最低限の15,640,000円しか受注できなかった。しかし、国会図書館のデジタル化は5ヶ年計画207億円の事業であること、将来は国会は勿論のこと裁判所、地方自治体の保存すべき資料のマイクロフィルム化を考えると仕事量は無限にあると推察される。これが障がい者の仕事になれば、平均給与月額1万5,000円前後が10万円近くに増額可能になり、国からの援助で生活するのではなく、納税者としてプライドをもって生活することが出来ると期待が広がる。
日本財団は、障がい者の仕事としてWTOの公正な入札制度の例外として厚生労働省、外務省、財務省の了解を得て特別入札の許可も得た。これからは現在ある「コロニー東村山」宮城県の共生福祉会、福岡県のセルプセンター福岡をはじめ、全国の福祉施設に約1億円の機械を配備して日本における貴重な資料のデジタル化を就労支援事業所で作業できる体制を早急に確立したいと願っている。
以下1月29日付の世界日報で取り上げられました。
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国立国会図書館が進める蔵書のデジタル化の一端を、就労支援施設で働く障害者が担っている。スキャンやデータ管理など専門性のある業務を全国8施設が受託し、計3万冊余りを手掛ける。公共性の高い仕事に「やりがいは大きい」と胸を張る。
東京都東村山市の就労支援施設「コロニー東村山」では昨年12月中旬、暗室に置かれたスキャナー機器の前で、身体や精神に障害のある10人ほどが黙々と作業に取り組んでいた。「余白は10ミリ以内」といった決まりの下、見開きの撮影を繰り返し、1時間で1、2冊をこなす。
下半身にまひがあり、車いすで生活する宮川健人さん(40)は「紙面にほこりがないか、本が傾いていないか、注意する点は多い」と話す。スキャン画像の検査や目次データの作成など、障害者ら延べ約50人が作業に当たっている。
国立国会図書館に所蔵された本のスキャンに取り組む女性
上部設置のカメラで見開きを撮影する作業を繰り返す=2023年12月14日
東京都東村山市の「コロニー東村山」
国会図書館は個人のパソコンなどで蔵書を閲覧できるよう、2000年から徐々にデジタル化を進めてきた。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による利用制限を機に一層のアクセス向上を求める声が高まり、21年度から5年間で100万冊以上をデジタル化する事業計画を策定した。
もともと印刷業を手掛けてきたコロニー東村山は、事業を受注した日本財団(東京)の再委託先として業務を始めた。高橋宏和所長は「デジタル化には既存の業務にはない新しい魅力がある。正確さが求められるが、障害者が中心となり参加できる仕事だ」と強調する。
培ったノウハウを共有し、再委託先は全国の他の施設にも広がった。23年度は計約3万2000冊を受託し、コロニー東村山ではうち約5000冊を受け持つ。23年5月から同施設に通い始めた奥泉健一さん(38)は「スキャンした本が多くの人に見られる。やりがいは大きく、達成感もある」と話す。
今後は大学図書館や民間企業からの受注も目指しており、高橋所長は「安定した仕事を確保し、利用者の自立や賃金の向上につながれば」と期待を寄せる。