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◉「さくとさようなら」は、きょうだいを亡くし残された子どものために描かれた絵本です。
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現在、私は被害者支援都民センターにて、事件事故などの犯罪被害に遭われた方とそのご家族に対する支援活動を行っています。犯罪被害は、予期せぬ出来事であり、その理不尽な出来事に対する怒りと悲しみは甚大なものです。特にお子さんが犯罪被害に巻き込まれて命を落とされたとき、そのご両親は強い怒りと深い悲しみとそして自責感などに苦しみ、ご自身がなんとかその瞬間を生きることに精一杯になるかもしれません。そして、残された子どもたちに、これまでと同じように目を向けることが難しいときもあるでしょう。このような渦中で、きょうだいを亡くした子どもたちは、あたかも彼らの存在を忘れられてしまったかのように感じていることが少なくありません。そんな彼らと接する中で、「きょうだいを亡くして寂しさや罪悪感を抱えている子どもたちに、寄り添って読んであげられる絵本があるといいな」と思うようになりました。
ところが、いろいろと探してみたのですが、彼らの気持ちに寄り添うことができる絵本を見つけることができませんでした。つまり、彼らの存在は、世界から取り残されていたのです。
あるとき、臨床活動中に一冊の絵本に出会いました。それは、プルスアルハさんが制作した「ボクのせいかも...ーお母さんがうつ病になったのー」という絵本でした。ちあきさんのやさしいタッチの絵と北野陽子先生の丁寧な解説に、目が釘付けになり、その瞬間に「プルスアルハさんに、きょうだいを亡くした子どものための絵本を作ってもらいたい」と強く思ったのです。
強く願い、それを声に出すと、願いは叶うものですね。「絵本を作りたい」と思い始めてから2年後に、「さくとさようなら」が完成しました。
「さくとさようなら」には、犯罪被害だけに限らず、何らかの理由できょうだいを亡くしたすべての子どもたちに向けて、「忘れられたわけじゃないんだよ。あなたはとても大切な存在なんだよ」というメッセージが込められています。そして周囲の大人たちには、「悲しくてさみしい思いをしている子どもたちに、どんなふうに接すればいいのかという具体的なヒント」を、そして、お子さんを亡くされたご家族には「ほんの少し、前に進む勇気を持っていただけたら」という願いが込められています。
ちあきさんのやさしいタッチの絵が、少し切なくて、そして少しほっこりさせてくれますし、解説は経験豊富な北野先生にアドバイスを頂き、読みやすく仕上げました。
ご家族を亡くされた悲しみは、一生なくなることはないかもしれません。なかには、辛い気持ちを忘れてはいけないと思い込むこともあるかもしれません。ですが、今この瞬間の人生を楽しむことを禁じられたわけではありません。悲しみは悲しみとして心にとどめつつも、ご家族が、再び穏やかな時間を感じていただけることを願っています。
公益社団法人被害者支援都民センター 臨床心理士 新井陽子
「さくとさようなら」に関するお問い合わせは、support@shien.or.jp まで
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最初に構想をいただいたとき、'本当に大切で必要で、これまでになかった絵本'だと思いました。大変な中でがんばっておられるきょうだいさん、ご家族の方を少しでも応援できたらと思い、そして新井さん、センターのみなさんの専門性と熱量にふれて、ぜひ一緒に作りたいと制作を決めました。新井さん、センターのみなさん、ありがとうございました。この絵本が、きょうだいさんの存在に早めに気づき、ケアへとつながるきっかけになれば幸いです。
『さくとさようなら』2015年3月
公益社団法人被害者支援都民センター発行
プルスアルハ:制作協力[チアキ:イラストほか キタノ:編集協力]
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