コインランドリーへの道すがら、
街の様子を眺めて歩きました。
マスクを着けている子は半分もいたでしょうか。
一見したところ、何もかも普通のままです。
安達太良山がとてもきれいです。
北海道にはない、濃い緑が輝いています。
私は、どんなところへどんな理由で行っても、
できるだけ観光を.します。
不謹慎?
冗談じゃない。
そこへ行って、見て、食べ、土地の人と話してこそ、
その土地のことが少し分ってくるんじゃないですか。
だいたい、
人間は楽しみがないと、動き出さないものです。
今回の私の楽しみは、
二本松にある、「大七」という日本酒の酒蔵を訪問することです。
日本酒造りの基本中の基本、
手のかかる「生もと造り」をしている酒蔵です。
お世話になった真行寺の住所を確認していたら、
大七と番地のみ違う。
よもやと思って地図で確認したら、
なんと真裏じゃありませんか!!
こんなラッキーなことないです。
で、最終日行って来ました。
前日に、住職に同行してもらって挨拶をしておいて。
当日は他に見学者もなく、
マンツーマンで案内していただけました。
(マンツーマンというのはかえって、こそばゆいものですね)
まず、驚いたのはとても立派な社屋だと言うこと。
木造のもっと古めかしい建物かと思っていました。
中に入ると、受付が吹き抜けでとても天井が高く、
ちょっとしたコンサートができそう。
それをねらって設計したわけではないそうですが、
実際、福島へ来ていた有名なオペラ歌手が
「酒蔵でオペラを披露したい」と言ったら
相談を受けた人が大七に連れて行ったところ
「ここならできそう」と実際に上演したり、
バイオリンなどのミニコンサートも開かれたりしているそうです。
大七を紹介するビデオを見た後、
扁平精米など大七の特徴をうかがったあと、酒蔵内部の案内です。
扁平精米についてちょっとだけ紹介します。
精米は、雑味の元になるでんぷん質や油分を除くために行います。
通常は、米全体を削って行くのですが、
米はまん丸じゃなくてラグビーボールのような形をしていますよね。
それを縦長に置いたとして、
お腹や背中に当たる部分にでんぷんや油分が多く含まれています。
だから、丸く削るよりお腹や背中をより削るようにすればよい
というのが扁平精米の考え方です。
精米したお米の比較がありましたが、
確かに扁平精米の方がクリアです。
大七のお酒が、骨太なのにクリアなのは、
ここに理由があったのだなと思いました。
さて、蔵内部の見学ですが、
改修などの最中で、
麹室のある建物の入り口で終わったのは残念でした。
大七は、原発事故後すぐに外部からの空気の侵入を遮断し、
現在は倉庫等の入り口に強力なエアカーテンを設置するなどして、
放射能で汚染された空気の侵入を防いでいます。
現在も内部の数値は平常時とほとんど変わらないそうです。
また、水は安達太良山の水からの地下水を使っていますが、
すぐに水脈の流れが変わってしまわないように流れを確保する処置をし、
現在も同じ水脈を使っているそうです。
(地震後に温泉が出て来たとか、水が来なくなったとかいうところもあったそうです)
何にしてもここのすごいのは、
伝統(経験)と現在の科学の両方が
十二分に生かされているということだと思います。
さて、いよいよその成果の確認です。(笑)
まず酒器。
一般には、底に青いぐりぐりのついたぐい飲みを使いますが、
ここはグラスです。
その下に青いぐりぐりがモチーフされた磁器の台がセットされています。
おしゃれ。
奥のでかいグラスは、
ワイングラスで有名なオーストリアのリーデル社が
「日本酒大吟醸のグラスを作りたい」と
酒蔵12社と相談しながら作ったものだそうです。
さて、ラインナップ。
左側から順にいただきました。
左端はおなじみ、その隣も一回だけ呑んだことがあります。
衝撃だったのは、宝暦大七。(5本のうちの右から2番目)
冗談でなく今まで飲んだ日本酒の中で一番美味しいです。
本当に微かに香る木のような香り、
先に呑んだ3つにはありませんでした。
甑(こしき)など、使う道具は全て同じだそうです。
絞り方も含め、他より手がかかっているのは確かですから、
道具の匂いが酒に移り、それがそのまま生かされたのか、
酵母の活動から生まれてくるものなのか、
とにかく「気のせい?」と思うほどの香りで、
案内の方に「勘違いかもしれませんが...」と確認してしまいました。
勘違いではないとのことで、
自分の感覚もまだ大丈夫と安心しました。
いやあ、驚いた。
そのあと、お土産買う時に値段を聞いてまた驚いたけど。(笑)
(もちろん買えませんでした。苦笑)
最後にいただいた梅酒も美味しかったですよ。
二本松は人も酒も良いところです。