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午年だが「ひつじ」[2026年01月31日(Sat)]

DSCN4094.JPG

◆稲のひこばえ。暖地では上手く育てればこれで二期作も可能というが、この辺りは無理だろう。穂を触ってみても中味は無い。
このひこばえを「ひつじ」と言うのだそうで、「穭」とか「稲孫」とか書くのだと、AIに教わった。知らなかった。


DSCN4092.JPG

遠方は、かつて横浜ドリームランドのホテルであった高層ビル。現在は横浜薬科大のシンボルである管理棟。
最上階は回転するレストランだが、今も夜はそこだけが煌々と明るい。




谷川俊太郎「enigma」[2026年01月30日(Fri)]


enigma    谷川俊太郎


宇宙のどこかで
死ぬ子ども
世界中が
それを知ってる

電子と化して
血も肉も
敵も味方も
無味無臭

涙の泉も
いつか涸れて
世界は永久の
残酷な
見えない
enigma


  『ひとりでこの世に』(新潮社、2025年)より


◆enigma(謎)という言葉、音楽ではエルガーの変奏曲や、シューマンの「謝肉祭」などを思い出すが、ここではどんな意味で使われているのだろうか。

人間の子どもであるならばこの地上で死すべき定めであると普通は考えるのだが、詩は「宇宙のどこかで/死ぬ子ども」とうたう。
死は宇宙大の意味を含んでいる、ということなのか。あるいは子どもというものはこの宇宙のどこかで生まれ、また宇宙に還ってゆく者であるのか。

「世界中が/それを知っている」――言い換えれば、「子どもが死ぬ」まで、世界はその存在を知らなかった、ということになりはしないか。
世界から認知されず黙殺された子ども――その死。

しかも、この「死」は、体温も匂いも伴わない電子的情報として伝えられる。
かくも「残酷な」死があろうか。




  


谷川俊太郎「死神」[2026年01月29日(Thu)]


死神   谷川俊太郎


戦車が一台止まっているのが二階の窓から見える
戦争は終わったのだろうか
周囲に人影はない
戦車の背後に青く山脈が霞んでいる
あっちは敵国だと教えられたことがある

その土地で使われている言語は
押韻の工夫によって悲劇を喜劇に変えてしまうと
学会では言われている
娘が一人何を思ったか戦車の上によじのぼった
若々しい声で演説を始めた

だんだん人が集まってきた
退屈だから見るのをやめて窓を閉めた
階下のラジオから何か聞こえる
「アジャラカモクレンテケレッツのパー」
柳家小三治の声だ

説明も解釈も不要な白昼の事実に
言語の夕闇が忍び寄る
口を噤むのは容易だが
内なる言語を沈黙に追いやることは
誰にも出来ないこの世


  『ひとりでこの世に』(新潮社、2025年)より  

  
第二連の「その土地で使われている言語は/押韻の工夫によって悲劇を喜劇に変えてしまうと/学会では言われている」言語が何か、というのは良く分からなかったのだが、そうした特色を持つ言語の使い手たちは、長い民族の歴史の中で、圧政や戦争の暴力にさらされても絶望せず生き抜く術を編み出しそれを後世に口伝えで受け渡してきた人たちだろうと想像することは出来る。
一人や二人の天才ではなく、凡百のふつうの人たちによって、その処世術とも生き抜く知恵とも言うべきものは、言葉によって鍛え上げられてきたのだろうと思う。

*試みにAIに訊いてみたら、それはナポリの言葉だろうと回答してきた。ほんとかどうか当たってみる必要が出て来た。


◆第三連、戦車の上で演説する娘と、そこに集まってくる人々、それを見物するのが「退屈だから見るのをやめて窓を閉めた」とは何とも天邪鬼で、こういうポーズは嫌いではない。
そうして、ここまでは外国の景に見えたのにいきなり「アジャラカモクレンテケレッツのパー」が小三治の声で聞こえて来る。落語『死神』を語っていたのだろう。この奇天烈な言葉は、死神を追い払う呪文だ。

◆さて「口を噤むのは容易だが/内なる言語を沈黙に追いやることは/誰にも出来ない」以上、どうするか――我々と言う必要はない――僕は?

天邪鬼を気取ることは止(や)めにして――とは日和見はせずに、だ――抗う? それとも闘う?(この二つは似ているがほんとは違う気がする)




  
谷川俊太郎(かどがあるから)[2026年01月28日(Wed)]


(かどがあるから)  谷川俊太郎


かどがあるからしかくはしかく
かどがないからまるはまる
「ある」がかたちをつくるなら
「ない」もかたちをつくってる

みえるからだがあるならば
みえ「ない」こころもちゃんと「ある」
みえるかたちのそのおくに
みえないかたちがかくれてる

てがうごく てはこころ
くちをつぐむ くちはこころ
からだがたわむ からだもこころ


   『ひとりでこの世に』
(新潮社、2025年)より  


◆「しかく」にしろ「まる」にしろ、線を引いてできる「かたち」だから、ほんとは本質を同じくするんだろう。

同様に、「からだ」と「こころ」も、〈みえる・みえない〉のちがいがあるだけで、ほんとは同じ、というか、在り方がちがっているだけで、おくの方でちゃんとつながっているんだろう。

◆だから「ひとりひとりが日本」(参政党の選挙用ポスターの標語)などと、ことさらに「日本(人)」と「そうでない人」を区別するのは変だし、まして選挙のスローガンにするのはオカシイ。
「そうでない人」を本音では「人」として扱わず、むしろその存在を否定していることばだからだろう。



谷川俊太郎(ひとつ)[2026年01月28日(Wed)]


(ひとつ)   谷川俊太郎


ひとつ
なんでもいいひとつ
それさえあればいきていける
それからすべてがはじまる
そんなひとつ
それがつかめれば
からだはみずのようにうごき
きもちはひのようにもえ
ことばはよみがえる
そんなひとつ
ひとつだけでいい
ひとつが
いい


  『ひとりでこの世に』(新潮社、2025年)より


◆生まれ落ちて以来、身につけるもの、脳の皺に刻み込むことば、いずれもひとつひとつ増やして行って年を重ねて来たのだろうけれど、いつかそれらの重みがうっとうしくなるのか、今度はひとつひとつそれらを心と身から引き剥がしたくなる――そんな生き方=死に方もあるのだろう。

一方で、そんなことは無理、と思ったりもしている。

――それは、初めて見る名前の作曲家のCDをついまた買ってしまった言い訳でもある。
エイヴィソンという18世紀イギリスの作曲家による合奏協奏曲集。聞いたことのある旋律が出て来て、あれっと思ったら、20世紀のピアノの巨匠ホロヴィッツが良く弾いていた、ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)のソナタだった。エイヴィソンという人はスカルラッティの鍵盤用ソナタを合奏協奏曲にしたらしい。)

音楽は、それがなくとも生きていけるものかも知れないが、こんな風に眠っていた記憶をあざやかによみがえらせて、悪くはなかったとからだじゅうに水をしみわたらせるものでもある。

「ひとつ」がまたひとつ、もうひとつ、とよみがえれば、それはまた新しいはじまりでもある。



谷川俊太郎(ほんとをおしえて)[2026年01月27日(Tue)]


(ほんとをおしえて)  谷川俊太郎


ほんとをおしえて ねえ
うそにはもうあきあき
うそならこどもだってしってる
でも ほんとはおとなしかしらない
どんなひどいことでも
つらいことでも
ほんとならがまんできる
でもうそはがまんできない
それともおとなはもう
うそでかたまっちゃってるの?
なにがほんとかもわからないの?

うそでしょ!



『ひとりでこの世に』(新潮社、2025年)より


◆選挙戦に突入した候補者たちに捧げたい詩だ。
与野党とも消費税廃止や税率低減を掲げるが、財源について目配りがあるのは一党だけだ。

それよりも選挙後にスパイ防止法や憲法改悪を狙っていることが見え見えで、それらについてきちんとノーを突きつけている政党もまた少ない。
現与党もその補完勢力も「うそでかたまっちゃってる」のだろう。
主権者としては、流されることも「がまん」することもしたくない。

ところで、雪で投票所に行けない人や、受験日などで選挙権を行使できない人がいた場合、選挙無効の申し立てをすることはできるだろうか?
居座り寒波に震えながら、そんなことが気になりだした。



切株たち[2026年01月25日(Sun)]

◆夏の間は気がつかなかったが、土手道の擁壁にオブジェ群があった。

DSCN0580.JPG


◆階段状に築かれた擁壁なので、落葉や土が溜まりやすい。草木が根を下ろすにはに悪くない環境ではある。それでも時々は伐られる運命にある。

残された切株がどっしりと存在感を放つ。
中には、そのまま美術館に展示しても良さそうな作品すらある


DSCN0585.JPG



次のものなど、キノコ類をちりばめて、なかなか凝った造形である。

DSCN0583.JPG

あらかた枝を落とされた後に、ひこばえを育て上げて、再び木として再生している。
春になったらどんな若葉を広げるだろう。

DSCN0582.JPG




親子関係修復:電話機の場合[2026年01月24日(Sat)]

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今日の夕映え(丹沢方向を望む)


◆固定電話の子機を水没させて往生した。液晶が全く白濁してしまった。ガラケーを初めて手にした時から水には注意!と言い聞かされて来たが、本当だった。
(電話をかけるのも受けるのもできそうなのに、画面が確認できないのでは、詐欺電話横行の時代にドアロックを一つ解錠してあるみたいで心細い。)

幸い、ネットで中古の子機を新規購入の1/3以下で入手できた。子機はもう一台あって、これは健常な状態。

ところが今度の子機、親機への増設設定ができない
取説を読み返しトライするが、親子のペアリングができないのだ。

◆ネットには、こうした事態へのアドバイスにもいくつかあったがどれも上手くいかない。二日間にわたって試行錯誤が続いた。

そもそも、取り寄せた子機の画面には「ケンガイ」などという初めて見る表示が出ていて、どうやっても消えない。親機が見つからない状態を意味するのだろうと想像するも、親機のすぐ横に居ても気づかない子機とは何という不孝不忠の子どもだ。

◆このファクシミリ付き電話を使い始めて13年余り、国会でトンデモ法案が上程されるたびに、与野党議員たちに要請文を送る、頼もしい助手である。電子メールの時代だってまだまだ出る幕はあるはずで、どの機能も大丈夫と思うのに、設定がうまくいかないだけで廃棄するのは無念でならない。
パソコンの「再起動による復旧」にならって親機本体の子機登録をリセットしてみた(これは取説に書いてあった)。
しかし今度は何と、健常だった子機まで認識されなくなってしまった
意地の悪い継子に翻弄されて実の親子が絶縁したようなものだ。

◆こんな事態になっても彼らを放りださないのはつくづく昭和の人間だと思う。働くようになって初めて自分名義の電話を持った身には、電話は苦手なものの筆頭である。同時にその恩恵も享受して来たので、あって当たり前のものではない。パソコンやスマホの時代に固定電話をやめる気になれないでいるのは、〈惰性+その存在意義を認める気持ち〉があるからに違いない。

◆この電話の取説には「再起動」という用語は出てこないのだが、ここまで来たからには徹底して最初に戻す以外に方法がない。あとは世間の知恵者を探すことだ。

アドバイスを求め改めてネットを探すと、複数のやり方を挙げているブログも見つかった。
また、何と、子機の取説が見つかった。手もとにはなかったものだ。紛失したのではなく、最初から付いていなかったのだろう。買った当初から子機2台が付いたタイプで、出荷時点で親子のペアリングは済んでいたはずだからだ。
そこに、子機からの親子登録リセットの方法が書いてあった。
それが突破口だった。

子機のボタンを、想像もしなかった手順で、〈○秒以上長押しし、画面が「ゾウセツシマスカ」などと表示されたら△秒以内に、これこれのボタンを押す……〉といった複雑な手順を踏むものではあった。
ともかくも……まず後継の子機が「(増設に)セイコウシマシタ」と表示され、親機が「ピー」と祝福の音を響かせた。
続いてもう一台、元々の子機――(手順を忘れぬうちにと心急く)――再び「セイコウシマシタ」&祝福の「ピー」。

◆電話機に限らず、親子関係が潰えるのはあっというまの出来事。そうして関係の修復は、実の子であれ、ママ子であれ、はなはだ困難。だが諦める必要はない。
もう一つ学んだこと、解決に至る道筋は、決して一つではない。常に複数のルート・やり方がある、ということ。
(むろん、人間の場合、リセットできるものとそうでないものとがあり、相手を無視した不用意な発言やふるまいがリセットを不可能にし、壊滅的なガラガラドンを招くことも、しばしばあるのだけれど。)





キウイの恵み[2026年01月23日(Fri)]

◆暮れに収穫していたキウイ、熟成させるためにリンゴと一緒にして置いたのを、すっかり忘れていた。

雄株・雌株を植えてだいぶ経つ。
うっかりすると家を持って行かれてしまうよ、と隣家のご主人がアドバイスしてくれた通り、放って置くといばら姫の館になりそうな勢いで枝葉を繁らせるが、その割に実が少なく、満足に食べたことがない(手入れしないから当然の報いだが)。数えるほどのキウイの実をハクビシンに食い荒らされた年もあって、もっぱら夏の日よけを務めてもらっていたが、昨年は思いのほかたくさんの実をつけた。
このままでは伐られてしまうかも、とキウイの方が一念発起したのかも知れない。

◆すっかり完熟状態、ありがたくいただいた。

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水仙――寒中見舞い代わりに[2026年01月22日(Thu)]

◆今季最強寒波というなか、水仙が咲いていた。

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よくみると、葉には刈り取られた跡がはっきりと見える。

切り詰められてからも葉と茎を伸ばすことを止めることなく開かせた花だった。

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