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ペルーアマゾン便り

南米ペルーのアマゾン地域でNPOアルコイリスが行っている国際協力事業を中心に報告するブログリポートです。対象地域はペルーの中央ジャングルにあるウカヤリ州で、主にアグロフォレストリーを中心とした、コミュニティトレードと伝統植物の活用促進を目的としています。
このブログではNPOアルコイリスの活動と自分が参加している日系社会、それからペルーの情報を記載しています。


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歩くヤシCashapona [2019年11月09日(Sat)]
ペルーでカシャポナと呼ばれているヤシの学名はSocratea exorrhizaで、中南米の熱帯ジャングルに自生しています。英語では「Walking Palm」とも呼ばれており、根は日の当たる方向へどんどん伸びて行き、日の当たらない方向は枯れて行きます。数年、数十年とゆっくりではありますが、場所を移動します。インターネットで検索した限りでは「日光探し説」は一番広がっている見たいですが、プカルパでは日光だけではなく、土壌の栄養成分にも反応して動くと言われています。カシャポナ以外に、ワクラポナ(学名:Iriartea deltoidea)も「歩くヤシ」と呼ばれていますが、Kizuna農園にまだないので、今回はカシャポナを中心に紹介します。

casha ponaIMG_0316.JPG
Kizuna農園で成長している
若いカシャポナです。

casha ponaIMG_6016.JPG
若いカシャポナの根です。
数本〜数十本の「支柱根」だけで
植物全体を支え、「幹」は浮いている様な
感じになります。

casha ponaIMG_6500.JPG
熟成すると高さ20メーター、
直径20cm近くまで成長します。
Kizuna農園には残念ながら
ここまで成長したカシャポナは
まだありません。

casha ponaIMG_6503.JPG
支柱根だけで高さ2メーター前後まで
成長し、実を守るために根全体に
トゲトゲがあります。


現地の人々と話をして行くうちに、カシャポナやワクラポナにはいくつかの利用用途があることが分かりました。一般的には幹は非常に硬いため、木材建築の材料(高床式住居の床や壁)、弓矢作り、笛やトランペットの様な楽器作りに使われています。金属性のおろし金が普及する前は熟成した根をバナナやキャッサバ芋を摩り下ろすために使われていたそうです。それから、先住民族の間では新根をIsula(イスラ)と呼ばれるアリ(サシハリアリ:本種に刺された時の痛みはあらゆるハチ・アリの中で最大であるとされている)に刺された痛みを和らげるために用いられているそうです。樹液には止血作用があるとされ、出血を伴う傷口に使われ、硬い種は狩用のパチンコ玉として使われています。

カシャポナの面白話としてマエストロLindolfiz氏が実際にジャングルで見た出来事を紹介します。「若い頃、原生林で木材関連の仕事をしているとき、小さな猪が凄い勢いでジャガー(学名:Panthera onca)から逃げている光景を見たことがある。あ〜ダメだ〜追いつかれると思った瞬間、猪はカシャポナの支柱根の間に入り込んだんだよ。猛スピードで追いかけていたジャガーは根のトゲにぶつかって胸や足から血を流しだした。数十分間どうにか猪を捕まえようとしたけど、最終的には断念して森に姿を消した。10分後ぐらいに猪はカシャポナの支柱根から出て、群れに帰っていた。僕はその間ずっと木の上から見ていたよ。危険だったから、ジャガーを姿を消してからもう30分近くじ〜っと様子を見て、落ち着いたのを確認してから降りたよ。ジャガーは木登りも得意だから、内心冷や冷やしていた」と笑いながら話してくれました。お陰様で歩くヤシは人間だけではなく、動物たちにとってもありがたい存在だと知ることが出来ました。

いくらジャングルが好きでも、個人的にはお腹を空かせたジャガーとは遭遇したくないですね。近くに成熟したカシャポナやワクラポナがあればまだましですが・・・がく〜(落胆した顔)ふらふら