国に屈服しないで地方自治を貫けー宮城県の「個人情報の保護に関する法律施行条例(骨子案)」に、意見を提出しました。[2022年09月07日(Wed)]
「(仮称)個人情報の保護に関する法律施行条例(骨子案)」に関する意見
【1】個人情報保護委員会のガイドライン等は「技術的助言」(地方自治法第245条の4第1項)にすぎず、憲法で保障されている地方自治にもとづいて、宮城県は個人情報保護施策を後退させないように、自主性と自律性をもった取り組みをすべきです。
県は、現行の宮城県個人情報保護条例を廃止し、「(仮称)個人情報の保護に関する法律施行条例」を制定しようとして、施行条例の骨子案に対して県民の意見を募集しました。
これは、令和3年5月19日に、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が公布され、個人情報の保護に関する法律について、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度について、全国的な共通ルールを規定するとしたため、これに対応しようとしているものです。
国の個人情報保護委員会から、自治体に対し、「個人情報保護法の施行に係る関係条例の条文のイメージ」が示され、これまでの個人情報保護条例は廃止して、新たな条例の名称は「〇〇〇個人情報保護法施行条例」とすることが示されています。また、県の「骨子案について」は、「施行条例で定めることが認められないとされる事項」として9項目をあげていますが、これも個人情報保護委員会の「ガイドライン」等をそのまま受け入れて引用したものだと思われます。
しかし、地方分権一括法による地方自治法改定の際に、国の地方自治体に対する関与のあり方が議論されたことを想い起こしてほしいのですが、ガイドライン等は「技術的助言」にすぎないのではないでしょうか。
わが国では、自治体が国に先行して個人情報の保護に関する条例等を整備してきており、地方自治の力を発揮してきた象徴的な分野になっています。とくに宮城県の個人情報保護条例は、全国の自治体の中でも優れた内容をもつものだと評価されてきました。
憲法では、国と地方自治体は対等です。改正された個人情報保護法のもとでも、現時点における国の解釈に関わらず、これまでの個人情報保護条例の運用をふまえ、自主性と自律性をもって、宮城県の個人情報保護施策を後退させないための取り組みを行うべきだと考えるものです。
【2】宮城県個人情報保護審査会に、令和3年個人情報保護法改正に伴なう宮城県における個人情報保護制度などの見直しに向けての考え方について、諮問して意見を求めて下さい。
神奈川県、京都市、世田谷区など、全国各地の地方自治体は、それぞれの地方自治体が設置している個人情報保護審査会等に、「令和3年個人情報保護法改正に伴なう個人情報保護制度などの見直しに向けての考え方」について、諮問し、意見を求めています。これは、現行条例にもとづくものであり、法令にも抵触しません。
宮城県は個人情報保護条例を定め、同条例にもとづいて「宮城県個人情報保護審査会」 を設置してきました。同審査会は「個人情報保護制度の運営に関する重要事項に関する建議を行う権能を有する」とされています。
各地の地方自治体と同様に、これまでの宮城県個人情報保護条例の運用による成果を検証するとともに、改正された個人情報保護法のもとでも、宮城県の個人情報保護施策を後退させないために、専門的知見を有する同審査会の議論に付してその意見を求めることは、当然のことだと考えるものです。
【3】高度に発達した情報化社会にふさわしい自己情報コントロール権の確立をめざす立場に立ち、改正された個人情報保護法にもとづく個人情報の「利活用」により生じうる害悪を防止することに、十分な検討を加えてください。
地方自治体の条例をリセットして、個人情報保護法による全国共通ルール化を推し進めることは、自治の根幹である条例制定権を否定するもので、地方自治への介入です。
全国共通ルール化の最大の目的は、匿名加工情報制度(公開されたデータにすること)と情報連携(オンライン結合)を、自治体に行わせることです。個人情報保護を求める県民の願いは踏みにじられ、これまでの宮城県独自の取り組みを掘り崩すものでしかありません。
匿名加工制度の導入により、宮城県の管理リスクが増大し、職員にとって過重負担になる問題が引き起こされることが予想されます。匿名化の作業を外部委託することが可能ですが、膨大で詳細な個人情報を委託先に渡すことで、個人情報が漏洩することが十分に考えられます。現にNHKの委託先法人から、契約者の情報が詐欺グループに漏洩した事例があります。宮城県が保有している情報が漏洩すれば、宮城県は県民の信頼を大きく失うことになります。
オンライン結合の問題では、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」案を審議していた時に、LINE社において、利用者情報が中国の委託企業で閲覧できる状態であったことが発覚しました。
改正された個人情報保護法の実施により、生じることが合理的に予測される事態について、十分な検討を加えるべきです。個人情報ファイル簿の作成については、宮城県の判断で絞り込みを図ることが可能であり、条例の条文とその運用について、十分な検討を求めるものです。
改正された個人情報保護法に欠けているものは、個人情報を保護する観点です。プライバシーを守ることは、憲法が保障する基本的人権です。どんな自己情報が集められているかを知り、不当に使われることがないように関与する権利、自己情報コントロール権、情報の自己決定権を保障することこそ求められています。
これまでの個人情報保護条例が積み上げてきた知見と実績を大切にして、個人情報保護制度をよりよくするために地方自治の力を発揮すること、国に向かって憲法の精神で個人情報保護法の抜本改正を求めることを希望するものです。
以上
【1】個人情報保護委員会のガイドライン等は「技術的助言」(地方自治法第245条の4第1項)にすぎず、憲法で保障されている地方自治にもとづいて、宮城県は個人情報保護施策を後退させないように、自主性と自律性をもった取り組みをすべきです。
県は、現行の宮城県個人情報保護条例を廃止し、「(仮称)個人情報の保護に関する法律施行条例」を制定しようとして、施行条例の骨子案に対して県民の意見を募集しました。
これは、令和3年5月19日に、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が公布され、個人情報の保護に関する法律について、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度について、全国的な共通ルールを規定するとしたため、これに対応しようとしているものです。
国の個人情報保護委員会から、自治体に対し、「個人情報保護法の施行に係る関係条例の条文のイメージ」が示され、これまでの個人情報保護条例は廃止して、新たな条例の名称は「〇〇〇個人情報保護法施行条例」とすることが示されています。また、県の「骨子案について」は、「施行条例で定めることが認められないとされる事項」として9項目をあげていますが、これも個人情報保護委員会の「ガイドライン」等をそのまま受け入れて引用したものだと思われます。
しかし、地方分権一括法による地方自治法改定の際に、国の地方自治体に対する関与のあり方が議論されたことを想い起こしてほしいのですが、ガイドライン等は「技術的助言」にすぎないのではないでしょうか。
わが国では、自治体が国に先行して個人情報の保護に関する条例等を整備してきており、地方自治の力を発揮してきた象徴的な分野になっています。とくに宮城県の個人情報保護条例は、全国の自治体の中でも優れた内容をもつものだと評価されてきました。
憲法では、国と地方自治体は対等です。改正された個人情報保護法のもとでも、現時点における国の解釈に関わらず、これまでの個人情報保護条例の運用をふまえ、自主性と自律性をもって、宮城県の個人情報保護施策を後退させないための取り組みを行うべきだと考えるものです。
【2】宮城県個人情報保護審査会に、令和3年個人情報保護法改正に伴なう宮城県における個人情報保護制度などの見直しに向けての考え方について、諮問して意見を求めて下さい。
神奈川県、京都市、世田谷区など、全国各地の地方自治体は、それぞれの地方自治体が設置している個人情報保護審査会等に、「令和3年個人情報保護法改正に伴なう個人情報保護制度などの見直しに向けての考え方」について、諮問し、意見を求めています。これは、現行条例にもとづくものであり、法令にも抵触しません。
宮城県は個人情報保護条例を定め、同条例にもとづいて「宮城県個人情報保護審査会」 を設置してきました。同審査会は「個人情報保護制度の運営に関する重要事項に関する建議を行う権能を有する」とされています。
各地の地方自治体と同様に、これまでの宮城県個人情報保護条例の運用による成果を検証するとともに、改正された個人情報保護法のもとでも、宮城県の個人情報保護施策を後退させないために、専門的知見を有する同審査会の議論に付してその意見を求めることは、当然のことだと考えるものです。
【3】高度に発達した情報化社会にふさわしい自己情報コントロール権の確立をめざす立場に立ち、改正された個人情報保護法にもとづく個人情報の「利活用」により生じうる害悪を防止することに、十分な検討を加えてください。
地方自治体の条例をリセットして、個人情報保護法による全国共通ルール化を推し進めることは、自治の根幹である条例制定権を否定するもので、地方自治への介入です。
全国共通ルール化の最大の目的は、匿名加工情報制度(公開されたデータにすること)と情報連携(オンライン結合)を、自治体に行わせることです。個人情報保護を求める県民の願いは踏みにじられ、これまでの宮城県独自の取り組みを掘り崩すものでしかありません。
匿名加工制度の導入により、宮城県の管理リスクが増大し、職員にとって過重負担になる問題が引き起こされることが予想されます。匿名化の作業を外部委託することが可能ですが、膨大で詳細な個人情報を委託先に渡すことで、個人情報が漏洩することが十分に考えられます。現にNHKの委託先法人から、契約者の情報が詐欺グループに漏洩した事例があります。宮城県が保有している情報が漏洩すれば、宮城県は県民の信頼を大きく失うことになります。
オンライン結合の問題では、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」案を審議していた時に、LINE社において、利用者情報が中国の委託企業で閲覧できる状態であったことが発覚しました。
改正された個人情報保護法の実施により、生じることが合理的に予測される事態について、十分な検討を加えるべきです。個人情報ファイル簿の作成については、宮城県の判断で絞り込みを図ることが可能であり、条例の条文とその運用について、十分な検討を求めるものです。
改正された個人情報保護法に欠けているものは、個人情報を保護する観点です。プライバシーを守ることは、憲法が保障する基本的人権です。どんな自己情報が集められているかを知り、不当に使われることがないように関与する権利、自己情報コントロール権、情報の自己決定権を保障することこそ求められています。
これまでの個人情報保護条例が積み上げてきた知見と実績を大切にして、個人情報保護制度をよりよくするために地方自治の力を発揮すること、国に向かって憲法の精神で個人情報保護法の抜本改正を求めることを希望するものです。
以上