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懸念は、日本の空でも現実のものとなった[2023年11月30日(Thu)]

米軍オスプレイ墜落。ついに日本国内で死亡者を伴う事故が起きた。
屋久島沖で、漁で海上にいた人や島民たち多数が爆発の様子を目撃するところとなった。

間違えれば住民を巻き込んでもおかしくはなかった。

かねて危険性を指摘され、日本国内の米軍基地配備はもとより、自衛隊への導入配備に際しても反対の声があがっている。
市民の懸念をよそに、神奈川の空を飛ぶ姿も目撃されている。

◆日本政府の対応は、またも米国への忖度から、全く腰の退けたコメントに終始している。
いわく「不時着水」、いわく「安全を確認してから飛行を」……。
いったいどこの国の政府・防衛省なのか。
即時「オスプレイ全機の飛行停止」を米軍に対して要求すべきだろう。
(2016年の沖縄・名護市海岸でオスプレイ墜落があったことは未だ記憶に新しいハズ。)

この事故にもかかわらず、米軍は今日もオスプレイの訓練飛行を行ったと言うから唖然とするほかない。ナメられたものだ。

◆ネット上の声にも気になるコメントはあった。
いわく、「乗員は最後まで懸命に巻き込み事故を回避する努力をした」「事故を取り上げるメディアは米軍を批判するばかり」「民間航空機の事故に比べたら少ない」などの声があることに正直驚く。いずれも根拠なき臆断というしかないからだ。

国や公的組織がやることに間違いはない、という前提に立つからだろうか。

◆メディアに注文をつけるなら、これまでの事故の機種別の発生頻度や判明している原因、整備点検態勢や改良点について専門家の意見をふまえた報道を望む。

過ちを完全に防ぐことは出来ないにしても、事故ゼロに限りなく近づける努力は怠ってはならず、現実に起こってしまった事故の真相究明はその第一歩だろう。
国会も政府の姿勢を質す任を果たすべきだ。

◆危険なものはいらない。
そもそも戦争に金や人の命を預けるのは御免だ、という声をあげることを封じてはならない。


神泉薫「対話を」[2023年11月29日(Wed)]

◆イスラエルとハマスの戦闘一時休止は5日目を迎えた。
拘束されていた人たちの解放も継続しており、家族との再会に涙する様子が報じられた。
このまま協議を積み上げて延長を続け、停戦実現に至ることを願う。
後戻りは許されない。

そのために、日本の政府がなしうることもあるはずだが、その動きは見えない。

*******



対話を   神泉薫


わたくしの干上がりゆく心に
あなたの水甕からひとつ
ことばをください


みずみずしくあふれるあなたの混沌
(カオス)から
蜂蜜色に輝くことばを
掬い上げてください


朝露にきらめく緑の葉は
―――美しい
産声をあげた我が子の頬は
―――愛おしい
敬虔に祈りを捧げる者たちの声は
―――清々しい


色鮮やかな生命
(いのち)が語りかける喜び
あなたの水甕に蓄えられた金色の記憶


互いの心が渇き枯れ果てる前に
狂った沈黙が地上を黒々と覆ってしまう前に
あなたとわたくしをつなぐ
対話を


火花散る銃口を向けるその両手をどうか下ろして―――



『あおい、母』(書肆山田、2012年)より


◆〈蜂蜜色に輝くことば〉という表現が心にしみこんでくる。
命令や威嚇では無論なく、丁重を装った誘導でもなしに、本当に人を動かすことばは、なるほど蜂蜜色に輝いているものなのだ、と納得する。

*この詩集に豊かな水脈として注ぎ込まれた本たちが巻末に列挙されている。
当方の手元にある本の書名も何冊か見いだして、さらにこの詩集の世界が身近に感じられた。

書影も、下のように、詩集名と内容にふさわしい。
装画は大島龍という方。


神泉薫「青い、母」表紙.jpg



神泉薫「秋」[2023年11月28日(Tue)]


秋   神泉薫(しんせん かおる)



きょうは
たましいが
すずしい


せかいのうらがわで
だれかのにくしみが
ひとつ
ゆるされたから

きのうよりもきょう
だれかのために
いのるひとが
ひとり
ふえたから


きょうは
たましいが
すずしい


がれきが
ひとつ
あたたかなてでとりのぞかれたから


ぶきを
ひとつ
もうひつようないと
すてたせんしがいるから


きょうは
たましいが
すずしい


やんだことりが
いちわ
ふたたび
すこやかにはばたいたから


あかんぼうが
ひとつ
ははなることばをおぼえたから


なぎの
うみに
ひとり


きょうは
たましいが
すずしい


こおりを
ひとつ
くちにふくんで
あたらしい 詩 をかいたから


かぜが こころを すりぬけて


きせつは
めぐってゆく





きょうは
たましいが
すずしい



詩集『あおい、母』(書肆山田、2012年)より


◆詩には、そう願うこと・祈ることで、実現へと導く力がある。
ひとりが二人、二人が三人(うまくしたら二人が四人)……と詩の言葉が読むひとの内語を目ざめさせ、増幅されてひろがってゆく
……そのような詩に出会えた今日は、「たましいが/すずしい」と思うことができる一日となった。

明日も、そうでありますように。

*三年前、同じ詩人の『白であるから』(七月堂、2019年)から2篇紹介したことがある。
今回、出会った詩集『あおい、母』は二冊目だ。



 
谷川俊太郎(どの一生も)[2023年11月27日(Mon)]

DSCN7530c.jpg

横浜みなとみらいの今年のツリー。
アニメとタイアップしているようだが、世情に配慮してか、例年より渋めだ。

*******


(どの一生も)  谷川俊太郎


どの一生も
言葉に
尽くせない

一輪の
花と同じく

唯一の
星の
地上に
開き

誰の
哀しみの
理由にもならずに
宙に帰る



『虚空より』(新潮社、2021年)より


◆わたしたちは、どこから来て、どこにゆくのか。

学生時代、「哲学」の授業の一時間目、樫山欽四郎教授の問いがこれだった。
ナマ学生(がくしょう)にスッパリした解を出せるはずもないのだが、食べることにアクセクせず、大事なことがこの世界にはあるということだけは頭の片隅に置いとくよう、暗黙の裡におっしゃっていたのだと思う。
パワポもない時代の大教室での講義、ノートなどに目を落とすことなく、学生たちに語って倦むことがなかった。
講義を聴くとは、同じ時間をともに呼吸することだったと、振り返ることがある。

◆冒頭に掲げた詩は、上の哲学上の問いに対する一つの解として読み味わうことができる。
もっとも、凡夫が自分のことを「星」にたぐえるのは愚かな話だ。
「誰の/哀しみの/理由にもならずに」生を全うすることは殆ど無理だということぐらいはわきまえている。地上に暮らして得た実感はそんなところだろう。
にもかかわらず、詩人が嘉してくれるように、「宙に帰る」のだったら、それ以上誰を哀しませることもなくて済む、
「帰る」ところがある、というのは幸せだ。

けれど、「帰るべきところがない」人々はどうする?
「地上に開」く「唯一の/星」として遇してもらえぬ人々はどうなる?



谷川俊太郎(赤児の笑みが)[2023年11月26日(Sun)]

◆ガザでの死者1万4,800人以上、そのうち子どもたちの犠牲は6,000人にのぼるという(ガザ当局発表。11月23日時点)。

「殲滅」「根絶やし」ということばがイスラエル・ネタニヤフ首相の口から飛び出す。
たとえや脅しでなく文字通りの意図であることに戦慄する。

◆先週ガザから帰国した日赤の川瀬佐知子看護師が涙ながらに伝えたパレスチナ人同僚の言葉を改めてかみしめる。

「命の重さはみんな同じなのに、この世界はフェアにはできていない。自分たちに人権なんてない。私たちは本当にミゼラブルだ」。
【毎日新聞11/17記事】より
医療停止のガザ「本当に惨めだ」 帰国の日赤看護師、支援訴える
https://mainichi.jp/articles/20231117/k00/00m/030/318000c



********


(赤児の笑みが)  谷川俊太郎


赤児の
笑みが宇宙へ
開く

花の
秘密と
ひとつになって

ヒトに
ひそむ
知り得ぬ


死ねば
この星の
大地が
償うだろうか


14行詩集『虚空より』(新潮社、2021年)より


◆もろん、犯した悪を償うことは誰にも、大地によっても、できない。
だから、花のような〈赤児の笑み〉は、悪を未然にとどめて置くために、大人たちに向けて開かれている。






谷川俊太郎(どこ?)…「鬩」という文字[2023年11月25日(Sat)]


(どこ?)   谷川俊太郎


どこ?
と問えば
ここ

天の下
地の上で

一つ

いつ?
と問えば
いま

岩より若く
刻々に老いて
(せめ)ぎ合う
人と人


『虚空へ』(新潮社、2021年)より

◆この夏(7月ころ)に何篇か取り上げた詩集『虚空へ』から。
その当時は夢にも思わなかった中東の事態。
平時に読んで印象に残ったはずの詩や、そのころに感じたこともことごとく青ざめて感じられる現今だが、上のような詩に出会うと、進行中の事態を見つめなおす手がかりが、よく選ばれた詩の言葉にはあるように思える。

◆「(せめ)ぐ」とは、一つには「互いに恨み争う」ことであり、二つ目の語義としては「恨み訴える」こと(『広辞苑』)とある。
この詩ではお互い「刻々に老いて」ゆく者同士の恨みかこつ気分が込められているようにも思えるけれど、ここで「」の文字を良く眺めると、「闘う」の意味を持つ「」の中に「」=児が入っている。つまりここで闘っているのは「子ども」なのだった。
漢和辞典の「鬩」の字源の説明には〈子どもはよくけんかするから〉と記してあった(三省堂『新明解漢和辞典』第三版)。

であるならば、戦闘が児戯に等しいことを覚って武器を棄てること、それのみが、大人の取るべき道のはず。


山田隆昭「敵」[2023年11月24日(Fri)]

◆ガザ・イスラエルの戦闘、ようやく一時停止。
だが、その間も、自宅のある北部に向かおうとしたパレスチナ人がイスラエル軍から攻撃され、2人が死亡、11名が負傷したという。

イスラエルが空から撒いた警告ビラには「戦争はまだ終わったわけではない!」と書いてあった。(11/24TBS NEWS23)

◆初日のハマス側からの人質解放では、予定のパレスチナ人13人とは別に、タイ人12人が解放されたという(タイのセター首相のSNS)。

24日夜のNHKNEWSWEBによれば、タイ政府が公表しているところでは、ハマスによる奇襲攻撃で、これまでにタイ人39人が死亡、26人が人質となっている、とのことだ。
イスラエル国内で働いていたタイ人の存在も含め、知らなかったことの一つだ。

彼らについて取り上げた記事を探すと、朝日新聞にいくつか記事があった。アジアからの出稼ぎ者たちも巻き込んでのハマスの襲撃、思いがけないところで現代の人の動きを知る。
アジアの一員という視点から見ると、違う光景がひろがっているのではないか。


ハマス 人質のうちタイ人12人を解放 タイ首相が発表
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231124/k10014268561000.html

朝日10月17日記事
「イスラエルのために働いて幸せか!」 ハマスがタイ人を標的に?
https://www.asahi.com/articles/ASRBK6K5GRBKUHBI03H.html

朝日記事10月12日 記事
イスラエルでアジア人被害、なぜ多い 撃たれたタイ人労働者の証言も
https://www.asahi.com/articles/ASRBD5RSRRBDUHBI01Z.html?iref=pc_extlink



*******


敵   山田隆昭


真昼のゲームセンターだった
ひとり またひとり
撃ち倒す
次々にもの陰から現れる敵の
銃が火を噴く前に

指に残る軽い衝撃
のけぞり もんどりうって
彼らは地に伏したまま動かない
 たぶん死んだのだ
 たぶん
画面の中の兵士にも
人生があっただろうか

古い記録映画だった
コマ送りの技術が稚拙なためか
兵士の動きが不自然だ
妙にせかせかと灰色の空間に向かって進んでゆく
近くで砲弾がはじける
土と一緒に空中に吹き上がる兵士四〜五人
曲がった手足がなまなましい
もりあがる黒煙が作る影のなかで
 彼らも死んだのだ
 たぶん
その後の彼らの消息は伝えられていない
ぼくが生まれる数年前の出来事だというのに

父から受け継いだもの
刻印された銃撃戦の記憶
安穏とした日々のとあるひととき
向きあった鏡のなかにむっくりと身を起こす
自分という凶暴な
兵士いっぴき


詩集『伝令』(砂子屋書房、2019年)より。

◆「記憶の継承」と一口に言っても、加害の記憶を親たちからじかに聴くことはまれだろう。
まして当事者が次々と鬼籍に入って行ってしまう現在、必要な想像力は半端でないはずだ。
ゲームと現実の戦闘の間に想像力の橋を架ける、といった単純なことではない。

◆たとえば、TVに映った血まみれの若者、彼を撃ったのは自分だ、と想像できるかどうか。
そんなことをするわけがない、と、一笑に付すことができるのか、ほんとうに。



ただただ、もどかしい[2023年11月23日(Thu)]

◆前回、「ガザ・イスラエル、ようやく一時停戦へ」と書いたが、新聞などメディアは「戦闘休止」(戦闘の)「一時停止」・「中断」などの表現だった。
用語の使い分けには、各メディアのモノサシがあるのだろうし、実態とかけ離れた不正確な表現にならぬよう、慎重にならざるを得ないことは理解できなくはない。

ただ、モヤッとした言い方がやりとりされる日々に一喜一憂し、時に焦れるのも事実だ。
もどかしいのは、ニュース番組を進めるキャスターたちも同じ。
歯切れの悪い言い方が延々と続く。

残念ながら、23日段階では人質解放は実行に至らず、難民キャンプへの攻撃による新たな死傷者が伝えられた。

*カタールが仲介した今回の「合意」では、ハマス側から50人の人質解放、それと交換でイスラエルが拘束しているパレスチナ人の子どもや女性150人が解放される、と報じられていた。

昨日の報道では、イスラエルが拘束しているパレスチナ人の数が1万5千人、という数字が上がっていて、これには少なからず驚いた。
(今夕のNHKのデジタルニュースでは、人権団体〈ヒューマン・ライツ・ウォッチ〉が把握しているものとして、イスラエル治安当局が拘束しているパレスチナ人は11月1日時点で6704人、うち18歳未満の子どもたちが170人と報じている)。
いずれにせよ、拘束されている人々についても、パレスチナとイスラエルは非対称の状態にあるということだろう。

***

◆日本時間23日深夜、ようやく仲介役のカタール政府による発表があった。

現地24日の午前7時(日本時間24日午後2時)から4日間の戦闘休止を実施する、という。
またハマスが解放するとしたイスラエル人50人のうち13人を、24日午後4時(日本時間:24日午後11時)に解放するとの発表もあった。

戦闘停止の実施が遅れた事情や解放の段取りが変更になった理由その他、不明な点が多いが、合意の確実な履行なくして事態は打開されない。
犠牲をこれ以上出さぬために、即時停戦、それ以外にない。

DSC_0050鰯雲2.jpg



谷川俊太郎の詩〈おなかをすかせたこどもは……〉[2023年11月23日(Thu)]

◆ガザ・イスラエル、ようやく一時停戦へ。
今夕20時過ぎの報道では、日本時間の23日17時(現地時間:23日午前10時)からとのこと。
侵攻後50日近く過ぎてやっとたどり着いた合意。
確実に履行されるよう、そうしてそれが終戦につながるものであることを心から願う。
何より、わずか4日間の限られた時間。命をつなぐ水・食糧・医療・燃料の支援の集中を願う。

それにしてもガザの住民45パーセントが住む家を失った状態で、何をどうできるのか。

*******


黒い王様  谷川俊太郎


おなかをすかせたこどもは
おなかがすいているのでかなしかった
おなかがいっぱいのおうさまは
おなかがいっぱいなのでかなしかった

こどもはかぜのおとをきいた
おうさまはおんがくをきいた
ふたりともめになみだをうかべて
おなじひとつのほしのうえで


『ポール・クレーの絵による「絵本」のために』より
(*クレーの1927年の作品〈黒い王様〉に付した詩。)
(初出『現代詩手帖、1972年1月号』)
詩集『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』(青土社、1975年)に拠った。


*絵と詩を収めた講談社版の『クレーの絵本 谷川俊太郎』が見当たらず、「黒い王様」の画をアップすることができない。

幸い、画像をアップしているサイトがいくつかあった。
そのうちの一つ、〈オバタケイコのスローな日々〉2013/7/10の記事へのリンクを下に……
https://oakpinkfloyd.eshizuoka.jp/e1094527.html




竹久昌夫「鐘」[2023年11月21日(Tue)]



鐘  竹久昌夫


打つ
誰かが鐘を打つ
ふかい眠りのなかで
どこにも吊るされてない鐘を

こうとも言えよう

がらん どうーん がらん どうーん
と 私が鳴り止まない時には
遠い空の頂に
不明の鐘が吊るされているのだ と

私は
この時の私を愛しむ。



森田進・佐川亜紀『在日コリアン詩選集』(土曜美術社出版販売、2005年)より

*竹久昌夫は1939年に韓国に生まれ、1971年来日。2001年、日本で死去。
姜晶中(カンジョンジュン)の名で多くの翻訳書がある。


◆鐘の響きに共鳴する「私」の全存在。
その鐘は遠い空の天頂で鳴っている。

短い詩だが、世界と人間への信頼と愛情を感じさせる。
同時に、それに見合うだけの深い孤独をも。




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