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ソーシャルアートラボ志賀島プロジェクト2018

九州大学ソーシャルアートラボは、2015年の発足以来、地域と関わるさまざまなプロジェクトを実施してまいりました。2018年度からは博多湾に浮かぶ志賀島を舞台に、地域の方々と協働しながら「海と神話をつなぐ〜志賀島プロジェクト2018」を開始します。
歴史ある志賀島の魅力を伝えるとともに、生命の源である海と関わり、現代に生きる我々が海と再びつながれるようなプロジェクトを目指しています。


福岡市博物館との共同企画を実施 [2018年11月20日(Tue)]
11月17日、九州大学大橋キャンパスのデザインコモンにて、志賀島自由大学の3回目のワークショップと4回目のレクチャーを開催しました。講師を務められたのは福岡市博物館の学芸員のみなさんです。専門的な観点から古代の塩作りの解説と実演、出土物等に裏付けられた弥生〜古墳時代の博多湾周辺の人々の暮らしについてお話ししていただきました。

ワークショップの講師は福薗美由紀さん。万葉集の中には志賀島の海人が「藻塩焼(もしおや)き」をしている様子が残されていることを紹介したうえで、古代の塩作りの複数の方法について話されました。海藻を焼いて塩を取る方法、海藻を積み重ねながら塩分濃度の濃い海水を作って塩を作る方法などいろいろ考えられるが、昔の人が実際にどのような製法で藻塩を作っていたか、はっきりとはわかっていないそうです。

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今回のワークショップでは、あおさで作った藻塩と、ひじきでつくった藻塩、岩塩、食塩などの食べくらべなども行い、参加者はその香りや色、味の違いに驚いていました。

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最後は、実際に塩分濃度をあげた海水をコンロで煮詰めて塩を取る実験も行いました。水分が蒸発するにつれて粘り気のあるテクスチャーへと海水が変容し、独特の磯の香りが漂う中でだんだんと塩がかたちになっていく様子を、まさに五感で楽しむワークショップとなりました。

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後半は、森本幹彦さんから弥生時代〜古墳時代にかけての博多沿岸の砂丘の実態と、そこに住む人々および海外との交流の様子について詳しくお話しいただきました。

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福岡市内の西新町遺跡からは、東アジアのものだけでなく、西アジアからもたらされたと考えられるガラス玉なども出土したそうです。また市内の諸岡遺跡からは、ゴホウラ貝を加工した装飾品(貝輪)なども出土しているそうです。男性の権威の象徴としても、海でとれたものが使われていたのです。博多湾沿岸が古くから日本の玄関口として機能し、海を介した活発な交流を行っていた様子がありありと見えてくるレクチャーでした。

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Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 20:53 | イベント報告 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
海中録音ワークショップ [2018年11月15日(Thu)]
11/11、志賀島での海中録音ワークショップ、好天に恵まれて無事に終了しました。まずは講師の岡崎峻さんから水中マイクの使い方を習った後、いざ海へ出発。今回は釣竿の先に水中マイクをつけて、海中の音を録音してみます。ヘッドホンをつけて、身長をはるかに超える長い釣竿をもって歩く子どもの姿は頼もしく、ワクワクに溢れていました。

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海中にマイクを沈めると、パチパチ、カチカチした音が聴こえてきます。それを聴いた子どもの1人は「応援しているみたい!」と感想を教えてくれました。また別の子どもは「これ知ってる。僕がお魚だったときに聞いた音!」と話してくれました。

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海からもどった後は、音の正体について岡崎先生が教えてくれました。これは「テッポウエビ」の音だったのです。パチパチはじけるようなこの音は、専門家の間で「天ぷらノイズ」と呼ばれているそう。また、アシスタント講師の帯屋健之さんが、佐賀県や長崎県で録音した水中音も聞かせてくれましたが、そこでも同様にテッポウエビの音がしました。水中は空気中よりもはるかに音が伝わりやすいので、九州・日本近海ではだいたい同じような音がするのだそうです。

子どものまっすぐな感性に触れて、大人も童心にかえり、ともに海と触れ合う楽しい1日になりました。
Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 20:42 | イベント報告 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
10/27 レクチャー報告 [2018年10月29日(Mon)]
10月27日(土)、九州大学大橋サテライト「ルネット」にて、志賀島自由大学第2期の初回レクチャーが開催されました。講師は、志賀海神社権禰宜で今回の志賀島自由大学の名誉学長の平澤憲子さん。レクチャーのテーマは「聖地としての志賀島」でした。

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今回の講演ではまず、志賀島の古い地名と歴史との関わりについてお話ししていただきました。志賀島には「高天原」や「舞納ヶ浜」といった、神話や歴史と深い関わりのある地名がいくつもあるそうです。また、志賀島が地質学的にもとても面白い土地という話もありました。志賀島は全周11kmくらいの島ですが、赤瀬、黒瀬、白瀬という浜があり、砂の色がまったく違うそうです。さらに、志賀島の歴史的重要性についてもお話が及びました。たとえば、万葉集には志賀島を歌ったものが23首もあるとのこと。そのうちの10首を刻んだ万葉歌碑が志賀島の各地にあるそうです。


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後半は、ソーシャルアートラボの知足美加子先生、藤枝守先生が加わってクロストーク。志賀海神社で行われている「山ほめ祭」に話が及びました。海を繁栄させるにはそこだけにフォーカスするのではなく、山を愛で、山を守ることが重要という循環思想にもとづいた祭りで、毎年4月と11月に開催されています。知足先生も平澤さんも、自然と人がいかに共生するか、自然は支配するのではなく調和していくものだという話をされました。

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Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 01:00 | イベント報告 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ワークショップ「阿知女作法をうたう 〜沖津宮・海割れ参拝」 [2018年09月30日(Sun)]
9月9日は、午前中のレクチャーに続いて、参加者が志賀島にゆかりのある二つの神楽歌、「阿知女作法」と「千歳」に挑戦しました。博士と呼ばれる楽譜を片手に、講師の石川さんの真似をしながら練習を重ね、1時間経過する頃には、だいぶ音の動きに慣れたようでした。

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練習でだいぶ歌えるようになった後は外へ。この日の干潮時刻に合わせて全員で海の先に浮かぶ沖津宮を参拝し、そこでも「阿知女作法」を唱えました。

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Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 13:37 | イベント報告 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
第二回レクチャー「阿知女作法と阿曇族」が終了しました [2018年09月25日(Tue)]
9/9(日)、休暇村志賀島「万葉の間」にて、志賀島自由大学のレクチャーとワークショップを同日開催しました。
午前はまず「阿知女作法と阿曇族」というテーマでレクチャー+クロストーク。志賀海神社権禰宜の平澤憲子さんより、海の民「阿曇族」の長い歴史と高度な文明について、また全国に広がっていった阿曇族の足跡についてお話しいただきました。

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続いて雅楽家の石川高さんから、志賀海神社に由来のある神楽歌のお話を伺いました。宮中に千年を超えて継承される御神楽の一曲として知られる「阿知女作法」は、海の神「阿度部磯良(あどめのいそら)」に呼びかける歌だったと伝えられています。その舞台となったのが、まさに志賀島でした。

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石川さんの雅やかな美声が響く中で、参加者がそれぞれ悠久の時に思いを馳せていました。

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この日の午後は、実際に参加者が阿知女作法を唱えるワークショップを行いました。
続きは次のブログで報告します!





Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 15:37 | イベント報告 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
第1回レクチャー終了 [2018年09月04日(Tue)]
8月25日(土)、志賀海神社にて、「志賀島自由大学」の第1回目のレクチャーが開催されました。講師は、三重大学名誉教授の宮崎照雄先生です。現役時代は魚の病気の研究を専門にしていらっしゃいましたが、退官後に、理系の学者の観点から日本の古代史を研究されています。

今回は、「水産学者が読み解く記紀神話〜和邇・鰐の正体〜」というタイトルで約2時間お話ししていただきました。宮崎先生の研究によると、昔は大型の流線型のものをワニと呼んでいたそう。つまり、記紀神話に出てくるワニは木造の大型船なのだという、興味ぶかい解釈を聞かせてくださいました。蒸し暑い中、お越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。

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レクチャーには志賀島内外から50名ほどの参加者がお越しになり、終始熱気に包まれていました。

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宮崎照雄先生

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志賀海神社の遥拝所

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夏のおわりの海と空



Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 11:54 | イベント報告 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
「志賀島自由大学」いよいよはじまります [2018年08月09日(Thu)]
こんにちは。
福岡では35度を超えるような猛暑日が続いておりましたが、立秋を迎えて、少し涼しい風が吹くようになりました。
「志賀島自由大学」第1期の情報が確定しました!

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九州大学の大学院生の藤匡汰朗さんのデザインです。
志賀島の等高線をトレースした力作。
普段目に見えない志賀島の深層がうかびあがってくる素敵な絵です。


このプロジェクトの発起人で、「志賀島プロジェクト」の総合ディレクターでもある藤枝守先生が、企画への思いを以下のように綴っています。

博多湾に浮かぶ志賀島。「神の島」、「祈りの島」とも称されるこの海の聖地には、古代の記憶がぎっしりと蓄積されています。海を通じて世界とつながり、さまざまな神話を生みだしてきた志賀島は、「海神(わたつみ)の総本宮である志賀海神社とともに長い歴史を刻んできました。今年8月から12月にかけて、3期にわたって開催される「志賀島プロジェクト2018」では、海とともに生きてきた志賀島を知り、全身で志賀島を体感するために「志賀島自由大学」を開講します。また、12月に開催される創作神楽「ISORA 2018」は、志賀島の神話を現代によみがえらせる試みです。
 海と神話の舞台となった志賀島。そこにねむる古代の海人の叡智は、21世紀に生きるわれわれに海のネットワークの重要性に気づかせ、そして、無限のイマジネーションをあたえてくれるでしょう。ぜひ、「志賀島プロジェクト2018」にご参加ください。
(総合ディレクター 藤枝守)



「志賀島自由大学」第1期は、以下のようなラインナップで行われます。
【レクチャーシリーズ】
・8月25日:水産学者が読み解く記紀神話〜和邇・鰐の正体〜
 講師:宮崎照雄(三重大学名誉教授)

・9月9日:阿知女作法と阿曇族
 講師:平澤憲子(志賀海神社権禰宜)・石川高(雅楽家)

【ワークショップシリーズ】
・9月1日:海を聴く〜海中レコーディングにチャレンジ!(★子ども対象)
 講師:岡崎峻(九州大学大学院博士後期課程単位取得満期退学)

・9月9日:阿知女作法をうたう〜沖津宮・海割れ参拝
 講師:石川高(雅楽家)、徳田涼子(ナビゲーター)

詳しい内容、お申し込み方法などは、ぜひ特設ページをご覧ください。

SALウェブサイト特設ページ
http://www.sal.design.kyushu-u.ac.jp/shikanoshima.html






Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 11:02 | イベントのお知らせ | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
はじめまして、ソーシャルアートラボです [2018年08月02日(Thu)]

はじめまして、九州大学ソーシャルアートラボです。

ソーシャルアートラボは、九州大学大学院芸術工学研究院(福岡市南区)の中に2015年4月に設置された教育研究機関です。社会の課題にコミットし、人間どうしの新しいつながりを生み出す芸術実践を「ソーシャルアート」と捉え、その研究・教育・実践・提言を通じて、新しい生の価値を提示していくことを目的としています。

これまでの3年間、福岡県八女市の里山を舞台としたアートプロジェクトや、福岡市の中心部の大名地区を舞台としたアートプロジェクト、焼酎の醗酵音響や博多織の機音を素材としたアート実践などを行ってきました。http://www.sal.design.kyushu-u.ac.jp/

これまでの実績を引き継ぎつつ、今年は福岡市東区の志賀島を舞台に、新たなプロジェクトを始動します。その名も「海と神話をつなぐ〜志賀島プロジェクト2018」です!

みなさんは、志賀島を知っていますか?
「社会の授業で習った!」「金印がでたところ」など、その名前は知っている人が多いと思います。
ですが、志賀島は金印だけではありません。
ここは日本の歴史にとってたいへん重要な場所で、奥深く、興味深い土地なのです。

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写真は、西戸崎から志賀島へと続く道(志賀島側から撮影)

このブログでは、「志賀島プロジェクト2018」の情報発信とともに、志賀島がどのような島でどうおもしろいのかを、様々な視点から綴っていきたいと思います。

また、このプロジェクトは日本財団「海と日本PROJECT」の一環で行っております。
「海離れ」が進む若い世代が海と親しんでゆく仕掛けを考えるのも、このプロジェクトの一つの目的。そこで、志賀島プロジェクトのメンバーが、志賀島を通じて海と出会い、さまざまな発見をしていく様子も綴っていきたいと思います。

今後のリサーチ&イベントをどうぞお楽しみに!


Posted by ソーシャルアートラボ志賀島グループ at 09:31 | ごあいさつ | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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