女川原発審査書案のパブコメへの意見ー実験データを改ざんして「水蒸気爆発は起きない」とした、虚偽を含む東北電力の主張は再検討すること。水で溶融炉心を受け止めても水蒸気爆発は起こらないという、世界の「常識」に反する判断の根拠を説明するよう求める。[2019年12月26日(Thu)]
女川原発2号機の審査書案に、原子力規制委員会がパブコメ(意見公募)を実施中。
炉心損傷対策として、格納容器の下部に3.88bの深さで水を張り、溶融炉心を落下させる「対策」は、水蒸気爆発を招く危険性があります。
私が発見した東北電力による水蒸気爆発の実験データの誤引用を指摘し、原子力規制委員会に意見と質問を提出しました。
実験データを改ざんしても、それを不問にして「合格」ですか?
●意見<受付番号 201912270000959243>
審査書(案)は第255ページで、「2.審査結果 規制委員会は、格納容器破損モード「原子炉圧力容器外の溶融燃料−冷却材相 互作用」において、申請者が水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いとしていることは妥当と判断した」としていますが、この判断に疑問があります。
審査書は、この判断に至った根拠として、第256ページで、申請者の説明を要約して示していますが、申請者の「実機で想定される溶融物の初期の温度は実験条件よりも低く、冷却材中を落下する過程で溶融物表面の固化が起こりやすい」という主張には虚偽が含まれており、原子力規制委員会は再度の検討をすべきです。
東北電力は、2018年(平成30年)7月26日に開催された第606回適合性審査会において、「水蒸気爆発が発生したKROTOSとTROIの一部実験の特徴といたしましては、外乱を与えて液−液直接接触を生じやすくさせていること、もしくはですけれども、溶融物の初期温度を高く設定していることが挙げられるということでございます。大規模実験の条件と実機条件を比較すると、実機においては液−液の直接接触は生じるような外乱となる要素は考えにくいということ、また、実機で想定される溶融物の初期温度は実験条件よりも低いと考えられる」と主張していますが、その根拠として提出された「資料2−1−3 女川原子力発電所2号炉 重大事故対策等の有効性評価について」に虚偽があります。
資料の第16、17、18ページに、TROI実験の実験条件および実験結果の表が示されていますが、そもそもこの表は実験者が作成したものではなく、ストラスブール大学の大学院生の博士号取得論文から孫引きしたものです。とくに、大学院生が原論文の温度を不正確に引用していたにもかかわらず、東北電力がこれをそのまま引用したため、東北電力がTROI実験のデータを別のデータに改ざんしたような結果になっています。
審査会合の議事録によれば、原子力規制委員会と規制庁が温度データの誤りを指摘したことはありません。審査会合とは別にヒアリング等も行われていますが、原子力規制委員会は審査書案作成の時点で実験データの誤引用に気が付いていたのかどうか、ご説明ください。
実験者の報告によれば、TROI実験の第35番の実験の溶融物温度は、測定値で2990K、補正値で2793Kです。これは「実機で想定される溶融物の初期温度」と同程度ではないでしょうか。「実機で想定される溶融物の初期温度は実験条件よりも低いと考えられる」という東北電力の主張は成り立たないように思われます。この疑問について回答していただくことを求めます。
TROI実験について、実験者が報告したデータにもとづいて再評価し、「水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低い」という判断を再検証していただくことを求めます。
水蒸気爆発が「起こらない」は、世界の常識に反するのでは?
●意見<受付番号 201912270000959494>
IAEA(国際原子力機関)は、水蒸気爆発対策に対して、「容器バリアに損傷を与える可能性のある蒸気爆発をなくすために、考えられる事故シナリオで溶融炉心が水に落ちないようにすることが好ましい方法である」という認識であると承知しています(IAEA−TECDOC-1791=2016年=)
原発の水蒸気爆発について、先進国が構成しているOECD(経済協力開発機構)がプロジェクトをつくって研究しています。そのレポートは、「すべての国ではないが、ほとんどの国では、主に未解決の不確実性により、炉外蒸気爆発の考慮が未解決の問題のままである」と報告しています(OECD SERENA Report=2017年=)。「すべての国ではないが」と述べているのは、日本とスウェーデンのことです。
格納容器の下部に水を張って溶融炉心を受け止めることを「対策」として奨励している日本の原子力規制委員会の考え方は「世界の非常識」と見受けられます。
OECDが「未解決の問題」としている問題ですから、根拠のある判断をしているのであれば、このパブリックコメントへの回答でその根拠を明示して下さい。
また、格納容器の下部に水を張って溶融炉心を受け止めるという「対策」を採用するよう、OECDの加盟国にその根拠を示して働きかけるべきですが、お答えください。
追加対策が、逆に水蒸気爆発を巨大にするのでは?
●意見<受付番号 201912270000959514>
原子力規制委員会は2019年11月12日の第796回審査会合で、溶融炉心を分散する緩衝機構を追加設置することを求めました。東北電力は、緩衝機構をどうつくるか、その素材をどうするか、未定のまま、追加対策を自主的にとることを約束しました。追加対策を条件にして「合格」させようとしていると見受けられました。
旧・原子力研究所の森山氏ら研究員が、「分散板によって溶融物を水面上で分散させた場合、自発的な蒸気爆発は起こりにくくなったが、起こった場合には通常よりも激しい水蒸気爆発となった」(1994年、JAERI-Review 94-010, p.7)と報告しています。
追加対策が、逆に住民の危険をさらに増すことはないのか、疑問を覚えます。追加対策を要求したのは原子力規制委員会なので、追加対策が本当に住民の安全につながるのかどうか、ご説明を求めるものです。
炉心損傷対策として、格納容器の下部に3.88bの深さで水を張り、溶融炉心を落下させる「対策」は、水蒸気爆発を招く危険性があります。
私が発見した東北電力による水蒸気爆発の実験データの誤引用を指摘し、原子力規制委員会に意見と質問を提出しました。
実験データを改ざんしても、それを不問にして「合格」ですか?
●意見<受付番号 201912270000959243>
審査書(案)は第255ページで、「2.審査結果 規制委員会は、格納容器破損モード「原子炉圧力容器外の溶融燃料−冷却材相 互作用」において、申請者が水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いとしていることは妥当と判断した」としていますが、この判断に疑問があります。
審査書は、この判断に至った根拠として、第256ページで、申請者の説明を要約して示していますが、申請者の「実機で想定される溶融物の初期の温度は実験条件よりも低く、冷却材中を落下する過程で溶融物表面の固化が起こりやすい」という主張には虚偽が含まれており、原子力規制委員会は再度の検討をすべきです。
東北電力は、2018年(平成30年)7月26日に開催された第606回適合性審査会において、「水蒸気爆発が発生したKROTOSとTROIの一部実験の特徴といたしましては、外乱を与えて液−液直接接触を生じやすくさせていること、もしくはですけれども、溶融物の初期温度を高く設定していることが挙げられるということでございます。大規模実験の条件と実機条件を比較すると、実機においては液−液の直接接触は生じるような外乱となる要素は考えにくいということ、また、実機で想定される溶融物の初期温度は実験条件よりも低いと考えられる」と主張していますが、その根拠として提出された「資料2−1−3 女川原子力発電所2号炉 重大事故対策等の有効性評価について」に虚偽があります。
資料の第16、17、18ページに、TROI実験の実験条件および実験結果の表が示されていますが、そもそもこの表は実験者が作成したものではなく、ストラスブール大学の大学院生の博士号取得論文から孫引きしたものです。とくに、大学院生が原論文の温度を不正確に引用していたにもかかわらず、東北電力がこれをそのまま引用したため、東北電力がTROI実験のデータを別のデータに改ざんしたような結果になっています。
審査会合の議事録によれば、原子力規制委員会と規制庁が温度データの誤りを指摘したことはありません。審査会合とは別にヒアリング等も行われていますが、原子力規制委員会は審査書案作成の時点で実験データの誤引用に気が付いていたのかどうか、ご説明ください。
実験者の報告によれば、TROI実験の第35番の実験の溶融物温度は、測定値で2990K、補正値で2793Kです。これは「実機で想定される溶融物の初期温度」と同程度ではないでしょうか。「実機で想定される溶融物の初期温度は実験条件よりも低いと考えられる」という東北電力の主張は成り立たないように思われます。この疑問について回答していただくことを求めます。
TROI実験について、実験者が報告したデータにもとづいて再評価し、「水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低い」という判断を再検証していただくことを求めます。
水蒸気爆発が「起こらない」は、世界の常識に反するのでは?
●意見<受付番号 201912270000959494>
IAEA(国際原子力機関)は、水蒸気爆発対策に対して、「容器バリアに損傷を与える可能性のある蒸気爆発をなくすために、考えられる事故シナリオで溶融炉心が水に落ちないようにすることが好ましい方法である」という認識であると承知しています(IAEA−TECDOC-1791=2016年=)
原発の水蒸気爆発について、先進国が構成しているOECD(経済協力開発機構)がプロジェクトをつくって研究しています。そのレポートは、「すべての国ではないが、ほとんどの国では、主に未解決の不確実性により、炉外蒸気爆発の考慮が未解決の問題のままである」と報告しています(OECD SERENA Report=2017年=)。「すべての国ではないが」と述べているのは、日本とスウェーデンのことです。
格納容器の下部に水を張って溶融炉心を受け止めることを「対策」として奨励している日本の原子力規制委員会の考え方は「世界の非常識」と見受けられます。
OECDが「未解決の問題」としている問題ですから、根拠のある判断をしているのであれば、このパブリックコメントへの回答でその根拠を明示して下さい。
また、格納容器の下部に水を張って溶融炉心を受け止めるという「対策」を採用するよう、OECDの加盟国にその根拠を示して働きかけるべきですが、お答えください。
追加対策が、逆に水蒸気爆発を巨大にするのでは?
●意見<受付番号 201912270000959514>
原子力規制委員会は2019年11月12日の第796回審査会合で、溶融炉心を分散する緩衝機構を追加設置することを求めました。東北電力は、緩衝機構をどうつくるか、その素材をどうするか、未定のまま、追加対策を自主的にとることを約束しました。追加対策を条件にして「合格」させようとしていると見受けられました。
旧・原子力研究所の森山氏ら研究員が、「分散板によって溶融物を水面上で分散させた場合、自発的な蒸気爆発は起こりにくくなったが、起こった場合には通常よりも激しい水蒸気爆発となった」(1994年、JAERI-Review 94-010, p.7)と報告しています。
追加対策が、逆に住民の危険をさらに増すことはないのか、疑問を覚えます。追加対策を要求したのは原子力規制委員会なので、追加対策が本当に住民の安全につながるのかどうか、ご説明を求めるものです。