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中嶋れん(日本共産党 宮城県委員会政策委員長)のブログ
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女川原発の再稼働は気候危機打開に逆行、欠陥の疑いに目をつぶる規制委員会を批判、沸騰水型の弱点が温存されている、こんな原発の「60年運転」を認めていいのかー請願審査を前に「見解」を発表しました。[2020年10月09日(Fri)]
 女川原発の再稼働に関わる請願の審査が10月13日と14日の宮城県議会環境福祉委員会で予定されています。請願を共同提出している53団体の代表が9日11時から宮城県庁記者会で会見を行い、「見解」の説明は私が行いました。
 以下が全文です。カラーの小見出しは、私がつけたものです。

女川原発の再稼働中止は、多くの県民の願い
請願の趣旨をふまえて、宮城県と日本・世界の進むべき道を論議する審査を希望する
―常任委員会での請願審査を迎えるにあたっての「見解」―

 開会中の第375回宮城県議会は、女川原発2号機の再稼働問題が最大のテーマになっている。請願を提出した当事者として、まず来週の常任委員会での請願審査に臨む姿勢を明らかにしておきたい。

常任委員会での請願審査に臨む姿勢について

 「『原発ゼロ』の希望ある未来のため、女川原発の再稼働をしないように求める請願」を提出した。その請願趣旨は(1)電気は十分で、原発が事業として成り立たなくなっていること、(2)福島原発事故の避難者がいまだに4万人いるように、いったん事故を起こせばその被害は巨大で、原発には異質の危険があること、(3)「核のゴミ」を子々孫々に残すことは、地球環境への影響や倫理の問題があること、(4)原発の安全性が確立しておらず、避難計画に実効性がないもとで、危険を冒してまで再稼働をする必要があるのか、を問いかけている。そして(5)廃炉事業、省エネルギーや断熱技術の活用、再生可能エネルギーの開発という3つの分野で新しい産業をおこして雇用を増やすという、未来の希望を開く道に踏み出すことを提案している。
 女川原発の再稼働に関する判断は、これからの宮城県のみならず、将来の日本と世界のあり方を左右するものになる。請願の審査にあたっては、請願趣旨の全体を論議することを求めたい。雇用と地域経済、原発と安全技術に詳しい有識者に参考人を依頼する用意があり、請願者として充実した審査に全面的に協力するものである。

 請願審査で重要な論点になると思われる事項に対する「見解」

 住民運動団体が9月10日の緊急要望書で提出した、原発の安全性、避難計画の実効性を問う質問に対して、9月25日に国・県・東北電力からの回答が届いた。その後に行われた宮城県議会の代表質疑と一般質問で、大事な論点が浮上している。
 請願の審査で重要な論点になると思われるテーマについて、以下に「見解」を表明しておきたい。

原発の異質の危険に目を向けよう。「国策だから」という思考停止は、県民の安全を守る責任の放棄するもの。

【1】、原発の異質の危険性について。 
 女川原発の再稼働問題を考える原点は、言うまでもなく福島第一原発事故の体験である。原発には異質の危険があり、いったん事故を起こせばその被害は巨大で、影響が長期にわたって残り、暮らしと生業の回復は困難で、被害の全体を補償する道は用意されていない。
「エネルギー政策は国策だ」といって、議論の入り口で立ち止まり、自らと県民を思考停止に導く議論は、県民の安全を守る責務を放棄するものである。
 原発のような技術利用の可否を判断する際には、リスクの評価、リスク回避の方法があるか、事故時に十分な補償をして受け入れられるリスクに変えることができるか、などについて議論することが当然である。原発再稼働のリスクを正面から議論することを求める。

【2】、原発の安全性について。
 原子力規制委員会は、「合格しても安全だとは絶対に言わない」という立場をとっている。「合格がでたから問題はない」という議論は成り立たず、請願審査において、新規制基準と適合性審査の内実を検証することが求められている。

水素爆発を招く欠陥がある疑いはキチンと検証すべき

 田中三彦氏(元国会事故調委員)から、女川原発などで使われている沸騰水型原発の圧力容器に構造的な欠陥の疑いがあるという新しい知見が提供された。緊急要望書で、原子力規制委員会に検証を求めたが、回答は「既存の対策で十分」だというものだった。
 田中三彦氏の指摘を、専門家は「その可能性はある」と見ている。女川原発は構造的欠陥を抱えていることになり、再稼働後に炉心溶融が起れば水素爆発がおこることを覚悟しなければならない。
 検証すれば、格納用破損防止対策の見直しが必要になる可能性があるが、ボルトの交換などは不可能なので、再稼働できなくなる可能性がある。原子力規制委員会は、再稼働できなくなることを恐れて検証を避けたのではないかという疑問が残る。
 また、既存の対策で本当に十分なのか。水素ガスが発生する機序が変わるので、保安規定等の見直しが必要なのではないか。
 県議会は、以上の諸点について検証を求めるべきである。

安全対策の2つの「切り札」は、どちらも当てにできない

 女川原発をはじめとした沸騰水型原発は、炉心損傷事故が発生した後の除熱が困難である。その「切り札」として(1)代替循環冷却系、(2)フィルターベント―の2つの対策が導入された。そこで緊急要望書で、原子力規制委員会にその有効性を質問した。
 代替循環冷却系は、既設の2つの冷却系が機能しない時のバックアップのために設置されるものなので、既存の冷却系と共通の要因で、同時に安全機能を失なうことは避けなければならない。ところが原子力規制委員会から、代替循環冷却系が既設の冷却系の配管等の「一部を共用している」という回答があった。これではバックアップ施設の要件を欠いており、事故時に確実に機能する保障はない。

 格納容器や原子炉建屋からガスを放出するベントは、除熱だけでなく、圧力による損壊や水素爆発を防止するうえでも「切り札」になっている。ベントは、ガスといっしょに甚大な放射能を放出するので、放射能を減らすフィルターのあるフィルターベント装置を設置することになった。しかしフィルターには、吸着した放射能を再放出する現象があり、目詰まりする危険がつきまとっている。
 原子力規制委員会は回答で、日本ではフィルターベントが導入された実績がないこと、事故時に機能した実績は海外にもないことを認めた。
 県の安全性検討会でもフィルターベントについては、関根勉委員が「実績評価がない」ことを指摘し、岩崎智彦委員は再稼働の前にテストをやってほしいと強く要請した(2020年2月7日)。
 フィルターベントが安全対策の「切り札」であるかどうかは疑問であり、機能試験の実態や信頼性を検証すべきである。

 原子力規制委員会には、「裁量権を濫用している」「審査が独りよがりではないか」という批判が絶えない。基準地震動を超える地震が発生する可能性(超過確率)の評価や、巨大噴火の評価などで、原子力規制委員会は当該学会に所属する専門家から批判されている。
 県の安全性検討会でも、兼本茂委員が原子力規制委員会に対して、各分野の学会や専門家とのコミュニケーションが不十分ではないかと発言したほどである。
 新規制基準と適合性審査が科学的な知見に基づいているか、女川原発が抱えている沸騰水型の弱点は解決されたのかについて、審査を求めたい。

【3】、「避難させない」避難計画、被ばくから県民を守らない緊急時対応について
 緊急要望書では、避難計画の通りには実行できないと住民が指摘した事項に絞って内閣府に質問したが、返ってきた回答はいずれも具体性がなかった。
 女川・牡鹿地域の住民の避難路である国道398号線について、いつまでに整備するのか、具体的な回答はなかった。
 網地島などの離島や牡鹿半島の南部など、荒天時に避難する手段がない地域の住民に関して質問したが、回答は「屋内退避」「天候が回復したら救出」するという現行の避難計画の説明で、無内容のものであった。

 住民運動団体は、(1)原発の周辺に「人口ゼロ地帯」「低人口地帯」を設置すること、その境界で放射線量を250mSv以下にすることを定めた原子炉立地審査指針を廃止して、人口密集地周辺の原発の再稼働を優先させた重大な誤り、(2)放出されるCs-137を福島第一原発事故の100分の1の100TBqと過小評価して避難計画を策定させている問題点、(3)原子力災害対策指針が15回も連続改悪し、「屋内退避」を原則にして「避難させない」避難計画に改悪したことーなどを追及してきた。
 人口密集地の近くにある原発を無理に再稼働させるために、避難計画は住民を被ばくから守らないものにならざるをえない。避難計画の不備に関する質問が、具体的な問題になればなるほど、回答がますますリアリティを欠くようになっている。
 今議会では、「屋内退避」では被ばくを防げないこと、入院患者の避難計画はすでに破たんしていること、退域時検査所の人員・資器材の確保・レーン数などがいまだに不明確であること、避難元自治体と避難先自治体の協定がズサンであることが追及された。
 請願審査においても、検証を求めたい。

【4】原子力発電と石炭火力発電を拡大し、再エネも温暖化対策も潰す政策は重大
 世界各国で、省エネ・断熱技術の活用、再生可能エネルギーの開発が進められ、それが地球温暖化対策のカナメになっている。日本でも近年、エネルギー政策の分野で電気事業の自由化、FIT制度の導入による再生可能エネルギーの開発が進められてきた。
 コロナ禍のもとで世界各国では、経済再生に向けて気候危機打開策を生かすグリーン・リカバリーの動きが始まっている。
 ところが日本政府は、原発と石炭火力に固執している。電気が十分で再生可能エネルギーが年々普及しているもとで原発を再稼働したため、先行して再稼働している原発がある九州電力管内等では、再エネ発電所に接続抑制をかけるようになり、原発は再生可能エネルギーの妨害者になっている。
 加えて今年度から、旧・電力会社に有利な新電力市場の創設が始まった。9月に公表された容量市場の落札結果は異常に高く、このままでは再エネ新電力が打撃を受け、温暖化対策も損なわれてしまうと危惧されている。
 温暖化対策は、この数年の取り組みが決定的に重要である。この状況下で女川原発の再稼働を押し進めることは、気候危機を深刻にする方向にアクセルを踏むことになる。
 ところが県内の地方議会では、現実に進行していることを知らないで、女川原発の再稼働を容認する理由として、ウラン採掘から始まる原発稼働までの一連の行程で二酸化炭素を排出するにもかかわらず、原発が「地球温暖化を抑制する」という事実に反する議論が持ち出されている。
 宮城県議会には、施策の全体を正しく見て審査することを求める。

【5】、「60年運転」から「80年運転」をめざしている問題、使用済み核燃料の問題
 東北電力は、原発が「原則40年で廃炉」のところ、女川原発の運転期間を20年延長する「60年運転」を想定している。東北電力が加入している「原子力産業協議会」は、さらに「80年運転」をめざすキャンペーンを始めている。
 再稼働を容認することは、老朽原発の酷使に道を開くことになる。
 検証を求める。

 女川原発の敷地が狭いために、東北電力は一号機の廃炉に伴う使用済み核燃料を暫定保管する乾式貯蔵庫を敷地外にもつくろうとしている。
 女川原発2号機は、一年運転したら核燃料を18d交換することになっている。稼働率80%であれば毎年16dの使用済み核燃料が増えることになる。
 しかし、再処理はまったく実用化のめどがない。
 「核のゴミ」を県内のどこで保管するのか、天文学的な経費は誰が負担するのか、「トイレなきマンション」を温存する再稼働の是非をどう考えるか、論議を求めたい。

【6】、雇用と地域経済について
 菊地登志子・東北学院大学名誉教授は、女川町の経済と財政に原発が及ぼした効果を研究した結果として以下のように報告している。
(1)女川原発は、町の一部産業に一時的な経済効果をもたらすことはあったが、持続的な産業・雇用の創出につながることはなかった。原発の経済効果は限定的で、産業・雇用創出にほとんどつながっていない。
(2)女川町の財政は、原発に依存するようになったため、新規原発の増設をしない限り年々固定資産税の税収が減少するため、いずれ立ち行かなくなる。電源三法交付金も見込めなくなると、交付金で建設した多くの箱モノの維持管理費が調達できなくなり、町の財政を圧迫する。
(3)原発で働く人々や、飲食店・小売店などのなかには、原発で仕事が成り立っている人々もいる。女川町の財政は原発に依存しているが、体育館、病院などのインフラを整備することができ、そこで働いている人々もいる。
結論として、女川町の未来のまちづくりをどのように描くか、原発に依存しない地域経済をいかにして作り上げるかが問われていると、報告している。

 全国には、原発が立地している地域が17カ所あるが、原発の立地を断念させた地域は53箇所もある。原発に依存しなかった地域のまちづくりから学び、漁業・水産業、地域の特性を生かした地場産業を基幹産業として振興し、再生可能エネルギーを活用した産業を育てていく方向が考えられるのではないか。廃炉にすれば、廃炉作業による雇用と効果が数十年間は続くことも念頭に置くべきである。
 女川町が原発から脱却しなければならない日は必ず訪れる。
 県政の場から、女川町のまちづくりを支援し、廃炉の時代に必要な制度を生み出していく論議を求めたい。

以上

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