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月刊「WAM」(4) [2010年07月05日(Mon)]
福祉医療機構の発行する「月刊WAM」
「社会福祉法人をめぐる課題」シリーズ連載第3回です。
紙数の関係で「月刊WAM」誌上とは若干異なります
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社会福祉法人をめぐる課題(4)
> 社会福法人経営上の課題A
  ガバナンスを強化する〜理事会の機能を中心に〜


1.社会福祉法人のガバナンス
 「ガバナンス」とはCorporate Governance(企業統治)のこと。一般的には企業の価値創造にとって有効な判断となるように、意思決定を管理・統制すること。経営者の暴走を許さず、ステークホルダー(利害関係者=事業活動を行う上で関わるすべての人のこと)相互の利害関係を円滑に調整しながら経営を方向付けていくために必要とされる考え方です。社会福祉法人の場合、法人の使命を果たしていくために、理事会、理事長や常勤理事、評議員会、経営執行体制等、法人の機関が機能を発揮し、利用者や地域住民等の関係者と連携して、事業の継続・発展を実現させていく働きと言ってよいでしょう。この中でも、理事会の果たすべき役割は非常に重要で、法人のガバナンスの基礎であるのですが、これまでの理事会の構造には大まかに言って次のように特徴があり、ガバナンスに問題ないし停滞があるろ指摘されてきました。
   @強力な影響を持つ設立時の寄付者を中心とした役員を中心とした構成
   A開催回数が非常に少ない
   B常勤理事が少ない
   C法人外理事には責任感も義務感も希薄なことが多い
   C法人職員から昇進した理事は非常に少数
   D理事報酬は支給されていないか、支給されていても生計維持レベルではない
   E職員や地域に向けた情報公開などが消極的

2.ガバナンス停滞による問題点
 東京都社会福祉法人経営適正化検討会中間報告(22年3月)は、社会福祉法人経営の特色として、理事会や法人本部において、法人全体をマネジメントする機能(=ガバナンス)が停滞していことを指摘し、解決すべき課題を抱える法人の特徴を以下のようにまとめています
  @本部機能を務める人材の確保が難しい。
  A各施設に運営を任せきりにし、施設運営上の課題や施設間のバランスを把握した上で適切な
   対応を早期に講じることができない。
  B問題解決を図ろうとしても、重要案件について理事会が責任ある判断・意思決定ができずない。
  C職務内容が不明な常務理事など、肩書きと役割の関連が疑われる役員・役職者が存在する。
  D本部として、法人全体の運営状況や資金繰りを掌握し、理事会と連携した適切な管理ができない。
 このような問題を抱えたままでは、サービスの質を向上させ法人の価値を創造していく意思決定を行うことはできません。管理・統制を行い。経済、社会の大きな変動に機敏かつ的確に対応することも難しくなります。前述の東京都報告書によれば、理事会開催回数は年間5回程度と、目まぐるしく変化する状況に対応して地域社会に貢献する施策を展開することは困難だと思われます。
 社会福祉法人経営研究会報告書は、効率的で健全な法人経営を可能とするためにはガバナンスの強化が重要な課題であることを強調しました。具体的には、理事会を名目的な存在から法人の執行機関としての経営能力を向上させることを第一の課題とし、このためには実質経営に参画できる理事を選任し、理事会に必要な情報を提供できる法人本部機能の強化が必要であることや、理事の貢献に見合う報酬も支払われるべきであること。これに加え、中間管理職の育成・確保、監事監査の強化、外部監査の活用、評議員会のあり方、情報開示・提供の推進などをあげていました。

3.ガバナンスを確立するために
 クオリティ・マネジメントという考え方があります。一般には、企業が提供する製品やサービスの品質を保つため、品質の目標を設定し、それを実現するための計画を立てて実行し、検証・改善をしていく一連の流れを言います。福祉・介護分野では利用者や家族の要望・意見に配慮し、安全で充実した生活を支援する幅広いケアを提供し、サービス品質の維持・向上を図る体制や仕組みを、法人内に構築し実践することです。マネジメントのプロセスに沿って、高い志を基礎にサービスの質を不断に向上させ成果を上げることと理解して良いでしょう。このプロセスは、施設長や現場に任せていたのでは実行できません。理事長を先頭に法人としての機能が動いているかどうかが重要なポイントになるのです。
マネジメントのプロセスは、のように、理念の明確化から始まり、実行して評価する(PDCAサイクルを回す)行為の繰り返しになります。

     マネジメントのプロセス
         @使命(ミッション)の明確化
                ↓
       A組織を取り巻く環境の分析と把握
                ↓ 
          B戦略の立案・意思決定
                ↓
          C行動計画(戦術)の策定
                ↓
             D実行と評価

 法人のガバナンスを確立するための方策を、PDCAに沿って考えてみましょう。意思決定(P)は理事会、業務の執行(D)は常勤役員・法人本部(施設長)、検証(C)は監事・理事会と、それぞれが果たすべき機能をきちんと遂行し、その成果に立って改善(A)計画を理事会で審議決定することが重要です。この中で、ガバナンス強化のために最も基本となる機関は理事会です。その機能がどこまで果たされているのか、次のような視点で現状を検証してみることをお勧めします。

  @社会的ルールの遵守が徹底され公正かつ適正な経営を可能にする組織体制
    ・公益性公共性に則って、理事会の権能が理解されているか
  A経営者のリーダーシップと経営責任の明確化
    ・理事会は、理念に基づき法人の将来方向を指し示しているか
    ・自らが問題解決にあたる姿勢を明確にし、問題が生じた場合はその原因を究明するとともに
     説明責任を果たし、再発防止に努めているか 
  B情報の共有と方針の決定、成果の評価
    ・現場からの情報を吸い上げるなど、客観的な情報が一元的に集約できる体制が整えられて
     いるか
    ・その情報に基づいて、実質的な審議が行われているか
    ・制度改正や地域・利用者の動向や法人経営に関わるリスク等を踏まえた議論がされて
     いるか
    ・例えば、法令通知で定められた決算書だけでなく、事業計画や予算と対比した経営指標等を
     使用して目標達成度や成果を検証し、職員に伝える努力がされているか
  C公平で公正な法人運営
    ・設立財産を寄附した理事が独断的・専決的な権限を持つような「権限の偏在」はないだろうか
    ・「どんな人間かでなく、どのような成果を上げたか」(ドラッカー)で職員を評価し、施設長等
     幹部職員へ登用するなどしているか

 以上は、理事会機能の検証の一例です。同様の視点で監事、評議員会、法人の執行体制、施設運営など、すべての部門すべての場面を検証することが求められますが、ガバナンスの強化は、トップリーダー自身の改革から始まることを強調しておきたいと思います。
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コメント
お久しぶりです。お元気ですか。
以前、ルーテルで福山先生からソーシャルケア従事者・管理者に対しての行動規範についての英国の研究の講義を受けたことを思い出しました。地域住民も参加し、組織を保証していくためのサポートシステムらしいです。理事会って形だけではなく、機能してこそですよね。一般企業の取締役会とどこがどう違うんでしょう・・・
Posted by: ひろの  at 2010年07月05日(Mon) 21:16