女川のような沸騰水型原発は放射能を閉じ込める力が加圧水型より弱い、原子力規制委員会は放射能を「閉じ込める」から「放出する」に大転換した、安全対策の「切り札」=フィルターベントは有名無実だー私の追及が宮城県議会のホームページで公開されました[2018年01月28日(Sun)]
2017年9月21日の宮城県議会・環境生活農林水産委員会で、女川原発の安全対策について、@女川のような沸騰水型原発は放射能を閉じ込める力が加圧水型より弱い、A原子力規制委員会が、放射能を「閉じ込める」から「放出する」に大転換した、B安全対策の「切り札」と東北電力が宣伝しているフィルターベントは有名無実になっている事実を指摘し、その問題点を追及して質問しました。
東北電力が、この質問の約一週間前に報道陣を女川原発に招いて「安全対策」を説明し、一部の報道機関が「フィルターを通してベントをすることが義務づけられた」と、不正確な報道をしたため、これを正すことを意図して質問したものです。
このほど会議録がまとまり、宮城県議会のホームページで公開されたので、該当する部分の全文を紹介します。
平成29年9月21日 宮城県議会・環境生活農林水産委員会
◆(中嶋廉委員)
原子力安全行政について伺います。
東北電力が今月の半ばに、安全性向上対策の取り組み状況を報道機関に公開したのですが、その報道の中でフィルターベントにかかわることで、間違った報道をした報道機関がありました。それで、この問題は、県が女川原発の安全性を考える上でも見過ごせない問題があると思いますので、きょう質疑をさせていただきたいと思います。
まず、沸騰水型と加圧水型の違いについて伺います。
女川原発は沸騰水型の原発です。これまで原子力規制委員会の適合性審査に合格した原発は、全て加圧水型です。もし、柏崎刈羽原発、これが間もなく規制基準に適合していると判断されそうですが、そうなれば沸騰水型では初めてになります。原子力規制委員会は明らかに加圧水型の審査を先行させてきています。それには理由があって、安全性の違いがあると私は思っています。沸騰水型と加圧水型の決定的な違いは、格納容器の大きさ、容量の違いで、原子炉の形式と世代によって若干違いがありますが、格納容器の容積は沸騰水型は加圧水型の平均して7分の1しかありません。ですから、沸騰水型は、放射能を閉じ込める機能が加圧水型よりも劣ります。これは間違いありませんか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
今の御質問でございますが、容量からいたしますと、やはり圧力の関係で7分の1ということであれば、沸騰水型のほうが格納容器の破損状況等に関しては劣るということだと思います。
◆(中嶋廉委員)
そこでです。福島第一原発で事故を起こしたものも女川原発と同じ沸騰水型のマークTなのですが、燃料棒が溶けて大量のガスが発生して格納容器の中の圧力が耐えられる限界を超えてしまったために破損して、特に2号機が大量の放射能を放出してしまいました。
そこで、国の規制委員会の新規制基準では、このシビアアクシデント対策として、格納容器を保全するために、内部の放射能を含むガスをとにかく外に放出して、圧力を下げるという方針をとりました。これまでも放射性ガスを放出するベント装置というのは設置されておりましたが、軽水炉原発では、格納容器に放射能を閉じ込めることが安全対策のかなめの中のかなめなので、ベント管はついておりますが、ベントは原則としてあけないということです。最後の非常手段として考えられていました。
ただ、新しい規制基準では、そこが変わったわけですが、直接ベントを開けば住民の被曝や環境汚染が大きいので、水やフィルターに一旦通して放射能を減らしてから放出するフィルターベントの設置を義務づけて、ベントをやりやすくしています。
女川原発2号機では、これから三つのフィルターベントが設置されると聞いていますが、これはよろしいですか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
ただいまの御質問ですが、東北電力のほうからそのような説明を受けております。
◆(中嶋廉委員)
問題はここからです。新規制基準では、フィルターベントによる放射性ガスの放出を前提にしていますが、もとから設置してある直接ベント、原子炉工学の人たちは耐圧強化ベントと呼んでおりますが、このベント装置の撤去を要求しておりません。もともと設置してある耐圧強化ベントから、環境に直接放出することも禁止はしていません。これは間違いありませんか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
これまでの審査会合を拝見しますと、委員がおっしゃったような状況だと思います。
◆(中嶋廉委員)
基準がそうなっているだけではなくて、女川原発を運用しようとしている東北電力がどう考えているかが次に大事なのですが、同社はいわゆる直接ベント、耐圧強化ベントをそのまま温存しています。場合によっては、直接ベントをやると表明しています。
原子力規制委員会の第133回審査会で、同社が行った説明の概要を確認していただきましたけれども、同社の戦略はどうなっていますか。これをお答えください。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
審査会合におきまして、審査委員の方からのこれまでの強化ベントについてはどうかという質問に対してですが、基本的には新規制基準にありますフィルターベントによって開放するということですが、やはりそのフィルターベントも故障はゼロではないということなどから、同社からは、そういったときには最後の手段として考えてはおりますと回答したと聞いてございます。
◆(中嶋廉委員)
一部報道機関の間違いというのはそこでして、一部の報道機関がフィルターを通してベントをすることが義務づけられたというような報道をしたのですが、フィルターベントの設置は義務づけられましたけれども、フィルターを通さないベントというのは許されていますので、その部分の報道は審査の実態とは違っています。
今度、規制委員会の委員長になる予定で、もう内定している更田豊志さんがこのときに質問しておりますが、今課長がお答えなさったように、耐圧強化ベントについて残しておくという考え方と、これはもう期待しないという考え方と、どちらの戦略をとるのかということを東北電力に尋ねています。
このやりとりの中に、今度の新しい規制基準の、非常に大きな問題が含まれていると思っています。福島第一原発事故の前までは、事故防止の三原則というのは、とめる、冷やす、そして放射能を閉じ込めるでした。新規制基準では、ここが変わって、新しい考え方は、とめる、冷やす、ここまでは一緒です。最後が閉じ込めるではなくて放出をするに変わったわけです。格納容器の健全性をまず守るほうを最優先するということです。
ですから、私は、これは安全対策の大転換だと思っていますし、原発についていろいろな運動している方々も安全対策の大転換だという受けとめ方しているのですが、県は何かこの方針の転換について感想を持っていますか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
感想ということではないかもしれませんが、新規制基準におきましては、委員の御指摘のとおり、原子炉格納容器の破損を防止することにつきまして、新たにフィルターを通したベントをするということになっております。
また、そのフィルターを通したベントというのは、福島第一原発事故のことを想定いたしまして、通常のフィルターを通さないベントの1,000分の1以下に放射性物質を抑えるという想定のもとに、規制委員会のほうでフィルターベントからの放出ということを決めたと考えてございます。
◆(中嶋廉委員)
フィルターベントには二つの問題があります。一つは、本当にフィルターがかかるのかという問題です。私が当選後、初めての本会議の一般質問で取り上げました。ちょうど東電が柏崎刈羽原発にかかわって新潟県の技術委員会に出した資料でしたが、東電が独自に持っているダイアナという解析システムで計算してみて、1,000分の1に下がってほしかったが、実際やってみたら6分の1までしか下がらなかったという結果が出ていて、本当に1,000分の1まで確実に下げられるかどうか、その技術的な保証があるのかどうかということがずっと問題になっています。
もう一つは、本当にベントをあけられるかどうかということです。福島第一原発でも東電の人たちが決死の覚悟でベントをあけに行ったわけです。突撃隊のようなことをやりました。しかし、たどり着くことができなくて、結局ベントをあけられずに、1号機の場合は爆発してしまったということです。
この第133回の審査会では、東北電力の人も、ベントというのはやっぱりバルブですから、あかないことがあるわけです。ですから、フィルターベントを使いたいのはやまやまだけれども、それがあかなかったら直接ベントを使わざるを得ないと。そういう問題が一つあるのです。
それで、ここから先が格納容器を設計した人たちが実際に問題にしていることですが、電気事業者、東北電力の人たちが、どういう立場に立たされるかということです。事故を起こせば膨大な損害を与えますから、巨額の賠償金とか事後対策の費用がかかるわけです。そうすると、法令上は直接ベントもフィルターベントも許されていることになると、後で起こる株主訴訟などを考えたときに、経費の安いほうを選ばざるを得ません。そういう民間企業としての論理が当然働くわけです。ですから、事故を早目に収束させる選択肢として、直接ベントを使ってくる可能性というのは考えざるを得ないということをおっしゃっているのです。
それで、課長に問いかけたとき、課長はえっと言っていましたから、多分県の中で議論をしたことがないのではないかと想像しております。このベントの判断にかかわって、地元自治体として宮城県がよく研究して、できるだけ住民被曝を避ける。環境の放射能汚染を避ける立場で、あけるとしたら可能な限りフィルターベントを優先してもらう。そういうような話し合いなり、申し合わせなり、何らかの関係をつくっていく必要があるのではないかと思っておりますが、これまで議論されたことはありますか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
特にそういった検討を行った記憶はございません。
◆(中嶋廉委員)
新潟県やほかの原発が立地している自治体、それから周辺の自治体でこのベントへの関与について議論になったことはありませんか。承知していることがあれば、少しお答えください。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
承知してございません。
◆(中嶋廉委員)
私は、東北電力の原発関係の人たちを助けるためにも、県でぜひ議論していただいて、何らかのルールをつくることをぜひ検討していただけないかと思うのです。
というのは、東北電力の人たちも私たちの安全を守ろうとして必死になるに違いないのです。だけれども、その極限状態で判断を迫られて、一方で民間企業ですから、先ほど申し上げましたように、経済法則の作用というのもあるわけです。そのときに、政治などが法律やルールをつくって誘導しているとか、それを補う安全協定のような協定をうまく活用して、ルールをつくっておけば、株主代表訴訟なども避けられるわけです。そうすると、やはり自分たちの身の安全がまず第一で、住民の安全、住民の経済的な損失を最小限にするという判断ができるようになります。沸騰水型の安全対策のかなめとしてフィルターベントが考えられたのですが、現実には、今言ったような状況になっていて、切り札にはなり得なくなっているのです。ですから、フィルターベントについても自治体としてドライな判断を持っていただけないでしょうか。
規制委員会が、次に切り札として考え始めている循環冷却システムについては、次の議会以降に聞きたいと思っていますが、フィルターベントについては、切り札にはなり得なくなってきているという認識を持って臨んでほしいのですが、今答えられる範囲で答えてください。
◎(後藤康宏環境生活部長)
今回、福島第一原発事故の反省、教訓等を生かして規制基準が厳格化され、新たな考え方等も取り入れられたということは、基本的にああいった重大事故に至らないような対応を重ねてやっていくというのが基本であろうと考えておりまして、フィルターベントもその一部の、一つの技術的な点で採用されたのだろうと考えております。
基本的にフィルターベントの運用、それから事故の際の原子炉の保安については、東北電力が第一義的に技術的な視点から十分に検討をして、ああいった福島第一原発事故のような重大事故に至らないような対応をするのが最も重要であるし、それが基本とされるべきだと思っております。
それで、委員のおっしゃったフィルターベントの使い方、運用の仕方について、行政がどこまで技術的な視点なりで関与できるのか。それはなかなか判断の難しいところもございますので、さまざまなケース、それから同社の考え方等も聞きながら、行政側として何ができるのか考えてみたいと思います。
基本的に、条件づけをするなりして、両者間で使い方をきっちり定めることが可能なのかどうかも含めて、少し検討してみたいと思います。
東北電力が、この質問の約一週間前に報道陣を女川原発に招いて「安全対策」を説明し、一部の報道機関が「フィルターを通してベントをすることが義務づけられた」と、不正確な報道をしたため、これを正すことを意図して質問したものです。
このほど会議録がまとまり、宮城県議会のホームページで公開されたので、該当する部分の全文を紹介します。
平成29年9月21日 宮城県議会・環境生活農林水産委員会
◆(中嶋廉委員)
原子力安全行政について伺います。
東北電力が今月の半ばに、安全性向上対策の取り組み状況を報道機関に公開したのですが、その報道の中でフィルターベントにかかわることで、間違った報道をした報道機関がありました。それで、この問題は、県が女川原発の安全性を考える上でも見過ごせない問題があると思いますので、きょう質疑をさせていただきたいと思います。
まず、沸騰水型と加圧水型の違いについて伺います。
女川原発は沸騰水型の原発です。これまで原子力規制委員会の適合性審査に合格した原発は、全て加圧水型です。もし、柏崎刈羽原発、これが間もなく規制基準に適合していると判断されそうですが、そうなれば沸騰水型では初めてになります。原子力規制委員会は明らかに加圧水型の審査を先行させてきています。それには理由があって、安全性の違いがあると私は思っています。沸騰水型と加圧水型の決定的な違いは、格納容器の大きさ、容量の違いで、原子炉の形式と世代によって若干違いがありますが、格納容器の容積は沸騰水型は加圧水型の平均して7分の1しかありません。ですから、沸騰水型は、放射能を閉じ込める機能が加圧水型よりも劣ります。これは間違いありませんか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
今の御質問でございますが、容量からいたしますと、やはり圧力の関係で7分の1ということであれば、沸騰水型のほうが格納容器の破損状況等に関しては劣るということだと思います。
◆(中嶋廉委員)
そこでです。福島第一原発で事故を起こしたものも女川原発と同じ沸騰水型のマークTなのですが、燃料棒が溶けて大量のガスが発生して格納容器の中の圧力が耐えられる限界を超えてしまったために破損して、特に2号機が大量の放射能を放出してしまいました。
そこで、国の規制委員会の新規制基準では、このシビアアクシデント対策として、格納容器を保全するために、内部の放射能を含むガスをとにかく外に放出して、圧力を下げるという方針をとりました。これまでも放射性ガスを放出するベント装置というのは設置されておりましたが、軽水炉原発では、格納容器に放射能を閉じ込めることが安全対策のかなめの中のかなめなので、ベント管はついておりますが、ベントは原則としてあけないということです。最後の非常手段として考えられていました。
ただ、新しい規制基準では、そこが変わったわけですが、直接ベントを開けば住民の被曝や環境汚染が大きいので、水やフィルターに一旦通して放射能を減らしてから放出するフィルターベントの設置を義務づけて、ベントをやりやすくしています。
女川原発2号機では、これから三つのフィルターベントが設置されると聞いていますが、これはよろしいですか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
ただいまの御質問ですが、東北電力のほうからそのような説明を受けております。
◆(中嶋廉委員)
問題はここからです。新規制基準では、フィルターベントによる放射性ガスの放出を前提にしていますが、もとから設置してある直接ベント、原子炉工学の人たちは耐圧強化ベントと呼んでおりますが、このベント装置の撤去を要求しておりません。もともと設置してある耐圧強化ベントから、環境に直接放出することも禁止はしていません。これは間違いありませんか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
これまでの審査会合を拝見しますと、委員がおっしゃったような状況だと思います。
◆(中嶋廉委員)
基準がそうなっているだけではなくて、女川原発を運用しようとしている東北電力がどう考えているかが次に大事なのですが、同社はいわゆる直接ベント、耐圧強化ベントをそのまま温存しています。場合によっては、直接ベントをやると表明しています。
原子力規制委員会の第133回審査会で、同社が行った説明の概要を確認していただきましたけれども、同社の戦略はどうなっていますか。これをお答えください。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
審査会合におきまして、審査委員の方からのこれまでの強化ベントについてはどうかという質問に対してですが、基本的には新規制基準にありますフィルターベントによって開放するということですが、やはりそのフィルターベントも故障はゼロではないということなどから、同社からは、そういったときには最後の手段として考えてはおりますと回答したと聞いてございます。
◆(中嶋廉委員)
一部報道機関の間違いというのはそこでして、一部の報道機関がフィルターを通してベントをすることが義務づけられたというような報道をしたのですが、フィルターベントの設置は義務づけられましたけれども、フィルターを通さないベントというのは許されていますので、その部分の報道は審査の実態とは違っています。
今度、規制委員会の委員長になる予定で、もう内定している更田豊志さんがこのときに質問しておりますが、今課長がお答えなさったように、耐圧強化ベントについて残しておくという考え方と、これはもう期待しないという考え方と、どちらの戦略をとるのかということを東北電力に尋ねています。
このやりとりの中に、今度の新しい規制基準の、非常に大きな問題が含まれていると思っています。福島第一原発事故の前までは、事故防止の三原則というのは、とめる、冷やす、そして放射能を閉じ込めるでした。新規制基準では、ここが変わって、新しい考え方は、とめる、冷やす、ここまでは一緒です。最後が閉じ込めるではなくて放出をするに変わったわけです。格納容器の健全性をまず守るほうを最優先するということです。
ですから、私は、これは安全対策の大転換だと思っていますし、原発についていろいろな運動している方々も安全対策の大転換だという受けとめ方しているのですが、県は何かこの方針の転換について感想を持っていますか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
感想ということではないかもしれませんが、新規制基準におきましては、委員の御指摘のとおり、原子炉格納容器の破損を防止することにつきまして、新たにフィルターを通したベントをするということになっております。
また、そのフィルターを通したベントというのは、福島第一原発事故のことを想定いたしまして、通常のフィルターを通さないベントの1,000分の1以下に放射性物質を抑えるという想定のもとに、規制委員会のほうでフィルターベントからの放出ということを決めたと考えてございます。
◆(中嶋廉委員)
フィルターベントには二つの問題があります。一つは、本当にフィルターがかかるのかという問題です。私が当選後、初めての本会議の一般質問で取り上げました。ちょうど東電が柏崎刈羽原発にかかわって新潟県の技術委員会に出した資料でしたが、東電が独自に持っているダイアナという解析システムで計算してみて、1,000分の1に下がってほしかったが、実際やってみたら6分の1までしか下がらなかったという結果が出ていて、本当に1,000分の1まで確実に下げられるかどうか、その技術的な保証があるのかどうかということがずっと問題になっています。
もう一つは、本当にベントをあけられるかどうかということです。福島第一原発でも東電の人たちが決死の覚悟でベントをあけに行ったわけです。突撃隊のようなことをやりました。しかし、たどり着くことができなくて、結局ベントをあけられずに、1号機の場合は爆発してしまったということです。
この第133回の審査会では、東北電力の人も、ベントというのはやっぱりバルブですから、あかないことがあるわけです。ですから、フィルターベントを使いたいのはやまやまだけれども、それがあかなかったら直接ベントを使わざるを得ないと。そういう問題が一つあるのです。
それで、ここから先が格納容器を設計した人たちが実際に問題にしていることですが、電気事業者、東北電力の人たちが、どういう立場に立たされるかということです。事故を起こせば膨大な損害を与えますから、巨額の賠償金とか事後対策の費用がかかるわけです。そうすると、法令上は直接ベントもフィルターベントも許されていることになると、後で起こる株主訴訟などを考えたときに、経費の安いほうを選ばざるを得ません。そういう民間企業としての論理が当然働くわけです。ですから、事故を早目に収束させる選択肢として、直接ベントを使ってくる可能性というのは考えざるを得ないということをおっしゃっているのです。
それで、課長に問いかけたとき、課長はえっと言っていましたから、多分県の中で議論をしたことがないのではないかと想像しております。このベントの判断にかかわって、地元自治体として宮城県がよく研究して、できるだけ住民被曝を避ける。環境の放射能汚染を避ける立場で、あけるとしたら可能な限りフィルターベントを優先してもらう。そういうような話し合いなり、申し合わせなり、何らかの関係をつくっていく必要があるのではないかと思っておりますが、これまで議論されたことはありますか。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
特にそういった検討を行った記憶はございません。
◆(中嶋廉委員)
新潟県やほかの原発が立地している自治体、それから周辺の自治体でこのベントへの関与について議論になったことはありませんか。承知していることがあれば、少しお答えください。
◎(阿部孝雄原子力安全対策課長)
承知してございません。
◆(中嶋廉委員)
私は、東北電力の原発関係の人たちを助けるためにも、県でぜひ議論していただいて、何らかのルールをつくることをぜひ検討していただけないかと思うのです。
というのは、東北電力の人たちも私たちの安全を守ろうとして必死になるに違いないのです。だけれども、その極限状態で判断を迫られて、一方で民間企業ですから、先ほど申し上げましたように、経済法則の作用というのもあるわけです。そのときに、政治などが法律やルールをつくって誘導しているとか、それを補う安全協定のような協定をうまく活用して、ルールをつくっておけば、株主代表訴訟なども避けられるわけです。そうすると、やはり自分たちの身の安全がまず第一で、住民の安全、住民の経済的な損失を最小限にするという判断ができるようになります。沸騰水型の安全対策のかなめとしてフィルターベントが考えられたのですが、現実には、今言ったような状況になっていて、切り札にはなり得なくなっているのです。ですから、フィルターベントについても自治体としてドライな判断を持っていただけないでしょうか。
規制委員会が、次に切り札として考え始めている循環冷却システムについては、次の議会以降に聞きたいと思っていますが、フィルターベントについては、切り札にはなり得なくなってきているという認識を持って臨んでほしいのですが、今答えられる範囲で答えてください。
◎(後藤康宏環境生活部長)
今回、福島第一原発事故の反省、教訓等を生かして規制基準が厳格化され、新たな考え方等も取り入れられたということは、基本的にああいった重大事故に至らないような対応を重ねてやっていくというのが基本であろうと考えておりまして、フィルターベントもその一部の、一つの技術的な点で採用されたのだろうと考えております。
基本的にフィルターベントの運用、それから事故の際の原子炉の保安については、東北電力が第一義的に技術的な視点から十分に検討をして、ああいった福島第一原発事故のような重大事故に至らないような対応をするのが最も重要であるし、それが基本とされるべきだと思っております。
それで、委員のおっしゃったフィルターベントの使い方、運用の仕方について、行政がどこまで技術的な視点なりで関与できるのか。それはなかなか判断の難しいところもございますので、さまざまなケース、それから同社の考え方等も聞きながら、行政側として何ができるのか考えてみたいと思います。
基本的に、条件づけをするなりして、両者間で使い方をきっちり定めることが可能なのかどうかも含めて、少し検討してみたいと思います。