月刊「WAM」(3) [2010年05月29日(Sat)]
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福祉医療機構の発行する「月刊WAM」
「社会福祉法人をめぐる課題」シリーズ連載第3回です。 紙数の関係で「月刊WAM」誌上都は若干異なります ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 社会福祉法人をめぐる課題(2) >社会福法人経営上の課題@ 規模拡大による経営基盤強化 1.増加し続けてきた社会福祉法人 社会福祉法人は昭和26年に制定された社会福祉事業法(現「社会福祉法」)により、「社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人」(法第22条)です。法制定以前は、民間福祉事業は主として公益法人により提供されていましたが、当時「従来の社団法人、財団法人には・・・社会的信用や事業の健全性を維持する上において遺憾な点があり・・・純粋性を確立するために、特別法人としての社会福祉法人の制度を設け」(木村忠二郎著「社会福祉事業法の解説」時事通信社、1951年)たのでした。 また、法制定1年前に社会保障制度審議会も、社会福祉の目的を達成するために必要な施設の整備拡充を図る必要があり、そのためには民間社会事業の自主性や特性を重んじながら、特別な法人制度を確立し、その公共性を高める措置が必要である旨の勧告をしていました。 福祉ニーズの増加に伴い法人は増加の一途をたどりました。昭和40年台後半に始まった「社会福祉施設緊急整備5ヵ年計画」以降、福祉施設の設置数は大幅に増加し、「1法人1施設」という行政指導もあって、施設の増加とともに法人数も増加の一途をたどりました。 ![]() 2.規模の小さい社会福祉法人経営 社会福祉法人は、零細な規模の法人が多数を占めています。全国社会福祉施設経営者協議会(経営協)の調査では、1施設のみ経営の法人は60%に達します。 1施設あたりの平均年間収入額は、特別養護老人ホームや身体障害者療護施設で2億から3億円、保育所や児童養護施設では1億円前後と、法人の経営規模は小さく脆弱な基盤に立っています。 実は、福祉経営の脆弱性については、社会福祉法人制度創設時から問題視されていたことでした。法制定時の厚生省社会局長であった木村忠二郎氏は、前掲の著書の中で、「社会福祉法人の基礎を強固なものとするためには、弱小の法人は合併を促進する必要があることにかんがみ、その合併を容易なさしむるため」に合併手続きの条文を入れたのだと述べていたのです。 しかし実際には、合併を促すどころか行政から「1法人1施設」を指導されてきたことによって法人の合併はほとんど見られず、かえって小規模の社会福祉法人が増加してしまったといえるのです。 年間収入額が数億円の規模では、仮に3%の経常利益を上げてもその額は数百万円にしかなりません。これでは、常勤の法人役員や本部職員の人件費などの費用を賄うことはできません。今日では、福祉ニーズが多様化し新たな課題が次々と現れてきていますが、制度や法律が地域ニーズのすべてに細やかに対応できるとは思えません。社会福祉法人には、人と地域に根ざし、問題ごとに分解するのではなく全人的にとらえたサービスを提供することが求められています。制度の目を通じて人間や地域を見るのではなく、個人の尊重・人格の尊厳を基礎に質の高い総合的な福祉サービスを提供することによってこそ、法人が地域において「なくてはならない」存在になり存在価値が高まっていきます。そのためには、法人には一定の規模が必要であると思うのです。 3.問題点と規模拡大のメリット 社会福祉法人経営研究会報告書(1996)は、法人の規模が小さいことによって、次のような構造的な問題が生じていると指摘しました。 @法人の経営効率化や生産性向上に向けたインセンティブが働きにくい A同族経営の弊害が生じやすい 具体的には、見込み採用が困難であったり役職登用の機会が少なかったりなどの人事面でのデメリット、長期的視点に立った法人の舵取りができにくく法人マネジメント不在になりがち、などがあげられます。このため、社会福祉法人経営研究会報告書は「法人が、新たな時代の環境変化に対応して、経営を効率化し、安定化させるためには、法人全体で採算をとることが不可欠であり、複数の施設・事業を運営し、多角的な経営を行える規模の拡大を目指すことが有効な方策である・・・。」ことを提言したのでした。そのうえで報告書は、合併や事業譲渡で経営規模を拡大することによって、他の法人から即戦力の経営資源を譲り受け規模の拡大を図れ、規模のメリットを生かした効率的な事業運営や迅速な事業展開が可能となる。法人間の連携やネットワーク化によって、相互にノウハウを共有し協同して事業を実施することが可能となり、コストの抑制やサービスの質の向上も望める。このように、規模のメリットを生かした効率的・効果的な取り組みについて期待を表明したのでした。 4.規模拡大の方法 規模のメリットを追求する方法は以下のように考えられます。 @合併・・・2つ以上の法人が、契約によって1つの法人に統合すること。 A事業譲渡・・・特定の事業に関する財産を他の法人に譲渡すること。土地・建物など単なる 物質的な財産(ハード)だけではなく、事業に必要な有形的・無形的な財産のすべての譲渡を指す。 B法人間連携・・・人材交流や技術開発、資材購入など、複数の法人間で協力をすること。 規模の拡大の必要性は理解しても、合併や事業譲渡によって規模を拡大し経営基盤を強化していくことは、現実にはなかなか難しいことです。法人にはそれぞれの歴史があり、創設の心があります。社会福祉法人の合併について調査した大川新人氏(明治学院大学講師)によると、1953年度から2009年度に合併した法人は、市町村合併による社会福祉協議会を除き134法人(新設合併48、吸収合併86)あるとのことです。年代別に見ると、90年代から急増し90年代に23法人、200年代には94法人とこの20年の合併数が90%近くになります。 この中には、もともと同一経営者によって設立された法人が、合併した事例が多くあり、異なった動機によって設立された法人同士が合併する事例は、まだまだ少ないと思われます。 後継者がいない、経営破綻に瀕したなどの場合を除き、別々の道を歩んできた法人が突然合併することは現実的ではないでしょう。合併も視野に入れつつ、連携・共同事業を進めていくことが現実的な道と考えます。 連携・共同事業の例については、社会福祉法人経営研究会がまとめた「社会福祉法人における合併・事業譲渡・法人間連携の手引き」に詳しく紹介されていますが、職員の人事交換や派遣、出向などによってキャリアアップを図る、物品の共同購入や設備メンテナンスの共同発注など、さまざまな取り組みが考えられます。「手引き」には、デイサービス送迎車の共同運行など興味深い事例も紹介されています。 ますます厳しくなる経営環境の下で、サービスの質を維持向上し、従業員の雇用を守り処遇を改善していくために、あらゆる選択肢を排除しないことも経営者の果たすべき役割といえるのではないでしょうか。 最後に、小規模のままでは生きていけないと主張しているのではないことを申し沿えておきます。小規模法人の強みを生かし、小地域のニーズに機敏に対応できることができれば、規模は小さくても専門店のように氏名を果たすことは可能だと思われます。ただし、この場合、法人は同志的結合による運動体的な性格になっていくのではないかと考えています。 |










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