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中嶋れん(日本共産党 前宮城県議会議員)のブログ
日本共産党宮城県委員会政策委員長。
シエルの会(自閉症児の親の会)会長。
原発問題住民運動宮城県連絡センター 世話人。
東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局次長。
青森県むつ市大畑町生まれ。青森高校、東北大学理学部物理学科卒。
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日本共産党 ILC(国際リニアコライダー)誘致の見直しを求める。岩手県議団が、学術会議の提言をふまえるよう達増知事に要請。 [2021年03月01日(Mon)]
 まもなく東日本大震災から10年です。復興の検証が各分野で行われています。大きな被害があった宮城、岩手、福島の3県は、災害の様相も、復興計画も異なり、とくに「幸福追求権」を掲げて「人間の復興」をめざした岩手県と、「創造的復興」を掲げて惨事便乗主義を進めた宮城県とで、復興の局面は大きく異なります。
 日本共産党の各県議団の努力も、被災3県で特徴があり差異もあります。福島、岩手の努力から学び姿勢で臨んでいます。
 日本共産党岩手県議団が12月11日に提出した達増拓也岩手県知事あての「2021年度 岩手県予算に関する申し入れは」は、岩手の復興の現状と今後の課題に関する問題意識が盛り込まれています。研究したいと思いました。

●2021年度 岩手県予算に関する申し入れ右矢印1201211 岩手県議団の予算要求.pdf

 素粒子研究施設の国際リニアコライダーを誘致したいとする岩手県の計画に関して、日本共産党岩手県議団の要求は以下のとおりです。

 ILC(国際リニアコライダー)誘致の取り組みは、学術会議の提言を踏まえ、国の財政状況、学術会議での合意形成、国際的な財政支援の動向などを踏まえて国民合意のもと進めること。地元自治体負担が大きくならないよう対策を求めること。

右矢印1宮城県議会で行った質問を紹介したブログはこちら。

ILC誘致のあり方の見直しを求める要求部分.jpg
ILC(国際リニアコライダー)計画「立ち止まって見直すのも悪くない」ー「読売新聞」が編集委員のコメントを掲載。[2021年01月27日(Wed)]
 「読売新聞」が1月17日、国際リニアコライダー(ILC)計画について、「立ち止まって見直すのも悪くない」という、石黒穣編集委員の論説を掲載しました。
 素粒子や宇宙の成り立ちを研究することを否定する人はいないと思いますが、ILCについては、研究戦略について専門家の中で合意がなく、技術的な展望も不明確です。東北への誘致の進め方が問題で、経済効果だけを過大に宣伝する一方で、環境への影響などが最近まで説明されないままでした。
 この記事は、ILCの必要性そのものが揺らいでいることを指摘したものです。紹介します。

 宇宙の根源理論 冷めた熱狂

 宇宙の謎に迫る最先端研究が岐路に立っている。
 謎を根本から解き明かす最有力理論とされてきた「超対称性理論」について、米シカゴ大教授ダン・フーパー氏は昨年の講演で「10年前の熱狂はない。正しいかどうか怪しい」と行き詰まりを認めた。
 理論のカギを握るのが、物質を構成する最小単位である素粒子だ。既知の17種類に加え、同じ数のペアがあるとされ、超対称性粒子と呼ばれる。スイスにある欧州の研究機関セルンの大型加速器は、2012年に17番目の素粒子ヒッグス粒子を見つけてから、超対称性粒子の検出に主眼を置いてきた。
 ところが現在に至るまで、超対称性粒子が一つも見つからない。これが理論を揺るがせている。
 欧州は、現行の数倍の規模の次世代器を50年ごろに建造し、理論の完成を目指している。こちらも新粒子が出てこないのではもくろみが崩れてしまう。
 最先端の理論を巡る潮流の変化は、日本にも及ぶ。東北の北上高地で、セルンの後継となる巨大加速器を誘致する構想「国際リニアコライダー(ILC)計画」を、米欧の研究者と共に進めているからだ。
 全長20キロメートルのトンネルを掘って直線状の加速器を設置する。建設費は8000億円と見こまれる。
 国際リニアコライダー(ILC)では、光速近くまで加速した電子と陽電子を正面衝突させ、宇宙誕生のビッグバンの超高温を再現する。超対称性粒子そのものが作られることはないが、ヒッグス粒子が多数生まれ、間接的な情報が得られるという。
 地域振興に結びつくとして、地元の期待は大きい。米政府も「中国に先を越されてはいけない」と、はっぱをかけてくる。
 巨大プロジェクトの実現には、政府の大型研究投資の基礎となるロードマップヘの採択が前提となる。取りまとめ役の高エネルギー加速器研究機構(KEK:茨城県つくば市)は昨年、ロードマップヘの採択をいったん申請したものの、「国際的な協力体制の再編成」を理由に取り下げてしまった。
 国際リニアコライダー(ILC)の青写真作りが始まったのは、超対称性理論がブームだった15年前だ。情勢が様変わりする中、理化学研究所の初田哲男博士のように「計画は中途半端だ」と心配する研究者が多いのだろう。
 重力波を使えば、138億年前の本物のビッグバンを直接観測することもできる。重力波は米チームが5年前(2015年)に初めて直接観測し、素粒子研究の新しい手段として加わった。
 最先端の研究は、重力波観測を優先する選択肢もある。潮流の変化を見逃すことのないよう、国際リニアコライダー(ILC)計画も立ち止まって見直すのも悪くない。
ILC計画誘致ー「中間案」になかったのに「新・宮城の将来ビジョン」に。高エネルギー加速器研究所が申請を取り下げたのに、なぜ? 日本共産党宮城県議団が質疑でただしました。[2020年10月13日(Tue)]
 宮城県は、「宮城の将来ビジョン」と「宮城県震災復興計画」が2020年度で終期を迎えるため、2021年度を始期とする次期総合計画を策定しています。
 ILC(国際リニアコライダー)計画の誘致は、「中間案」の段階では書かれていませんでしたが、「新・将来ビジョン」に盛り込まれました。その経過と判断には疑問がつきまとっています。
 日本共産党の天下みゆき議員が9月13日、宮城県議会の総務企画委員会で、ILC誘致を推進している高エネルギー加速器研究所(KEK)が、「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」に、2月に計画を申請していながら3月27日に取り下げていた問題を指摘し、質問しました。
 県の震災復興・企画部と震災復興政策課は、KEKによる申請の取り下げは、国際会議でILCに関する国際協力体制などの推進の枠組みを再構築することになったことにより、申請内容を見直す必要が生じたためだと、説明しました。
 これは、9月11日の萩生田光一・文部科学大臣の発言をもとにしたものと思われますが、萩生田大臣の一連の発言は、ILC計画には踏み込まないと決定した昨年3月の「見解」が前提になっています。
 宮城県の長期ビジョンに盛り込んだ判断が妥当なのか、ILC計画の実現可能性と研究戦略上の妥当性、地域づくりを大型事業誘致に頼ることの妥当性、両面から引き続き追いかけてみたいと思います。

 今後の検証に役立つと思われるので、萩生田光一文部科学大臣が2020年の定例記者会見でILCに関してどのように発言してきたか、整理して記録しておきます。

●2020年9月11日(金曜日)
記者)
大型加速器ILCに関してお聞きします。8日に、高エネルギー研究機構が、国の大型研究ロードマップにILCへの申請を取り下げたという発表がありました。これ、今まで文科省がずっと議論されてきた内容だと思うんですけれども、このことの受止めと、今後の取組について教えてください。

大臣)
高エネルギー加速器研究機構が、「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」への申請を取り下げたというのは事実でございますが、申請の取下げ理由はですね、本年2月にILCに関する国際会議での声明において、ILCに関する国際協力体制などの推進の枠組みを再構築することとなり、その内容を踏まえ、申請内容を見直す必要が生じたためだと伺っております。文科省としては、米欧の政府機関との意見交換を行いつつ、国際研究者コミュニティによる議論を注視してまいりたいと思っているところです。

●2020年6月23日(火曜日)
記者)
今、東北地方に設置が予定されている国際リニアコライダーについてお聞きします。今週ですね、欧州の方で、欧州科学技術の長期計画で欧州戦略というのがあるんですが、そこに国際リニアコライダーの結果が盛り込まれました。ただ一方で、その文書からは、日本がやるのであれば欧州も協力するといった、ちょっと、少し後ろ向きなような表現をとられました。今回、それに載ったということで、大臣の所見と、今後の政府としての話合いの方針・方向性などがあれば教えてください。

大臣)
お言葉ですけど、東北地方に予定しているという事実はございませんで、九州でも熱心に誘致をしておりますので、改めてお願いをしたいと思います。先週の6月19日に欧州合同原子核研究機構が発表した「欧州素粒子物理戦略2020」において、ILC計画については、「タイムリーに実現する場合には、欧州の素粒子物理学コミュニティは協力を望むであろう」と記載されました。これは、欧州の研究者コミュニティが、素粒子物理学分野の取組の優先度を示す同戦略において、ILC計画に具体的な協力をもって参加することにまでは踏み込まなかったものと認識しています。また、欧州自身の将来の加速器研究計画について、より多くの分量を割かれており、「技術的及び財政的な実現可能性を調査すべき」ことも記載されています。文科省としては、今回の欧州素粒子物理戦略も踏まえ、米欧の政府機関との意見交換などを行うなどして、昨年3月に示したILC計画に関する見解に沿って対応してまいりたいと思います。

●2020年1月31日(金)
記者)
昨日、日本学術会議のほうで3年ごとにまとめられている大型施設研究計画に関するマスタープランが取りまとめられました。その重点計画の中で、現在、東北地方に誘致を目指している国際リニアコライダー、ILC計画は選ばれなかったということになったんですけれども、その受け止めと今後の進め方について教えてください。

大臣)
昨日、公表されました日本学術会議のマスタープラン2020の中にILC計画は重点大型研究計画に選定されなかったと承知をしています。これは学術界を代表する見地から取りまとめられたものであり、今後の行政側の検討において参考となるものだと受け止めています。国際プロジェクトであるILC計画は、国内外の幅広い賛同が得られることが必要であり、マスタープラン2020の結果を踏まえるとともに、欧州素粒子物理戦略等の議論の進捗も注視しつつ、慎重に検討を進めてまいりたいと思います。あくまでこれは国内の単独の計画じゃなくて国際プロジェクトでありますし、我々も、先行きを中々皆さんに説明しづらいのは、各国がどういう財政的な協力をするかということの詰めがまだ進んでおりませんので、そういう意味ではこの段階で長期のプロジェクトに入らなかったということはそんなに驚くべきことではないんじゃないかなと思っています。しっかり、国際機関との連携を確認しながら事業の有効性も含めて、また、日本国内でやるのかやらないのか、やるとすればどこなのかと色んな課題もありますので、今後もしっかり注視をしていきたいなと思っています。


地道に農林水産業や観光などの振興に取り組むことが大事ー「ILC誘致を考える会」代表が、「地域振興」のあり方からILC誘致推進運動を批判[2020年09月29日(Tue)]
 素粒子研究施設の国際リニアコライダー(ILC)を北上山地に誘致しようという運動が、その研究の主体である高エネルギー加速器研究機構が計画の申請を取り上げたことで破綻を迎えました。青森県下北郡に生まれ、「むつ小川原湖開発」に振り回された故郷の歴史を見てきたので、ILC誘致の進め方には地域振興の考え方の誤りがあると考えていました。「ILC誘致を考える会」の代表の寄稿が9月27日付の胆江日日新聞に掲載されました。科学者の誠実さを問いかけていることにも、共感を覚えます。

寄稿「県民軽視のILC研究者」〜いつまで県はKEKのミスリードに付き合うのか
千坂 げんぽう(一関市、僧侶)

 世界中を恐怖に陥らせているコロナ禍は、GDP(国内総生産)を重視する経済成長優先の社会に反省を投げ掛けている。しかし、政府、岩手県などは世界的な課題に真剣に向き合いながら国民、県民の生命を重視した施策を行っているだろうか。
 日本においては、東日本大震災以降、台風などによる風水害や地震被害が続いている中でのコロナ禍、政府はコロナ禍から国民の生命と産業を守るとして2次にわたる補正予算を繰り出した。国民の生命を守るという「錦の御旗」は、誰もが異議を唱えにくいので補正予算は通過したが、東日本大震災と同様「錦の御旗」に便乗した各省庁の無駄遣いは著しい。今や国民一人当たりの借金は900万円を超えんとする勢いなのにである。
 国に比べスケールは小さいが、岩手県のILC(国際リニアコライダー)誘致運動も似たような構図が見られる。ILC誘致が実現すれば、「国際科学都市ができる」とか「多くの雇用が生み出される」などの「錦の御旗」で、岩手県を中心とする推進側は県議会や各市議会でのいち早い同意を取り付け、反対を許さない戦前の「大政翼賛会」的な体制をつくり上げた。
 私は7年前からILC誘致反対の意見を県内他紙のオピニオン欄で述べていた。当初は「雇用が増えるのになぜ反対するの?」と非国民的な目で見られていた。欧米、日本の財政難や日本政府の科学予算の在り方を勘案すれば、国際事業であるILCのような巨大プロジェクト誘致を本気で考えること自体、高度経済成長期やバブル経済の再来を夢見る「愚かな考え」と思っていた。投げ掛ける冷ややかな視線も「どうせ実現しないのだから」と気に掛けることもなかったし、あえて反対運動を呼び掛けるつもりもなかった。
 しかし、岩手県や一関市が出前授業と称して、小学生から高校生、高専の学生まで「1万人の国際科学都市ができる」という確約されてもいない夢を語っていた。将来世代に悪影響を与えつつあると感じた。そんな中、請われて市民団体「ILCを考える会」の共同代表になった。
 日本学術会議が2018(平成30)年12月19日に公表した「ILC計画の見直し案に関する所見」には、『純学術的意義以外の技術的・経済的波及効果については、ILCによるそれらの誘発効果は現状では不透明な部分があり、限定的と考えられる』と、否定的な見解が記されている。
 学術会議は人文科学、社会科学、情報科学、医学、農学、工学、理学など科学者約87万人の中から選ばれた会員、連携会員で構成され活動している。その会員が長時間検討して「日本誘致を支持するに至らない」とした。いくら「岩手県民が一致してILC誘致を希望している」と繕ってアピールしても、学術会議の結論は重い。
 この学術会議の所見について、東北ILC準備室長(当時)の鈴木厚人・岩手県立大学長(素粒子物理学)は講演で「事実誤認に知識不足ばかり。時間をロスしてばっかりだ」と発言。学術会議の組織・運営にも疑問を呈したという。
 このような発言が研究者からなされることは信じがたいし、許されるべきではない。八つ当たりの発言は、自分が科学者であることを忘れた恥ずべき行為なのである。誘致関連費用を出している岩手県は何を考えているのだろう。
 所見は「所要経費が格段に大きく、長期にわたる超大型計画」だとし、「国民に提案するには学術界における広い理解と支持が必要」と指摘する。さらに「地域振興の文脈で語られている事項、土木工事、放射化物生成の環境への影響に関する事項等について、国民、特に建設候補地と目されている地域の住民に対して、科学者コミュニティーからの正確な情報提供に基づく一層充実した対話がなされることが肝要」とある。
 ところが誘致推進側は、ILC計画に携わる高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者らを岩手県に招いたPRしか行っていない。漫画や芸能人を利用したPRもしているが、他分野の科学者コミュニティーの理解を得る実践は皆無と言ってもよいほどだ。一関市、奥州市でのリスク説明会も、私たちが反対の決議文を学術会議や文科省に提出してから、形だけ行ったに過ぎない。
 KEKでは「BelleU(ベル・ツー)」実験のように、素粒子の謎に迫る良い結果を出していると聞く。素粒子物理研究の進展は喜ばしいが、可能性のない計画を展望があるかの如く引き延ばし、県民の税金を無駄に使わせることは、県民を軽視していることに他ならない。彼らの「岩手県民は私たちの言うことを聞いていればよい」とでも考えているようなパターナリズム(父権主義)的な姿勢は、民主主義と相容れるものではない。
 ロードマップ2020に申請していたILC計画だったが、今年3月27日に取り下げていた。KEKは国際協力体制が確立されたためなどと理由を述べてはいる。だが私は、審査の結果、ロードマップに掲載されなかった時のことを恐れたのではないかと感じた。不掲載は、予算化への道が明確に否定されたことになるからだ。
 なにより、9月8日からパブリックコメントが開始されるまで発表せず隠していたことには、「県民をばかにした行為」という印象を受けた。一部報道では、まだILC計画に見込みがあるというKEKの一方的な発表をそのまま記事にした。どうしてこうも客観性を欠くようになったのか、KEKと地元自治体、一部マスコミとの関係の究明も必要ではないか。
 財政難の日本の現状、経済力が弱い岩手県……。これらの状況を冷静に見つめ、地域づくりには王道はないことを知るべきである。巨大プロジェクト誘致などではなく、地道に岩手の農林水産業や観光などの振興に取り組むことが大事ではないだろうか。

※投稿者の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり、「ぽう」は峰
ILC計画の申請取り下げー研究者が公表の遅れを陳謝。しかし計画にまだ見込みがあるかのように「説明」。自治体の首長・議員は、「わかったふり」をしないで、ハッキリさせる対応が必要では。[2020年09月25日(Fri)]
 岩手県国際リニアコライダー推進協議会の主催、東北ILC推進協議会や東北ILC事業推進センター等の共催で9月24日、ウェブ方式のILC講演会が開催されました。
 国際リニアコライダー(ILC)計画に関する文部科学省への申請を取り下げ、その事実が約半年にわたり公表されなかった件について、この講演会で東京大学素粒子物理国際研究センターの森俊則教授が陳謝しました。
 申請書の取り下げの公表の遅れについては、担当している高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)がホームページで「おわび」を表明していました。森教授は「ILCを推進するコミュニティーの代表として申し訳なく思う」と謝罪しました。
 しかし、その説明は、報道を見る限り、率直ではありません。まだILCの日本誘致に見込みがあるのかどうか、首長・地方議員は「わかったふり」をしないで、ハッキリさせる責任があります。
 胆江日日新聞は9月25日、以下のように報道しました。

 森教授は「国際将来加速器委員会(ICFA)」の委員。国内では、高エネルギー物理学研究者会議委員長などを務めている。同日は県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)が主催するILCウェブ講演会の講師の一人として、直近の動向を紹介した。
 ICFAは今年2月、ILC計画推進に当たり、国際協力体制の枠組みを再構築するよう提言した。これとほぼ同時期、KEKは文科省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」に係る申請書類を提出。計画登載に向けた審査を受ける流れだったが、ICFAの提言に基づき体制構築が進めば「申請書に示した内容とは異なる」とし、KEKは3月27日に申請を取り下げた。
 ところが、KEKはロードマップの素案公表日と同じ9月8日になって、取り下げた事実を明かした。計画実現へ密接に協力してきたはずの東北の誘致団体、候補地周辺の自治体首長らにも知らせていなかった。KEK広報室は「ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、報告が遅れた」としている。
 森教授は「サポートを頂いている地元の方々、産業界の方々にすら伝えていなかった。どんなに必要な理由があったにせよ、非常に大きな間違いであり、(誤った)判断だった」と述べ、陳謝した。
 その上で「8月には国際準備研究所を立ち上げる『国際推進チーム』が発足した。1年から1年半後には準備研究所ができ、4年間にわたり細かい設計や地質調査などを行う。並行して政府間の協議を行うが、ここで各国の分担を話し合い、本当に(TLC計画を)やるかどうかが決まってくる」と説明。「今は(政府が)やる、やらないを判断するタイミングではない。今後の進展を見て判断していくだろう」と述べた。
 同日は東京大学の山下了特任教授、元国土交通省国土政策局長の藤井健氏らも講演。ILC計画などが反映された国土計画協会の「地球村創生ビジョン」策定に携わった藤井氏は、「新型コロナウイルス対策は最優先すべき課題ではあるが、だからと言って宇宙の真理を探究するような研究の積み重ねを止めていいわけではない。地球温暖化対策と同様、われわれの世代だけでなく、次の世代にも積み上げバトンを渡していくもの。そのためにも、ILCは取り組まなければいけない」などと述べた。

講演会チラシ.jpg
ILC誘致推進事業は停止し、ILC推進協議会等から退会をー岩手県の住民運動団体が岩手県知事、一関市長に要請。宮城県と仙台、気仙沼、栗原、登米、大崎の5市も、ILC誘致の破たんに対応を迫られることは必至です。[2020年09月24日(Thu)]
 素粒子実験施設の国際リニアコライダー(ILC)の北上山地への誘致のあり方を批判している岩手県の市民団体「ILC誘致を考える会」(共同代表=千坂げんぽう、原田徹郎)が9月17日、岩手県の達増拓也知事に対して、高エネルギー加速器研究機構(略称KEK:山内正則機構長)と連携し実施しているILC誘致推進事業の停止などを求める要請書を提出しました。
 同会が岩手県に要請書を提出するのは今年2度目。
 一関市の勝部修市長と大槻隆・同市議会議長にも同様の文書を提出し、東北ILC推進協議会と東北ILC事業推進センターから退会すること、ILC誘致推進費の執行停止などを要請しました。
 同会は、一関市に拠点を置き、ILC誘致のあり方に疑問や慎重な意見をもつ一関市、奥州市、平泉町などの住民が参加している会です。
 岩手県のILC誘致に追随してきた宮城県、仙台市、気仙沼市、栗原市、登米市、大崎市も、誘致計画の破たんで対応を迫られることは必至です。
 「ILC誘致を考える会」が一関市長に提出した要請書を紹介します。

一関市長 勝部修様

「東北ILC推進協議会」と「東北ILC事業推進センター」からの退会とILC推進事業の停止を求めます

 最近のILC(国際リニアコライダー)をめぐる動きは、一般市民には分かりにくくなっています。その原因はKEK(高エネルギー加速器研究機構)が主導するILC日本誘致推進運動の不純な動きにあります。
 2018年12月19日、日本学術会議は「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」で、巨額の経費の主要部分を日本が負担することに十分見合うものであるとの認識には達しなかった」「250GeV ILC計画を日本に誘致することを日本学術会議として支持するには至らない」と文科省に報告しました。
 これを受けて文科省(磯谷佳介研究振興局長)は、2019年3月7日に「政府見解として日本学術会議の報告を尊重する」旨の発言をしました。
 その後、日本学術会議と政府が、今後は正式なルート(日本学術会議のマスタープランに申請し、採択された後、文科省のロードマップで予算化の検討をするという道筋)を通して検討するのが望ましいとしたため、KEKはマスタープラン2020に申請しました。しかし、マスタープランでは採用されなかったのですが、政治運動が実ったのか、ロードマップでヒアリングは受けることができるという前例のない扱いを受けました。これは政治的配慮にすぎず、ロードマップに乗る見通しはありませんでした。

 このような状況の中、欧米諸国は素粒子物理学の国際学会でILCには資金を出せない旨の意見を示していました。その意向をより明確に示したのはCERN(欧州原子核研究機構)が2020年6月19日に公表した「欧州素粒子物理研究戦略」でした。そこでは明確に、投資の余力がないこと、日本が「適当な時期に(ILCを)実現すれば、共同で(研究に)取り組む」と発表しました。推進側の当初計画では、2021年までには地権者などの了解を得て工事に入るという予定でしたので、CERNはすでにILCを日本に設置することは困難になったことを知っていたのです。しかし、日本における素粒子物理学者仲間の立場を考慮して、婉曲的に日本誘致は「安楽死」状態であることを示したのです。

 ところがKEKは、岩手日報などに、まだまだ見込みがあるかのような解釈をして説明していました。その時は、既に(2020年3月27日)KEKはロードマップ申請を取り下げていたのです。9月8日から始まるパブリックコメントまで、取り下げを隠していたのです。それはなぜでしょうか。
 KEKは、ILCの日本誘致は無理なことを知っていながらも、すぐに発表すると岩手県や一関市が誘致費を出さなくなることを怖れていたとしか考えられません。
 その証拠は、KEKが実質的に主宰している「東北ILC推進協議会」(岩手県、宮城県の自治体が加盟)の動きです。今年5月(岩手県や一関市の令和2年度予算でILC誘致推進費がほぼ決まった時期)に、KEKはILC誘致運動の実戦部隊である「東北ILC準備室」廃止を決め、ILCの日本誘致ではなく、「KEKの加速器研究(ILC以外を含む)の応援団的な組織(東北ILC事業推進センター)設立」に舵を切ってきました。
 一般県民は、単なる名称の変更くらいにしか受けとめていませんでした。しかし、これらの動きは、ILC日本誘致が絶望的なことが分かっているKEKが、それにも関わらず加盟自治体を支配下に置いて加速器研究に利用したいために、誘致が絶望的である事実を隠し「ILC日本誘致が、まだまだ見込みがあるかのように装って、今後も岩手県や一関市からお金を引き出すことを企てた」と言えます。この段階では、各自治体はロードマップ2020申請の取り下げの事実を知らず、まだまだ政府(文科省)に採用される可能性があるというKEKの説明を信じていたのです。
 KEKは「ベル2」実験などで素晴らしい研究成果を出していますが、巨大プロジェクトを望む岩手県や一関市に虚偽の説明を並び立て、申請取り下げの事実を隠蔽するなど、およそ科学者にはあるまじき策動をしています。このような不誠実な団体に踊らされることは、一刻も早くやめるべきだと思います。岩手県や一関市は財政力が強い自治体ではありません。いくら素晴らしい研究をしている機関だとしても、自治体がKEKという一つの研究機関にすぎないものに振り回され、無駄に県民、市民の税金を使うことは許されません。一刻も早くILC誘致推進運動から手を引くことを望みます。

 以上のような経緯から私たちは、以下の要請をいたします。

1、一関市は、KEKやこれに追随する一部の報道に振り回されることをやめ、一刻も早く「東北ILC推進協議会」と「東北ILC事業推進センター」から退会すること。

2、一関市の「市長公室のILC推進課」を廃止し、ILC誘致推進費の執行を停止すること。

 ※年間4125万円(平成30年度)とも言われる推進費と、いわゆる人件費も、コロナ禍の厳しい経済情勢では無駄遣いです。ILC推進課は市長公室に設置され、5職員で構成。さらに隣席の政策企画課5職員も「ILC推進課兼務」を課す。ちなみに公開資料によると、一人あたりの平均給与は1/12ヶ月のボーナスを含め月53万1299円で、年間支払いは637万5688円。

3、一関市長は(たとえKEKや一部の虚偽報道に振り回された結果とはいえ)出前授業と称して、まったく事情の分からない子どもたちに対して「1万人の科学都市ができる」などの根拠のない情報をまき散らしてしまったことを自覚し、その責任を受け止めて、子どもたちへの心のケアをどうするかを議会で明確にさせること。

4、長年「ILCを中心にしたまちづくり」を市政の基軸としてきた一関市長の政治的責任を、議会で明確にさせること。


<参考資料>
※岩手県民ニーズで調査で、ILC誘致は最下位にあります。
 2020年6月27日付の「令和2年 県の施策に関する県民意識調査結果報告」
・「重要度」−重要度の低い項目
  「ILCや新たな産業振興への取組」 56位/全57項目
・「ニーズ度」−ニーズ度の低い項目
  「ILCや新たな産業振興への取組」 53位/全57項目

 また、「いわて幸福白書 2020」の第4部「幸福度データー編」に82項目の指標が掲載。ILCは本来は9項目の「社会基盤」の項目と思われるが、今年は入っていません。
 Face Book「いわて幸せ大作戦―ともに歩む県民計画ー」で、2019年11月9日に「ILCプロジェクト」に触れただけ。

写真はKEKのサイトにあるヒッグス粒子に関する解説図から
higgs_force_field_0_0-thumb-734xauto-10009.jpg
ILCの日本への誘致は完全に無くなったー岩手県の千坂げんぽうさんの論考をいただきました。[2020年09月19日(Sat)]
 ILC(国際リニアコラーダー)の日本誘致の旗振りをしていたKEK(高エネルギー加速器研究機構)が、「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」への申請を取り下げていたことが9月8日に判明しました。ILCを実現したければ、基本構想の一つに採用されてロードマップに掲載されなければなりませんが、自ら申請を取り下げたことで、ILCの日本誘致は完全に無くなりました。
 岩手県の「ILC誘致を考える会」共同代表の千坂げんぽう氏の論考が届きました。
 岩手県では、9月24日に岩手県ILC推進協議会がWeb講演会を企画し、税金を浪費することを自己目的にしたような「お祭り」が続いています。千坂氏は、CERNが日本誘致を明快に否定しない「打算」を指摘しています。私たちの税金をこれ以上、食い物にされていいのでしょうか。千坂氏は「モノ言わぬ民」はやめましょう! と、訴えています。
 千坂氏は、87万人の科学者から選挙で選ばれて学術会議法に基づく役割を果たしている日本学術会議を罵倒した鈴木厚人・岩手県立大学学長の発言について、「名誉棄損にも値する」と、厳しい批判を加えています。
 今からでも遅くはありません。わかったふりをしないで、「王様はハダカだ」と言おうではありませんか。
 ILC計画についてのまともな吟味もしないで、誘致運動の尻馬に乗った村井県政の対応は、軽かったのではないでしょうか。

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岩手県の「胆江日日新聞」がILC計画の取り下げを本日付で報道しました。[2020年09月10日(Thu)]
 岩手県の奥州市を中心に発行されている地方紙「胆江日日新聞」が本日、ILC計画の申請
取り下げを以下のように報道しました。ILC誘致のあり方を問いかけてきた住民運動団体の受け止め方も紹介しています。

文科省のロードマップ登載申請 ILC計画 取り下げ(KEKが今年3月)

 茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)が、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に関連した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」への計画申請を今年3月に取り下げていたことが分かった。KEKは今月8日、誘致推進で連携している東北や本県の関係先などのほか、報道機関に事実関係を通知。取り下げの理由について、国際協力体制が申請した時点から大きく進展したためとしている。

 文部科学省が策定するロードマップは、幅広い研究分野の意向を踏まえながら、大型プロジェクトの優先度を明らかにするもの。日本学術会議(山極寿一会長)の「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」と関連性があり、いずれも3年ごとに策定している。
 KEKは、今年2月末に書面審査の申請書類を提出。書面審査やその後のヒアリング審査は3〜4月にかけて行われる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で6〜8月にずれ込んだ。今月8日、文科省は素案を公表し意見募集(パブリックコメント)を開始した。
 ところが、文科省の素案公表と同日、KEKはロードマップへの申請を3月27日の時点で取り下げていた事実を明らかにした。取り下げによりILC計画は審査対象となっていないため、素案の中には記載されていない。
 KEK広報室によると、2月末の申請書提出とほぼ同時期に、国際将来加速器委員会(ICFA)などから新たな国際推進チームの立ち上げと、国際協力体制の枠組みの再構築に関する提言があった。申請書類では、国際協力体制の在り方が若干弱い表現だったが、新体制構築が明確になったことで、「申請書の内容と現状が異なる」と判断。取り下げたという。
 KEK広報室は「ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、報告が遅れた」と謝罪しながら、「国際推進チームが8月に設立され、新たな体制で活動を進めている。KEKは国際研究者コミュニティーと共に、引き続きILC実現に向け鋭意努力していく」とした。取り下げによるスケジュールへの影響はないとしており、「(3年後の)次期ロードマップへ再度申請するかどうかは、状況の推移によって判断することなので現時点では不明」と話している。
 申請取り下げについて、奥州市の小沢昌記市長は9日の定例記者会見で「事実を知ったのは今回の通知や報道を受けてだったが、後ろ向きな理由で取り下げたわけではないので、この時点での通知について特に遺憾に思うようなことではない。大きなハードルを乗り越えていく上で、(取り下げた)今回の判断は手法として良かったのでは」との見解を示している。
 県ILC推進局の高橋勝重局長は「6月の素粒子物理戦略により欧州も協力を表明しており、国際推進チームが立ち上がり動き始めている。その中でKEKが先を見据えて取り下げたと理解している」と話している。

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誤解招きかねない対応
【解説】
 ロードマップ2020の審査テーブルに、そもそもILC計画はなかった――。審査委員が「NO」の評価を下したからではなく、KEKが自ら審査を受けずに退いたから「掲載されなかった」のである。一種の通過関門のような位置付けだったロードマップ審査から退いた事実を、5カ月以上も明らかにしていなかったのはなぜか。
 KEKは、審査過程が非公開だから取り下げた事実の公表を控えていたという。だが、そもそも取り下げた計画までも「非公開」の対象なのか。文科省研究振興局は本紙の取材に「『取り下げたことを当事者は明かしてはいけない』という決まりはない」と答えている。非公開はあくまで、KEKの判断にすぎない。
 「非公開」は、公費を投じた誘致活動を展開している候補地の地元自治体に対しても、である。「そんなつもりはなかった」としても、地元軽視や情報隠蔽と誤解されても仕方ないのではないか。
 「審査されているものだと思っていた」。奥州市ILC推進室や東北ILC推進協の職員は、本紙の取材に答えた。誘致に反対姿勢を示している市民団体「ILC誘致を考える会」共同代表の千坂げんぽう(※)氏(75)は、「結局、県も地元自治体もKEK任せ。住民の不安や問題点を指摘する声よりも、研究者側の指示を重視して動いているにすぎない。パターナリズム(父権主義)的構造だ」と指摘する。
 地域の姿が一変するかもしれないILC。そのさまざまな重要判断は、残念ながらわれわれ候補地近傍にいる人間には見えない遠い遠い舞台で行われている。それゆえ、地元対応はより一層丁寧であるべきだ。そして地元の誘致関係者は、時に研究者サイドの問題点を指摘するぐらいの、適度な緊張感と距離感を持つべきだ。
(児玉直人)

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」は山へんに「諺」のつくり。「ぽう」は「峰」
ILC(国際リニアコライダー)の構想が練り直しに。研究の戦略が大事。政治の過剰な介入も、大型開発誘致で地域振興を考えることも止めるべきです。[2020年09月09日(Wed)]
 岩手県などが北上山地に誘致をめざしていた超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の申請が、途中で取り下げられていたことが9月8日に明らかになりました。
 ILCを推進するのであれば、政府が優先的に進める大型研究計画の基本構想「ロードマップ」に盛り込まれなければなりませんが、誘致を推進していたKEK(高エネルギー加速器研究機構)がILCの申請を3月に取り下げていました。その理由についてKEKは、国際的な計画の進め方が一新されることが見込まれるので制度の設計などを見直すのだとしていますが、ロードマップに載らないことで、ILCの早期誘致は厳しくなったといえます。

 ILCによる研究については、その戦略の妥当性や巨費を投入する計画について、学術の世界での合意が不十分だと伺っています。
 それなのに、誘致推進運動が科学技術政策の本筋から外れて、建設工事等による経済効果や外国からの研究者の移住を過大に宣伝し、大きな歪をつくってきました。
 ILCを誘致するのであれば、巨大な開発が伴うので、環境への影響や実験で発生するトリチウム等の放射能への対応など、新しく対応を求められる政策課題も明らかにして、住民合意の形成をめざすべきでしたが、科学性と民主主義に課題があったのではないでしょうか。
 そもそも地域振興を「大型開発誘致が先にありき」で考えたことが、間違いだったのではないでしょうか。
 素粒子や宇宙像の研究については、その意義を否定する人はまずいないと思います。
 それだけに残念です。

<写真はビームライン>
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ILC(国際リニアコライダー)計画。萩生田光一・文部科学大臣の発言を見ると、そもそも研究戦略として研究者コミュニティでコンセンサスを得られていない。住民や自治体が誘致を働きかける前提条件がないのではと読めるのだが。[2020年06月25日(Thu)]
 萩生田光一・文部科学大臣は、ILC(国際リニアコライダー)計画について、記者の「東北地方に設置が予定されている」という誤解に、そのような「事実はない」ことを明快に発言。
 素粒子物理学分野の取組の優先度を示す「欧州素粒子物理戦略2020」について、欧州の研究者コミュニティが、「ILC計画に具体的な協力をもって参加することにまでは踏み込まなかった」ことを説明。
 ILC計画は、素粒子に関わる研究戦略として、まだコンセンサスが得られていない。住民や地方自治体が、誘致を働きかけることができるような到達点にはないと思われるのだが。

萩生田光一・文部科学大臣記者会見(6月23日)=抜粋=は以下のとおり。

記者)
今、東北地方に設置が予定されている国際リニアコライダーについてお聞きします。今週ですね、欧州の方で、欧州科学技術の長期計画で欧州戦略というのがあるんですが、そこに国際リニアコライダーの結果が盛り込まれました。ただ一方で、その文書からは、日本がやるのであれば欧州も協力するといった、ちょっと、少し後ろ向きなような表現をとられました。今回、それに載ったということで、大臣の所見と、今後の政府としての話合いの方針・方向性などがあれば教えてください。

大臣)
お言葉ですけど、東北地方に予定しているという事実はございませんで、九州でも熱心に誘致をしておりますので、改めてお願いをしたいと思います。先週の6月19日に欧州合同原子核研究機構が発表した「欧州素粒子物理戦略2020」において、ILC計画については、「タイムリーに実現する場合には、欧州の素粒子物理学コミュニティは協力を望むであろう」と記載されました。これは、欧州の研究者コミュニティが、素粒子物理学分野の取組の優先度を示す同戦略において、ILC計画に具体的な協力をもって参加することにまでは踏み込まなかったものと認識しています。また、欧州自身の将来の加速器研究計画について、より多くの分量を割かれており、「技術的及び財政的な実現可能性を調査すべき」ことも記載されています。文科省としては、今回の欧州素粒子物理戦略も踏まえ、米欧の政府機関との意見交換などを行うなどして、昨年3月に示したILC計画に関する見解に沿って対応してまいりたいと思います。

右矢印1●萩生田文部科学大臣の記者会見動画
国際リニアコライダー(ILC)を考える視点、今の誘致推進が「かなりおかしい」ことが分かりますー家泰弘氏へのインタビューに注目しました。[2020年01月03日(Fri)]
 岩手県の地方紙「胆江日日新聞 」が1月1日付の「サイエンスニュース」で、日本学術会議のILCに関する検討委員会委員長を務めた家泰弘氏のインタビュー記事を掲載しました。
右矢印1胆江日日新聞のサイトはこちら

 私は2018年9月の宮城県議会予算委で、ILCが放射能施設であることや課題が多い事を指摘しました。「全体像をつかむこと」を前提に、慎重な検討を村井知事に求めましたが、問題意識は間違っていなかったのではないかと思いました。
 たいへん参考になりました。以下は、その記事の引用です。
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 国際リニアコライダー(ILC)誘致の行方を左右する日本学術会議(山極寿一会長)の「マスタープラン2020」が、今月中にも策定される見通しにある。昨年出されたILCに関する政府見解について、「関心表明」と受け止める向きがあるものの、実現への道程は縮まっているのだろうか。学術会議で、ILCに関する検討委員会委員長を務めた家泰弘氏(68)=日本学術振興会理事=へのインタビューを通じて、実現を阻む「問題点」を整理する。
(児玉直人)

 家氏は昨年末、奥州、一関両市を訪問した。現計画について、「予定通り研究を終えても、見えてくる成果は『登山道の入り口』というレベル。物理の探究は完結せず、継続には再び巨額投資が伴う」と強調。さらに安全面が重視される粒子ビームの処理装置「ビームダンプ」に対する危機管理対応などにも、信用性が欠けると指摘した。
 昨年3月の政府見解は「学術会議の回答内容に即した内容だった」との認識。しかし、回答で指摘した重要な諸課題が地域社会に伝わっていないと感じており、推進派研究者らの「関心表明」という解釈には疑問を呈した。
 本紙は、家氏のほか、推進派の産学官関係者で組織する東北ILC準備室(室長・鈴木厚人県立大学長)へも、政府見解の受け止め方や誘致活動の在り方に関し同様に質問。返ってきたのは、「多くの方々の声を踏まえて、ILCの推進活動を行っている。マスコミの皆さまには、引き続き、定例の記者勉強会の開催等も検討して参る」とのコメントのみで、具体回答は得られなかった。

技術面や推進体制 数多くの問題点語る
 日本学術会議(山極寿一会長)に2度設置された国際リニアコライダー(ILC)計画に関する検討委員会。その委員長を連続して務めた日本学術振興会理事の家泰弘氏。2度目の検討委審議が終わった2018(平成30)年12月以降、「政府見解が出るまでは」とメディア取材を一切断り続けていたというが、「検討委が問題とした事柄を、特に地域の方々に正しく理解していただくことは重要」と昨年末、本紙の取材に応じた。審議の場でどのような議論が交わされたのか。政府見解の本意は何だったのか。そして、候補地の地元に伝えたいことは――。これまで地域住民にその詳細がほとんど伝えられてこなかった技術的な課題とそこに潜む重大なリスク。誘致運動の在り方や推進派研究者らの姿勢など、北上山地に足を運び、現地の様子を直接感じながら1時間半余りにわたり語られた思いを、国内報道機関として初めて紙面化する。
(聞き手=児玉直人)

国内候補地決まれば即ILC建設GO? 前のめりの誘致合戦

――学術会議の回答は、いずれも慎重対応を求める厳しい内容だった

 1回目の審議は2013(平成25)年。文科省研究振興局長名で、広い分野から見たILCの学術的意義や関連事項について審議、回答してほしいと依頼があった。私は当時、学術会議の副会長だった。3人いる副会長の中で分野的に近かったので、委員長を務めた。
 審議やヒアリングでは推進派研究者の話を聞く一方、日本が過去に取り組んだ国際プロジェクトの比較対象として、ITER(国際熱核融合実験炉)計画に携わった方からも話を聞いた。
 委員長という責任ある立場だったので、英文で約1000ページにわたる推進派国際チームが作った技術設計報告書(TDR)も全部読ませてもらった。非常に詳細に検討している印象を受けたが、実現させるには技術的な課題があると感じた。また、その時点では建設候補地が特定されておらず、場所が決まらなければ詰められない課題もあった。
 もう一つの外的要素として、ジュネーブ近郊のCERN(欧州原子核研究機構)の実験施設「LHC(大型ハドロン衝突型加速器)」で、ヒッグス粒子発見後のプロジェクトとして、エネルギーを上げた実験が間もなく始まろうとしていた。2、3年でデータが出てくる見通しだったので、その後にILC計画はどのように進めるべきかを判断するのも重要だと感じた。
 学術会議の審議と同時期に、日本の推進派研究者は国内候補地を北上山地か九州の脊振山地のいずれかに絞り込む議論を進めていた。両候補地の地元関係者はものすごい誘致合戦をしている感じで、どちらかに決まれば「すぐにILCの建設準備が始まる」かのような雰囲気だった。「いや、ちょっとまって。今はそういう段階ではない」と、私たちは見ていた。
 そんな状況を経ながら、1回目の検討委の回答はその年の9月に文科省へ提出した。「もう少し冷静に見極めたほうがいい」「推進派はより計画内容を詳細に詰め、文科省でも計画を検討するように」という趣旨の内容だった。それを端的に表現したのが「時期尚早」だったが、この言葉がどこか独り歩きしてしまった感があった。

実験で分かるのは「登山道の入り口」 巨額投資に見合うか

――協議の舞台は文科省の有識者会議に移ったが、再び学術会議に戻ってきた

 はい。有識者会議で約4年にわたり議論され、2018年7月下旬、もう一度学術会議で審議してほしいと依頼があった。
 委員の人選が進められる中、すでに学術会議副会長を退いていた私にも声がかかった。まさか2度も委員長をやるとは思っていなかった。
 エネルギーを上げて行われたLHCでの実験結果を踏まえ、ILCの推進派はヒッグス粒子実験にかなり特化させた「見直し計画」を打ち出していた。当初は全長約30キロ(※1)で実験を始める予定だったが、ヒッグス粒子生成に適した全長約20キロの施設規模で実験を進める方針に改めた。
 急ピッチで審議を進め、学術会議としては2回目となるILC関連の回答を12月末に文科省に提出した。
 まず「学術的意義がある」という点は述べた。これは基礎的な物理の研究なので、他の研究であっても同様の見解が示されることがほとんどだ。
 意義があるとした一方で▽巨額予算が投入される▽技術的側面から本当に実現できるのか▽仮に想定している研究目標が達成できても、得られた結果は巨額投資に見合うものなのか――などの点を指摘させてもらった。
 全長20キロのILCは、研究目的が「ヒッグス粒子の精密測定」に焦点を当てたものになっている。そのために巨大な研究装置を巨額投資して造ることに、どれだけの意義を見いだすか。
 検討委メンバーの大方の意見を分かりやすく表現すると「やや物足りない」だった。仮に10年、20年、何のトラブルもなく最高性能を発揮し続け、予定通りの実験データを蓄積し研究成果が得られたとしても、あくまで「登山道の入り口が分かった」というレベル。そのような成果にとどまってしまうのは、われわれが住んでいる自然界が「どうもそうなっているらしい」といことなので、別に推進派研究者の責任ではない。とはいえ「標準理論を越える」「宇宙誕生の謎を解明する」という“山頂”に到達するには、再び巨額投資が必要になる。全長20キロで物事は絶対完結しない。
 もちろん実験なので、思いがけない成果が出る可能性はゼロではない。しかし、前面に掲げてアピールするようなものではない。
 繰り返しになるが、全長20キロのILCはヒッグス粒子研究という単一目的のマシンで、多目的の加速器とは違う。審議の場で私がそう言ったら、推進派から「いやそうではない」と指摘があったが、これは誰が見てもほぼ単一目的の装置だ。なので、滞りなく最後まで実験を進めないと、非常に中途半端な装置になってしまうわけだが、それを達成するには非常に難しい技術的課題がたくさんある。

「ビームダンプ」は一番議論した装置 山積する技術的課題

――数多くの技術的課題の中で特に議論になったのは

 衝突しなかった電子や陽電子の粒子の捨て場となる「ビームダンプ」という装置だ。加速器装置において粒子ビームは、安全に処理しなければいけない。
 ILCで想定されているのは、かなり大きなタンクに圧力を高めた水をためておき、チタンで作った金属窓を通じて、粒子ビームをタンク内に入射させる方式だ。おそらく、金属窓の同じ場所にビームを照射し続けたら溶けてしまうので、ビームを回転させ窓の一点に当たらないようにするという。
 それは理解できたが、不測の事態が起きた時、例えば窓が破れたらとか、劣化したときの交換はどうするのかという疑問が生じた。タンク内の水には、ビームと水との反応によって生成された放射性物質「トリチウム」が含まれている。いかにして安全に扱うのか心配された。
 冒頭に述べた約1000ページにわたるILCのTDR(技術設計報告書)で、ビームダンプに関する記載はたった2ページしかなく、あまり詳しく書いていなかった。
 検討委のヒアリングで、私は推進派研究者にかなりしつこく聞いたが、納得する答えは最後まで返ってこなかった。
 ある時「運用中にビームダンプが故障したらどうするのか」と聞いたら「うーん」と言って、次の会議の時、当初の資料に無かった予備のビームダンプを置く部屋を急きょ描いてきた。心の中で「そういうのを今まで検討していなかったの?」と首をかしげた。
 トリチウムに関しては、候補地の地元住民から心配の声が出ている。一般の方々が生活している場所にトリチウム水が漏れ出していくようなトラブルが起きるという懸念について、実は私はあまり心配していない。装置自体は地下の実験室にあり、仮に漏れたとしても生活環境にまで影響が及ぶ可能性は非常に低いと思っている。
 ただし、実験室内でビームダンプの水が漏れたり、窓が破れたりする事象が起きると、そこに立ち入っての修理が非常に難しくなる。ロボットを使って遠距離で修理作業するにしても、そんな複雑な作業ができるのか想像できなかった。この点も推進派に聞いてみたが、十分な答えは返ってこなかった。もしこれらの疑問に対する検討を進めているのであれば、ぜひ詳細を教えてほしい。
 推進派が提唱するビームダンプは、米国のSLAC国立加速器研究所で少し実績があるようだ。しかし、計画に示された規模のものがまともに動くのかなと感じたし、われわれはSLACが実際にどれだけの技術を持っているのか分からない。推進派はSLACのビームダンプをどのように評価して「大丈夫だ」と思っているのだろうか。
 もし、本当にちゃんと評価し理解しているのであれば、われわれの質問に対して即座に「こうです」と答えてくれてしかるべきだ。ところが「いや、それはSLACに実績がありますから」という答えに終始し、納得がいかなかった。
 今の段階で「確実に誰が見ても大丈夫」というわけではないのに、推進派の一部は政治家に向かって「あとは造るだけ」みたいなことを盛んに言っている。ILCは、どこか1カ所でも不具合が起きれば、全体が動かなくなる総合的な巨大システムだ。どんなに高性能の超電導加速管があっても、他の場所に不具合があれば加速器としては機能しないのだ。そこに対する意識が推進派はちょっと低い。

一度動きだしたら絶対止められない 米国で過去に失敗例

――巨額予算がILC実現の壁となっていることが以前から指摘されていた

 もし数億円程度のプロジェクトなら「まぁ、やってみなさい。もし失敗したら、それは考え直せばいい」となる。だがILCは数千億円規模。もしかすると、それだけでは済まない可能性があるから、途中で「あれ?」となってはいけない。これは重要なポイントだ。
 私は繰り返し推進派に聞いた。「技術的な難しさを一番よくご存じなのはあなた方でしょう? だから、今までの検討の中でどこが難しくて、どこにトラブルが発生する可能性があると思っているのか。それに対してプランBなりプランCといったものを考えているのであれば教えてください」と。しかし返事は返ってこなかった。
 つまるところ、推進派研究者は私たちにも、候補地の方々にも、すべてうまくいく場合の話しかしていない。そこが非常に心配なところだ。
 ある推進派研究者は「事業を走らせながら議論し、課題を解消する。海外では当たり前の方法だ。いつでもやめられるやり方だ」と言っているようだ。しかし、いったん計画が始まってからそのような決断を下すことは大変難しい。ITER(国際熱核融合実験炉)計画も遅れに遅れ、大幅なコストオーバーラン(経費が想定以上に膨れ上がること)を起こしている。何とか施設が完成し計画通りに実験を終えることができればまだましだが、途中で空中分解するのを私は一番恐れている。それまでにつぎ込んだお金が一体何だったのかという話になる。
 実際、似たようなことが米国の「SSC」計画(※2)で起きた。テキサス州に超大型円形粒子加速器を造るプロジェクトで、地元もかなりお金を出した。ところが資金が続かなくなったし、ほかにもいろいろな問題が起こった。地下トンネルの掘削はある程度進められたが、結局、クリントン大統領にかわってから頓挫した。罪作りな話だ。
 推進派研究者は、SSCの教訓を全然学んでない。「進めながら途中で駄目になったらやめる」となったら、どう落とし前を付けるのか。建設地の地元自治体がインフラ整備に着手していたら、たまったもんじゃない。
 こういうことが起きないよう、ビッグプロジェクトをやるときは、あらゆる可能性を考えるべきだ。それでも「想定外」というものは起き得る。予定通りいかなかった場合の別プランをしっかり用意しているかどうかは、ILCのような長期プロジェクトを最後まで成し遂げる上で非常に大事。そういう意識が推進派には感じられない。最初に作ったTDRの完全改訂版を作るくらいの再検討をしてほしい。

中国だけではないILCのライバル 審議では示されず

――中国の円形加速器計画の進展を懸念し、ILC実現を急ぎたいとする声もある

 中国で提唱されている円形加速器は「CEPC」だが、このほかにもCERNでは「CLIC(コンパクト・リニアコライダー)」と、「FCC」という次世代の大型円形衝突型加速器も検討されている。ライバルは中国だけではない。
 これらの計画を見てみると、私は別目的に効率よくグレードアップできるという面から、FCCは筋がいいと思っている。ILCも「加速器の長さを伸ばせばいい」と言われているが、そんな簡単な話ではない。長さに比例するだけお金がかかる。
 ILCではビーム衝突は1回ごとの事象で、衝突しなかった粒子はその都度ビームダンプに捨てられる。
 これに対しFCCのような円形加速器は、衝突できなくても何回か加速器を周回しているうちに、衝突のチャンスが訪れる。「ルミノシティ」と呼ばれる衝突頻度を稼ぐ上では直線よりも円形の方が有利だ。
 すでにFCCの概念設計が公表されている。そこに述べられている数値を信用すればの話だが、全長20キロのILCで15年かけて集積するデータが、3年程度で得られるという。つまり、たとえFCCがILCの後に完成したとしても、FCCの方が先に目標を達成する可能性もある。さらにFCCは粒子の種類を替えて実験でき、一層高い衝突エネルギーの領域での研究ができる。もちろんお金はかかる話だが。
 学術会議検討委のヒアリングで、推進派からFCC計画の話は一度も語られなかった。中国のCEPCに関しては、こちらから質問したので、回答してはくれたが……。聞かれなかったら言わなかったのかもしれないが、素粒子の研究者がFCC計画を知らないはずはない。

「やりません」見解「関心表明」と認識 いいとこ取り解釈?

――2018年12月に文科省へ回答を提出。それを受け翌年3月にILC関連の国際会議の場で文科省が政府見解を示したが、「肯定的」なものなのか「否定的」なものなのか、正直判断に迷った。実際に審議に携わった立場として、あの回答や政府見解で本当に言いたかったことは何だったのか、率直に聞きたい

 まず、学術会議の回答は「今の計画に対しては、ゴーサインを出すのは推奨しない。支持できない」という内容だ。画期的な粒子の加速方式ができて、20キロが数キロになりコストも安くできるとかであれば別だが、20年前からある超電導加速器技術で、とにかく加速器の台数を並べて無理やりやる方式は支持できないということだ。
 政府見解は、われわれの回答に即した中身だったと思う。各方面、しかも国際会議の場で話すことなので、気を使った点はあるだろう。
 「引き続き検討を続ける」というニュアンスの文言は、日本のお役所では「やりません」と言っているのに等しい。日本通の海外の物理雑誌記者は「これは、日本のお役所用語では『ノー』と言っているんだ」と、わざわざ注釈まで付けてはっきり書いていた。
 ところが推進派はそう解釈せず「関心表明だ」と受け止めた。彼らのフィルターにかけて都合のいい所だけを取り出している。残念なことに、候補地の方々に届いている情報は、推進派のフィルターを通したものが中心になっているようだ。

「かなりおかしい」 進め方、考え方不信感ぬぐえず

――候補地の地域社会などに伝わっている情報は、審議を尽くしてきた側には本意ではない情報、ということか

 ILC実現には多くの難しい課題があるという、一番大事な部分が伝わっていないと感じている。
 私は「物理屋」の一員であり、素粒子物理学や高エネルギー分野に対しては、非常に尊敬の念を抱いているし憧れの分野だ。ただ、今のやり方は科学者として「かなりおかしい」と思っている。
 2012(平成24)年、日本の素粒子コミュニティーは海外に対してILCの日本誘致意思を表明している。本来ならその段階、またはそれ以前の段階で、国内の周辺学術分野にちゃんと話をして支持を得るべきだった。
 それを怠って海外にバーッとやったもんだから、引くに引けない状況になっている。肝心の学術コミュニティーには説明不足であるのに対し、候補地の地元自治体や子ども、政治家に対する取り組みは一生懸命だ。
 回答をまとめる最終段階のとき、推進派の方から「国際的な立場もあるから何とかなりませんか」とお願いされた。ショックだったのは「あまり重箱の隅をつつくようなことはやらないでくれ」と言われた時だった。われわれの審議を「重箱の隅をつついている」と言うような認識だったら、それこそこのような巨大システムを無事に完成させる人たちではない。「素人は黙っとれ」という意識が推進派の中にあるのではないか。
 隣接分野、例えば原子核とかの人たちに現計画を見せたら、技術や人材の面にすごい突っ込みが来ると思う。それがいやだから、あまり話をしたくないのかもしれない。
 本来、建設的な批判を受けるのは、ポジティブなことであるはず。いろんな角度から見て初めて気づくことがある。ちゃんと答えられなかったら、今までの考えがまだ足りなかったわけだし、指摘してくれた人と一緒に課題解決していくやり方だってある。
 彼らとしては、学術会議は「学術的意義がある」とさえ言えば十分で、あとは政治家を動かして金を引っ張ってくる。言われた課題はおいおい解消していく。そういう筋書きだったのではと思う。
 なので、われわれがかなり一生懸命審議してまとめたつもりの回答や、それを受けての政府見解に対しても「科学的意義が認められた」という点しか引用しない。
 彼らは「ゴーサインが出たらちゃんとやる」。われわれは「ちゃんとやっていないから政府ゴーサインを出すのは早すぎる」。どっちが先かという話。
 ILCは、壮大な国際プロジェクトだから、学術会議に審議依頼が来たと思う。それゆえ、広い学術コミュニティーに説明して、疑問点をちゃんとクリアすべきだ。「ゴーサインが出たらやります」という言い方に終始していては、話が進まない。

重要な広報普及 正しいやり方か 求められる謙虚さ

――誘致運動の中では「地域のため」「子どもたちの未来のため」というキャッチフレーズをよく耳にする

 地域や子どもたちのためだからと、いろいろな広報物やPRグッズなどがどんどん作られ、配布されているようだ。著名人や学術界以外の文化人とのコラボもある。その中には「科学者として恥ずかしくないのか」と思えるようなPR活動も散見される。
 「経済波及効果が期待されます」「1万人都市の形成につながります」のように、歯が浮くような中身を一般の方々に伝えていることにも、やはり科学者としていかがなものかと感じる。
 国民理解、地元理解の重要性は学術会議や文科省有識者会議でもずっと強調されてきたことであり、私も広報普及は非常に大事なことだと思っている。
 ただし、正確な情報を伝えることが肝要だ。分かりやすくするため、多少の簡略化は許されるかもしれないが、例えば「この装置は何でも使えます」とか「宇宙の始まりが分かります」など、あまりにも飛躍したキャッチフレーズは好ましくないだろう。
 ILCに限らず、量子コンピューターやAI(人工知能)などの分野でも、事業化したい人や研究費が欲しい人からは、「よく言うよ」という誇大宣伝みたいなのを耳にする。まるで明日にでもすごいことができるような言い方をしているが、目標とする成果を得るまでにどういう課題があるか、しっかり伝えないといけない。
 誇大宣伝と指摘されそうな取り組みを、日本の科学技術政策があおってきた背景もある。競争的な資金の取り合いになり、多少の誇大宣伝があっても「俺はすごいことをやるんだ」とでも言わないと、研究費が取れないような雰囲気があった。とはいえ、やっていることの意味を謙虚に述べるのが、科学者としてあるべき姿だと思う。

多様な意見聞く場 候補地で実施必要 中立な議論の場を

――推進派の見解を聞く場面はこれまでもたくさんあった。一方で学術会議や文科省有識者会議で審議に携わった人たちが、候補地を訪れオープンな形で直接説明するような機会は、これまで一度もなかった

 地元で何らかの会合があり、呼ばれれば行くかもしれないが、なかなか推進派の会合に、批判的な立場の人が呼ばれることはないだろう。もし呼ばれた場合でも「どこまでネガティブなことを、はっきり言えるかどうか」と、いろいろと考えてしまう。
 一番いいのは公的機関である学術会議や、科学などに関連する学会の主催で、フォーラムを候補地で開催するスタイルがいいのかもしれない。先日、金沢工業大で開かれた科学技術社会論学会で、ILC誘致活動に関する発表があったようだが、このような学会は中立的な議論の場として最適かもしれない。
 地方がどんどん衰退している中にあって、住民の方々や行政などが将来への「夢」を思い描くことはもちろん大切だと思う。その上で、その夢が本当に地域のため、次世代を担う子どもたちのためになるものなのか、一度立ち止まって考えてみてはどうか。より多様な方の声を聞き、判断していただけたらと思う。
 候補地周辺の小中学校や高校では、ILCに関連した授業をしているようだ。科学の魅力を教えるのは大変結構だけれども、くれぐれもILC計画の実現のためではなく、本当に純粋な意味で「子どもたちのため」に教え、知的好奇心を刺激していただけたらと願っている。そうでなければ、ILC誘致のために「子どもをだしに使っている」と言われても仕方ない。

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家 泰弘(いえ・やすひろ)
1951年、京都府生まれ。1979年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了後、同大物性研究所助手。米国ベル研究所研究員、IBMワトソン研究所客員研究員などを経て、2008年東大物性研究所長。この間、日本学術会議副会長、日本物理学会会長なども歴任した。2015年に東大を早期退職し、同年から独立行政法人日本学術振興会理事。2年後に日本で開催する「国際物理オリンピック」の実行委員長も務める。国立天文台名誉教授で次世代超大型望遠鏡(TMT)計画に携わっている家正則氏は実兄。千葉県柏市在住、68歳。

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※1…ILCにおいて、加速器を含めた全長約30キロ規模の施設で得られる衝突エネルギーを「500GeV(ジェブ)」、同20キロの規模では「250GeV」という専門的な数値と単位によって表現する。
 「eV(イーブイ)」は「電子ボルト」という物理学の単位で、「1個の電子が1ボルトの電圧で加速されたときに与えられるエネルギー」という意味。「G(ギガ)」は「10億」という意味で、桁数の大きな数字を簡略化して表すのに用いる接頭辞の一つ。500Gは500の10億倍。「GeV」を「ギガ・イーブイ」ではなく「ジェブ」と発音するのが習慣化されている。
 インタビューで家氏も「500GeV」「250GeV」と話していたが、この記事では施設全長のほうが一般的に認識しやすいと判断し、30キロ、20キロと表記する。

※2…SSC(超電導超大型衝突型加速器)計画とは1980年代から1990年台初頭にかけ、米国テキサス州ダラス南部のワクサハチーで進められた素粒子実験施設のプロジェクト。全長87キロの円形加速器を地下に設置し、陽子ビームを衝突させる実験が計画され、当時はヒッグス粒子発見の期待も高まった。
 しかし、1993年に両院協議会で中止が決定。中止に至った理由は▽グリーン・サイト(まっさらな土地)を選んだ▽研究所経営や所長人選などにおける数々のミス▽加速器の設計変更――などが要因となり、大幅なコスト増や人材確保が思うように進まない事態を引き起こしたとされる。中止時点で主トンネルの掘削は全体の27%に当たる23.7キロまで進んでいた。
 SSCの失敗は、大型科学施設計画を検討する上での「教訓」と位置付ける研究者は少なくない。米国の物理学者スタンリー・ウォシッキー氏はSSCに関するリポートで▽新研究所をグリーン・サイトに建設するのは想像以上に難しく、既存研究所の枠内で進めることが格段に望ましい▽コストやスケジュール、社会利益などに関しての過剰な楽観視は大変な害となる▽プロジェクトの反対者に対して、たとえそれが事実から程遠い攻撃でも迅速に対処できる準備が必要――などと指摘している。

 写真はILC誘致推進の説明会(2018年9月24日、一関市)。
 ILC計画自体が多くの難しい課題を抱えているのに、経済効果等を一面的に突き出すプロパガンダに、「かなりおかしいなあ」と感じながら参加しました。
180924 ILCの説明会(一関市).JPG

誘致を表明せず、「正式な学術プロセスで議論することが必要」−文部科学省が国際リニアコライダー(ILC)についての見解を表明。今回の強引な誘致は失敗し、いったん終わりを迎えました。[2019年03月08日(Fri)]
 文部科学省の磯谷桂介研究振興局長が3月7日、東京大学で開かれた素粒子物理学の国際会議で、次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」に関する見解を発表しました。
 強引なILC誘致活動は失敗し、いったん終わりを迎えました。認めたがらない人たちがいるかもしれませんが。
 ILCの誘致を考えている人たちには、素粒子研究の意義とその中でILCの役割と実現可能性を再度よく議論して学術関係者の合意をめざすこと、社会や環境への負荷も明らかにして、「持続可能な世界」をめざす立場でコミュニケーションに臨んでほしいと願っています。基礎研究を重要だと考えるからです。
 今回のILC誘致に関わる論議の経過を振り返ると、ジャーナリズムと各地の地方議会が「良き批判者」としての役割を果たせなかったのではないかと思われてなりません。日本学術会議が2010年4月10日に公表した提言「日本の展望―学術からの提言2010」
を読み返しての感想です。
 文部科学省の「見解」の全文は以下の通りです。

 本日のリニアコライダー国際推進委員会開催にあたり、本レターを送付できることは大変光栄です。
 国際リニアコライダー(ILC)計画は、国際的な研究者組織において検討が進められてきた素粒子物理学分野における学術の大型プロジェクトであると承知しています。
 これまで我が国においては、ILC計画について、我が国の科学コミュニティの代表機関である日本学術会議における「国際リニアコライダー計画に関する所見(2013年9月)」を契機として、文部科学省において「国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議」を設置し、科学的意義、コスト及び技術的成立性、人材の確保・育成方策、体制及びマネジメントの在り方等の観点から、検証を進めてきました。
 2017年11月には、ILCに関する国際的な研究者組織において、欧州CERNにおけるLHC実験を踏まえて、ILCの衝突エネルギーを500ギガ電子ボルトから250ギガ電子ボルトとする見直し案(250ギガ電子ボルトILC計画)が公表されました。
 これを受けて、有識者会議においてILC計画について改めて検証を行い、2018年7月に「ILC計画の見直しを受けたこれまでの議論のまとめ」を取りまとめ、計画の全体像を可能な限り明確に示した上で、日本学術会議に対して、ILC計画について改めて審議を依頼しました。
 2018年12月には、日本学術会議より文部科学省への回答として「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」が取りまとめられ、「政府における、ILCの日本誘致の意思表明に関する判断は慎重になされるべきであると考える」とされました。
 文部科学省においては、同所見の内容を精査しつつ、ILCに関する意義や効果について、学術的な観点のみならず、関係省庁とも連絡を密にして意見を聴取し、検討を行いました

 ここに現時点のILC計画に関する見解を述べます。

 国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議による「ILC計画の見直しを受けたこれまでの議論のまとめ」を受け、日本学術会議が審議を行い公表した「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」において、「現状で提示されている計画内容や準備状況から判断して、250ギガ電子ボルトILC計画を日本に誘致することを日本学術会議として支持するには至らない」「大型計画について学術会議として更に検討するとすれば、マスタープランの枠組みで行うのが適切」とされたことを踏まえ、ILC計画については、現時点で日本誘致の表明には至らないが、国内の科学コミュニティの理解・支持を得られるかどうかも含め、正式な学術プロセス(日本学術会議が策定するマスタープラン等)で議論することが必要であると考えます。
 併せて、国外においても、欧州素粒子物理戦略等における議論の進捗(しんちょく)を注視することとします。
 また、ILC計画については、日本学術会議の所見において、諸分野の学術コミュニティとの対話の不足、成果が経費に見合うか、技術的課題の克服、実験施設の巨大化を前提とする研究スタイルの持続性といった懸念が指摘されている一方、素粒子物理学におけるヒッグス粒子の精密測定の重要性に関する一定の学術的意義を有するとともに、ILC計画がもたらす技術的研究の推進や立地地域への効果の可能性に鑑み、文部科学省はILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続します。

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未知の素粒子を探すCERNの大型加速器計画が報じられたあと、岩手県議会が「ILC実現を求める意見書」[2019年02月22日(Fri)]
 欧州原子核研究機構(CERN)が、未知の素粒子を探す新たな加速器Future Circlar Colider(FCC)の概念設計報告書を発表しました。FCCの総延長は100km(いま最大のLHCは総延長は27kmで、その4倍)、衝突エネルギーはLHCの6倍、建設にかかる費用は240億ドル(約2兆6140億円)と、どれも驚く大きさです。
●1月18日付のニュースはこちら右矢印1Engadget(エンガジェット)



 岩手県議会が2月13日、「国際リニアコライダー(ILC)の実現を求める意見書」を採択しました。「出席議員全員の賛成で」と報道されましたが、日本共産党の3人の議員は採決に加わらず、棄権しました。決議文は以下のとおりですが、日本学術会議の所見を捉え方については異論があるところです。

 国際リニアコライダー(ILC)の実現を求める意見書

 我が国の成長戦略に貢献し、世界に開かれた地方創生の原動力となる国際リニアコライダー(ILC)の実現のため、速やかに我が国が主導して国際協議を開始し、投資と人材の国際分担に対する基本的考え方を明示するとともに、我が国の科学技術の進展等の柱に位置付けるよう強く要望する。

理由
 ILCは、宇宙誕生や質量の起源など、人類存在の核心に迫る謎を究明する研究施設であり、日本が世界に、そして人類に対して大きく貢献することのできる施設である。
 また、基礎科学の研究に飛躍的な発展をもたらし、世界最先端の研究を行う多くの人材が定着・交流する国際科学技術イノベーション拠点の形成や、精密実験を支える先端産業の集積につながるものであり、科学技術創造立国の実現や高度な技術力に基づくものづくり産業の成長発展に大きく寄与し、日本再興や地方創生にも資するものである。
 昨年末には、日本学術会議によるILC計画の見直し案に関する回答が文部科学省に提出されたところであるが、国際経費分担や人的資源の見通し等に対する懸念が示されたものの、学術的意義は極めて重要であり国際共同研究に日本が貢献する必要性も高いとの所見が示されているところである。
 日本におけるILCの実現については、世界の研究者からの期待も非常に高く、また、国内においても、研究者・自治体・民間団体等が誘致に向けて一体となって 取り組んできたところであり、地方議会におけるILCの実現を求める決議の採択や、各界著名人によるILC100人委員会の活動に加え、応援の署名等も30万人を超 えるなど、国民的な関心も非常に高まってきている状況である。
 よって、国においては、我が国の成長戦略に貢献し、世界に開かれた地方創生の原動力となるILCの実現のため、次の措置を講ずるよう強く要望する。

1、ILCの実現に向けて、速やかに我が国が主導し、国際協議を開始するとともに、海外パートナー国との投資と人材の国際分担に対する基本的考え方を明示すること。

2、ILCについては、我が国の科学技術の進展、さらに国内の各地方をつなぐ産業・情報・技術のネットワークの形成、震災復興、民間の活力を伸ばす成長戦略、地方創生等の柱に位置付けること。

上記のとおり地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。

平成31年2月13日
岩手県議会議長 佐々木 順 一

衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
文部科学大臣
経済産業大臣
国土交通大臣
内閣官房長官
復興大臣
内閣府特命担当大 臣(科学技術政策、地方創生)

国際リニアコライダー誘致、推進してきた研究者が「3月7日の世界の加速器研究所長の会合で『日本が誘致する』と言えないことははっきりしています」と発言。 [2019年02月02日(Sat)]
 元村有希子のサイエンスカフェ「巨大科学とどう向き合う? 岐路に立つILC」が1月28日、毎日メディアカフェで開催されました。
 元村有希子・毎日新聞科学環境部長が科学の専門家に聞く人気シリーズです。この日のゲストは東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了・特任教授で、国際リニアコライダー(ILC)」建設計画を進める研究者の一人です。
 ILCについて、日本学術会議は12月、「誘致を支持するには至らない」との見解をまとめました。ILC誘致を推進している勢力は、「3月7日に日本で開催される世界の加速器研究所長の会合までに、日本政府が誘致を表明すれば間に合う」という趣旨の発言をしてきましたが、山下了氏は「日本が誘致すると言えないことははっきりしています」と、断言しました。非常に興味深い発言です。
柴山昌彦・文部科学大臣が、定例記者会見で国際リニアコライダー(ILC)に言及。「日本学術会議の所見を尊重。今後もマスタープランへの位置づけ、科学コミュニティの理解と支持が必要」と。歪んだ誘致活動のツケが露わになりつつあります。[2019年02月01日(Fri)]
 柴山昌彦・文部科学大臣の記者会見(平成31年1月25日)の動画と記録が公表されました。
 http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1413052.htm

 国際リニアコライダー(ILC)誘致問題に言及しています。
 柴山大臣は、「誘致を支持できない」とした日本学術会議の所見を尊重した対応を表明しました。今後についても、大型研究に関するマスタープランに位置づけて議論されるべきだとし、科学コミュニティの理解と支持を得ることが必要だと述べました。
 素粒子研究におけるILCの意義と誘致に関わる情報の全体を公表して住民合意をめざすのではなく、経済効果などを過大に宣伝する一方で地元負担や環境問題等を隠して進められた歪んだ誘致活動のツケが露わになりつつあります。ILCを推進・誘致するのであれば、日本学術会議が「所見」で示した様々な問題点をしっかりとクリアする必要があることがハッキリしました。
 誘致の動きの、不可解な経過は解明が必要です。
 そして、内発的発展をめざすという、本来の地域振策を正面から議論する必要があるのではないでしょうか。
 記者との一問一答は、以下のとおりです。

記者)
 別件で国際リニアコライダーに伺いたいんですけれども、先日、都内でまた誘致を求める会合がございましたが、政府としての検討状況について改めてお聞きしたいのと、あともう1点、学術会議、昨年の答申で支持するに至らないとしたのは、他の学術分野との対応不足なども上げておりましたが、大臣として改めて受け止めを教えていただければと思います。

大臣)
 昨年12月に受領した日本学術会議の所見において、「政府におけるリニアコライダーの日本誘致の意思表明に関する判断は慎重になされるべき」とされたということは承知をしております。そのため、文部科学省において、所見の内容を精査するとともに、関係省庁と連絡を密にして、各行政分野におけるリニアコライダー計画に対する考え方を聴取し、そしてしっかりと総合的な検討を進めていきたいと考えております。日本学術会議の所見はですね、素粒子物理学分野における一定の科学的意義は認めつつ、国際経費分担等の見直し、あるいは技術的・経済的波及効果等への懸念が示されているということでありまして、リニアコライダー計画を含めた我が国の学術の大型プロジェクトは、その正式なプロセスとして、日本学術会議において策定されるマスタープランをもとに、文部科学省の審議会において優先度を明らかにするロードマップへの位置付けが必要となります。日本学術会議の所見においても、「大型計画について学術会議として更に検討するとすれば、マスタープランの枠組みで行うのが適切」とされていることからですね、このリニアコライダー計画については、まずは日本学術会議のマスタープランにおいて、先ほど紹介させていただいた所見で示された課題への対応を含め、引き続き議論がなされ、国内の科学コミュニティの理解や支持が得られることが必要ではないかと考えております。そのような観点から文部科学省においては、先ほどお話しをさせていただいたとおり、関係省庁と連絡を密にして、各行政分野におけるリニアコライダー計画に対する考え方を聴取しつつ、慎重に検討を進めていきたいと考えるものであります。

記者)
 つまり、3月上旬というふうに研究者側は意向があるわけですけれども、大臣としては特別扱いというよりは、学術会議のいわゆる通常的なプロセスに乗っ取った検討の方が望ましいというようなお考えをお持ちなんでしょうか。

大臣)
 今御紹介をいただいたように昨年12月に国際研究者組織において、今年3月上旬までに日本政府が見解を示すことを求めるという意向が表明されたことは承知をしております。ただ、今申し上げたような筋論も含め、そういった国際的な動向や要請も注視をしつつ、日本学術会議の所見の内容をよく精査した上で、関係省庁と連絡を密にしつつ、プロセス的にですね、政府として対応を進めていくということではないかと考えております。

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