月刊「WAM」(2) [2010年05月08日(Sat)]
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福祉医療機構の発行する「月刊WAM」
「社会福祉法人をめぐる課題」シリーズ連載第2回です。 紙数の関係で「月刊WAM」誌上ではこれよりも短くなっています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 社会福祉法人をめぐる課題(2) 福祉・介護サービスについて考える 〜サービスの特徴を知り質の向上に生かす〜 1.サービスの一般的特徴 社会福祉法人の提供するメインの「商品」は言うまでもなく、介護や保育などのサービスです。サービスは手にとって見ることができない商品ですが、サービス提供者としては、提供するサービス(商品)を良く知っていなければなりません。商品を良く知らなければ、品質の向上は困難ですし、「何を売っているのか分からない状態」では、自らの「強み」を知って伸ばしていくこともできません。 福祉・介護はサービス業に含まれます。飲食、宿泊や医療、理美容、法律事務所などサービス業には、次にあげる共通した特徴があります。 @個人の技量に依存 Aサービスの提供場面で生産と消費が同時進行 B利用者によるサービス評価が主観的 C在庫が持てない A製造業に比べれば、サービス業では生産する商品の質が、「個人の技量に依存」することは、良く理解できるでしょう。A「サービスの提供場面で生産と消費が同時進行」とは、製造業であれば工場で生産した製品は、別の場所・時間で消費(利用)することができますが、サービスは生産される現場が消費の場になっていることを意味しています。B「サービス評価が主観的」であることは、身近なところで飲食店や理美容などのサービスを思い浮かべれば、納得できる特徴ではないでしょうか。C「在庫が持てない」のは、生産と消費が同時進行であるがゆえです。散髪屋に行ったら整髪済みの自分の頭がありましたということは決してあり得ません。 2.福祉・介護サービスの特徴 福祉・介護サービスには、上記の一般的な特徴に加え次の特別な点が加わります。 @欲しくて求めた商品ではない A情報の非対称性が存在 B直接的ニーズの背景に重要性 C共同指向性 D公共性・継続性・倫理性 @例外はあるもののほとんどの場合、福祉・介護サービスは利用者が以前から待ち望んでいたものではありません。必要に迫られて求めるのです。利用者は自ら求めて孤独になったり、障碍をもったりしたわけではないのです。 A「情報の非対称性が存在」とは、提供者と利用者との間にサービスについての情報量や、どのようなサービスが提供されるのかについての理解に大きな隔たりがあり、利用者(消費者)にとって購入する商品の中身が分かりにくいことを指しています。「業界」内部でも無意識的に非対称性を増大させています。例えば、体を拭いて綺麗にすることを「清拭」と呼び習わしていますが、聞いて言葉が思い浮かぶ利用者は少ないのではないでしょう。「正式」と間違えられそうです。また、家族との関係を調整することなどを「介入」と言います。一般的に介入とは「事件や争いなどに割り込むこと」(大辞林)です。介入するのではなく共感的態度に基づいて利用者との関係性を構築することが重要であり、言葉の使い方が利用者との関わりあいに影響を与えることを考えると適当な言葉とは思えません。また、初めて「ザイカイシ」と聞いたとき、「在宅支援センター」とは分からず、聞き返した経験が私にはあります。このようにサービス内容そのものや業界内部の言葉によって情報の非対称性が生み出されていることも多いのです。 B「直接的ニーズの背景に重要性」は、福祉・介護サービスの特徴を理解しサービスに生かしていくうえでとりわけ重要な点と考えています。クリーニング店に山のような洗濯物を出しても、店員は「奥さんに逃げられて洗濯ができないのね」とは思いませんし、思っても何もしてくれないでしょう。これに対して、福祉・介護・保育など私達が提供するサービスにおいては、直接のニーズ(注文)の後ろに隠れているかも知れない問題まで捉えないと真の問題解決にならない場合が多いのです。訪問介護の回数が急に増えた利用者には、何か変化があったのかもしれません。保育園であれば日中こどもを預かるだけではなく、子育て支援の視点で家族の様子にも眼を配らなければなりません。直接的なケアの提供のほかに、その後ろにある社会的、家庭的、経済的、心理的な問題について眼を配っていく必要があります。 C「共同指向性」については、リハビリテーションがいちばん解かりやすい例でしょう。リハビリを受けている利用者が、自身の中から湧き出てくる(内発的)意欲がないと良い効果は現れてこないことは良く知られています。提供者の思いだけでは良い効果が得にくいことは、現場で毎日遭遇していることです。 最後の特徴である、D「公共性・継続性・倫理性」は、福祉・介護サービスの提供に際して厳しく追及されなければならないことです。福祉・介護の仕事は、憲法に規定された生存権や幸福追求権に基づき、主に税金や保険料を財源に営まれています。私利私欲で行うものではなく、高い公共性が求められていることは言うまでもないことです。公共性を捨て利益第一主義に走った訪問介護などを行う大手営利事業者が廃業に追い込まれた事例を忘れてはなりません。 どのような事業にも継続性は要求されていますが、福祉・介護の仕事は利用者・家族の生活や人生に深くかかわるゆえにより継続性が求められています。前述の大手営利事業者が廃業した際、その事業者以外のサービス提供が無い地域で混乱が起きたことを思い出してください。また、訪問介護を利用する場合、他人である提供者が利用者宅へ入り、財布の中、タンスの中、冷蔵庫の中など生活のあらゆる部分を見ることになります。利用者はプライベートな部分も見られるうことを覚悟してサービス利用を決意するのです。人生に深く関わる関係が簡単に中止されて良いはずがありません。サービスを継続していくことが、とても大切なことであることが理解いただけると思います。。この点を大切にしないと、毎日の生活に困難を抱えている方々に辛い思いをさせてしまいます。 倫理性については次の言葉を紹介しておきましょう。「福祉に関する専門職になるためには、まず尊敬に値する生き方をしなければなりません。福祉職につく人には、人間の弱さを『利用しない、手段としない、つけこまない』という厳しい職業倫理があります。」(阿部志郎、「月刊福祉」2003.12.P60) おわりに サービスの特徴を知ることで、提供するサービスの質を高める道筋が見えてきます。社会福祉法人としての「強み」を自覚すれば、何をすべきなのか、その課題が見えてくると考えます。漫然とサービスを提供するのではなく、私達が提供している商品(サービス)の特徴を知り、現場で応用していくことができます。また、制度に縛られているだけではなく、地域のニーズに依拠して(頼って)毎日の仕事を考え直していくことも重要です。。 社会福祉法人は、福祉・介護サービスを提供することを目的に特別に設立された非営利公益性の強い法人です。このため、営利法人とは異なり法人の性格そのものに公益性・公共性が含まれています。継続性においても、居宅サービス事業を例に挙げれば、施設を母体に事業展開しているところが多いことが、継続性の担保になっている面があります。簡単に事業閉鎖してしまうと「あの特養はしょっちゅう店を作っては、しょっちゅうつぶしているね」と本体の施設の評判も悪くなってしまうからです。 利益を目的としない公益性の高い法人だからこそ、直接的なサービス提供の背後にある様々な生活課題への積極的な関わり合いができることが社会福祉法人の強みとも言えるのです。法人への規制など経営における負の側面ばかりに眼を奪われるのではなく、サービスの特徴から事業を考えることは、自法人の強みを意識した経営に通ずることになるでしょう。 |




