前代未聞―議会に説明した上告理由を定例記者会見で変更 大川小学校裁判で宮城県の村井嘉浩知事[2018年05月17日(Thu)]
5月14日の定例記者会見で宮城県の村井嘉浩知事が、大川小学校裁判で仙台高裁判決(4月26日)を不服として上告した理由について、宮城県議会全員協議会(5月9日)とは異なる説明をしました。私は寡聞にして、このような事例を耳にしたことがありません。
浮かび上がっているのは、村井知事が仙台高裁の判決を誤読していたのではないかという疑問です。
控訴審判決は、2004年に想定された宮城県沖地震(連動型)で生じる津波を予見していれば、大川小学校は東日本大震災でも大惨事を免れることができたとし、仙台高裁は学校管理者と石巻市教委の組織的過失を認定しました。
ところが、仙台高裁が予見可能性を吟味したのは宮城県沖地震だったのに、石巻市の亀山紘市長が「東日本大震災は予見できなかった」という発言を繰り返し、「河北新報」が判決を誤読しているのではないかと指摘しました。5月8日の臨時石巻市議会で、日本共産党の水沢ふじえ議員がただしたところ、亀山市長は「(仙台高裁判決で論じられている)想定地震は、議員指摘のように、宮城県沖地震だった」と認め、それまでの発言を修正しました。石巻市教育長も、石巻市の主張は、東日本大震災の津波ではなく、「宮城県沖地震の津波は想定できなかった」ということにあると、上告理由について釈明しました。
ところが、宮城県議会の全員協議会はその翌日でしたが、今度は村井知事が「東日本大震災は予見できなかった」という発言を繰り返したのです。
定例記者会見で村井知事は、全員協議会の午前中の発言に「やや誤解を招くような内容」があったと認め、「午後の質問で訂正」したと釈明しました。では、午前の発言のうち、誤解を招く内容があったというのはどの部分なのか、それを午後にどのように訂正したというのでしょうか。定例記者会見では、全員協議会の発言のうち、どこの部分を、どのように訂正したのでしょうか。判決の誤読はあったのか、なかったのか。
これは質問しなければなりませんね。
全員協議会が5月9日11時から開会する前、総務部財政課が9時30分から日本共産党宮城県会議員団に上告する理由を説明しました。その際に、私は「上告は、その理由が重要だ。議会に対する説明は、最高裁に提出する上告理由書の中心点になるものだと思うが、間違いないか」とただしました。「そうです」という回答でした。
議会に対する上告理由の説明を、後になって変更するということは、上告するとした判断と理由が正しかったかどうかに関わるものではないでしょうか。
宮城県のホームページにアップされた村井知事の定例会見のうち、該当する部分を以下に紹介します。
写真は、全員協議会での質疑の模様で、質疑者は日本共産党の遠藤いく子議員です。
<資料>宮城県知事記者会見(平成30年5月14日)
大川小学校の最高裁上告について
◆Q (5月9日に)県議会全員協議会があり、大川小学校の上告の説明があったが、今回議会の中では、知事の方から、東日本大震災については当時の観点からは予見できなかったので、今回の判決は無理があるという説明であった。改めて今回の上告の理由を伺いたい。
■村井知事
控訴審判決の内容は、30年以内に99%来るであろうマグニチュード8.0を超える宮城県沖地震としておりましたけれども、このマグニチュード8.0の地震、津波の対策を十分やっていれば、バットの森を第三次避難場所に指定していたであろうし、そうなりますと、こういった大きな被害は出なかっただろうということでございまして、事前防災の準備が不備であったということでした。いろいろ県としてもどうすればいいのか随分悩みましたけれども、学校設置者である石巻市の考えをまずは尊重しなければならないということ、また地裁と高裁で全く判決内容が分かれたといったようなことで、これを今後の事前防災の全国の判例としていいのかどうかということを、私自身が判断することが自分の力ではできないと考えまして、石巻市と足並みをそろえて上告するということにしたわけでございます。まずは、上告の申立書を提出したということでございます。
◆Q 今の説明の中で、マグニチュード8.0を予測して十分やっていればということで判決があったというふうに、知事も認識したと伺ったが、十分やっていなかったということは認めるのか。
■村井知事
私どもは1審で認められましたとおり、8.0に対する対応は十分していたのではないかと考えてございます。しかし、2審判決で厳しい判決が出たということ、これも事実でございますので、その点についてはどちらが正しいのかということを現時点においては判断しかねる、分からないというのが正直な気持ちでございます。
◆Q 先日の全員協議会の中では、知事はそういう説明ではなく、今回は8.0を想定したものが、結局そのときの知見を超えるものが起きたと。これは、全て東日本大震災は今から考えても予見できなかったということを中心に説明しており、宮城県沖地震の8.0を十分やっていたということを言っていなかった。県議会に対する説明と今の説明と違うが、何か変わったのか。
■村井知事
(県議会の)午後の質問に対する答弁で、そのように訂正させていただきました。そのような意味で伝えたつもりでしたけれども、確かそれは午前中の答弁ではなかったかと思います。午前中にはやや誤解を招くような内容でありましたので、午後の質問で訂正させていただいております。従って、今私が申し上げたのが私の気持ちだということでございます。
◆Q 今後に影響を与えるという点を伺うが、震災後宮城県においては防災主任を置いたり、副読本を作ったり、相当レベルの高い学校防災に取り組んでいると思う。そういう意味では、判決でレベルの高いものが必要だというふうになっていても、現状において宮城県に影響を与えるものは少ないのではないかと考えるが、知事はどのように考えるか。
■村井知事
防災主任を置いたり、あるいは副読本を作ったりというのは、当然重要でございますけれども、ハード面においては今後の大きな災害に備えてどこまでやるのかということ、もし今回の上告の結果次第では、それも改めて大きく見直す必要も出てくる可能性があると思います。従って、裁判結果が何ら影響しないということにはならないと思います。
◆Q 全国に与える影響とおっしゃっていたが、まず宮城県として東日本大震災の一番の被災地として、防災はしっかりやっています、学校防災に対してはしっかりやっています、今後ともこの判決以上のことをやっていきますというような政治的なメッセージも含めて、出すべきではないかと思うが、その辺が少し足りないような気もするがいかがか。
■村井知事
これは上告審(の結果)が出てから、改めて申し上げたいと思います。
◆Q あのときの教職員も含めて子どもたち、大人たちの命は、結果的に救える命だったというふうにお考えか。
■村井知事
事前防災については、少なくとも1審では瑕疵(かし)はないということでしたので、その点を考えますと、あの犠牲は、事前防災という観点から考えますと、回避することは難しかったということになろうと思います。一方、2審判決を踏まえれば、十分回避はできたということになろうかと思います。どちらが正しいのかということを私には判断できませんので、現時点において上告の結果が出る前に私からはっきり申し上げることは控えたいと思います。
浮かび上がっているのは、村井知事が仙台高裁の判決を誤読していたのではないかという疑問です。
控訴審判決は、2004年に想定された宮城県沖地震(連動型)で生じる津波を予見していれば、大川小学校は東日本大震災でも大惨事を免れることができたとし、仙台高裁は学校管理者と石巻市教委の組織的過失を認定しました。
ところが、仙台高裁が予見可能性を吟味したのは宮城県沖地震だったのに、石巻市の亀山紘市長が「東日本大震災は予見できなかった」という発言を繰り返し、「河北新報」が判決を誤読しているのではないかと指摘しました。5月8日の臨時石巻市議会で、日本共産党の水沢ふじえ議員がただしたところ、亀山市長は「(仙台高裁判決で論じられている)想定地震は、議員指摘のように、宮城県沖地震だった」と認め、それまでの発言を修正しました。石巻市教育長も、石巻市の主張は、東日本大震災の津波ではなく、「宮城県沖地震の津波は想定できなかった」ということにあると、上告理由について釈明しました。
ところが、宮城県議会の全員協議会はその翌日でしたが、今度は村井知事が「東日本大震災は予見できなかった」という発言を繰り返したのです。
定例記者会見で村井知事は、全員協議会の午前中の発言に「やや誤解を招くような内容」があったと認め、「午後の質問で訂正」したと釈明しました。では、午前の発言のうち、誤解を招く内容があったというのはどの部分なのか、それを午後にどのように訂正したというのでしょうか。定例記者会見では、全員協議会の発言のうち、どこの部分を、どのように訂正したのでしょうか。判決の誤読はあったのか、なかったのか。
これは質問しなければなりませんね。
全員協議会が5月9日11時から開会する前、総務部財政課が9時30分から日本共産党宮城県会議員団に上告する理由を説明しました。その際に、私は「上告は、その理由が重要だ。議会に対する説明は、最高裁に提出する上告理由書の中心点になるものだと思うが、間違いないか」とただしました。「そうです」という回答でした。
議会に対する上告理由の説明を、後になって変更するということは、上告するとした判断と理由が正しかったかどうかに関わるものではないでしょうか。
宮城県のホームページにアップされた村井知事の定例会見のうち、該当する部分を以下に紹介します。
写真は、全員協議会での質疑の模様で、質疑者は日本共産党の遠藤いく子議員です。
<資料>宮城県知事記者会見(平成30年5月14日)
大川小学校の最高裁上告について
◆Q (5月9日に)県議会全員協議会があり、大川小学校の上告の説明があったが、今回議会の中では、知事の方から、東日本大震災については当時の観点からは予見できなかったので、今回の判決は無理があるという説明であった。改めて今回の上告の理由を伺いたい。
■村井知事
控訴審判決の内容は、30年以内に99%来るであろうマグニチュード8.0を超える宮城県沖地震としておりましたけれども、このマグニチュード8.0の地震、津波の対策を十分やっていれば、バットの森を第三次避難場所に指定していたであろうし、そうなりますと、こういった大きな被害は出なかっただろうということでございまして、事前防災の準備が不備であったということでした。いろいろ県としてもどうすればいいのか随分悩みましたけれども、学校設置者である石巻市の考えをまずは尊重しなければならないということ、また地裁と高裁で全く判決内容が分かれたといったようなことで、これを今後の事前防災の全国の判例としていいのかどうかということを、私自身が判断することが自分の力ではできないと考えまして、石巻市と足並みをそろえて上告するということにしたわけでございます。まずは、上告の申立書を提出したということでございます。
◆Q 今の説明の中で、マグニチュード8.0を予測して十分やっていればということで判決があったというふうに、知事も認識したと伺ったが、十分やっていなかったということは認めるのか。
■村井知事
私どもは1審で認められましたとおり、8.0に対する対応は十分していたのではないかと考えてございます。しかし、2審判決で厳しい判決が出たということ、これも事実でございますので、その点についてはどちらが正しいのかということを現時点においては判断しかねる、分からないというのが正直な気持ちでございます。
◆Q 先日の全員協議会の中では、知事はそういう説明ではなく、今回は8.0を想定したものが、結局そのときの知見を超えるものが起きたと。これは、全て東日本大震災は今から考えても予見できなかったということを中心に説明しており、宮城県沖地震の8.0を十分やっていたということを言っていなかった。県議会に対する説明と今の説明と違うが、何か変わったのか。
■村井知事
(県議会の)午後の質問に対する答弁で、そのように訂正させていただきました。そのような意味で伝えたつもりでしたけれども、確かそれは午前中の答弁ではなかったかと思います。午前中にはやや誤解を招くような内容でありましたので、午後の質問で訂正させていただいております。従って、今私が申し上げたのが私の気持ちだということでございます。
◆Q 今後に影響を与えるという点を伺うが、震災後宮城県においては防災主任を置いたり、副読本を作ったり、相当レベルの高い学校防災に取り組んでいると思う。そういう意味では、判決でレベルの高いものが必要だというふうになっていても、現状において宮城県に影響を与えるものは少ないのではないかと考えるが、知事はどのように考えるか。
■村井知事
防災主任を置いたり、あるいは副読本を作ったりというのは、当然重要でございますけれども、ハード面においては今後の大きな災害に備えてどこまでやるのかということ、もし今回の上告の結果次第では、それも改めて大きく見直す必要も出てくる可能性があると思います。従って、裁判結果が何ら影響しないということにはならないと思います。
◆Q 全国に与える影響とおっしゃっていたが、まず宮城県として東日本大震災の一番の被災地として、防災はしっかりやっています、学校防災に対してはしっかりやっています、今後ともこの判決以上のことをやっていきますというような政治的なメッセージも含めて、出すべきではないかと思うが、その辺が少し足りないような気もするがいかがか。
■村井知事
これは上告審(の結果)が出てから、改めて申し上げたいと思います。
◆Q あのときの教職員も含めて子どもたち、大人たちの命は、結果的に救える命だったというふうにお考えか。
■村井知事
事前防災については、少なくとも1審では瑕疵(かし)はないということでしたので、その点を考えますと、あの犠牲は、事前防災という観点から考えますと、回避することは難しかったということになろうと思います。一方、2審判決を踏まえれば、十分回避はできたということになろうかと思います。どちらが正しいのかということを私には判断できませんので、現時点において上告の結果が出る前に私からはっきり申し上げることは控えたいと思います。
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