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ケールはクールである[2022年11月20日(Sun)]

◆日曜の朝ということで地元のクリーン・デイに参加した。

途中の畑で不思議な野菜に遭遇。
茎はブロッコリーの親玉みたいで、葉は遠目に眺めると、広がりすぎたニンジンの葉みたいに縮れている。

DSCN6273.JPG

同道の方に「ケール」だと教えてもらった。

青汁のコマーシャルなどで名前だけは耳にしていたが、実物は初めて。
しかも、葉っぱが見事に波打っていて芸術的である。

DSCN6269.JPG

この畑でケールを植えてあるのは一畝だけだったが、存在感がある。

DSCN6272.JPG





ブッシュ孝子「ああ ローソク」[2022年11月20日(Sun)]

◆カレンダーにテープで留めてあった今シーズン最後のフィラリア予防の薬、あとひと粒を遺して相棒は逝ってしまった。

それから十日あまり。
文字通り手持ぶさたな両腕をもてあましながら、かつての足取りをなぞるだけの散歩が続く。

帰って来てまだ明るさの残る足もとの草をむしろうと、蚊取り線香に火をつける。
さすがに蚊はいなくなった気はするものの、念のため。

夕暮れどきの小さな火は、こころ慰む。


***


ああ ローソク    ブッシュ孝子


ああ ローソク
お前の丸やかな静かな
ひらめきの中には
(いに)しえからの無数の灯と
古しえからの無数の人の祈りとが
ひそんでいる気が私にはする



やなせたかし『だれでも詩人になれる本』(かまくら春秋社、2009年)より


◆病で急逝してから半世紀近くたって、若松英輔氏によって世の人々が知ることとなった詩人ブッシュ孝子(1945〜1974)。
二年前の、やはり秋に取り上げていた。

「人生」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1712

「あやまち」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1713

「暗やみの中で一人枕をぬらす夜は」「高い空の上で」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1714






城侑「威嚇」[2022年11月18日(Fri)]

       じょう すすむ
威嚇   城侑 


詩とは
現代文明に逆行するものだ
おれはまず
このきやびやかなネオンの谷から
オラン・ウータンを引き出さなければならない
奴は大きければ大きいほど
人間を威嚇するのによい



◆「文明」の反対語は野蛮だったか、未開だったか。
いずれにせよ、「オラン・ウータン」は、現代文明の中に隠れている野蛮なもの、文明化されざる原初の力に満ち満ちたもののことだろう。

詩を書くことは、このオラン・ウータンを呼び覚ますことだ。
その時、詩人の中のオラン・ウータンも目覚め、咆哮する。

「洗練」されているハズの都会の人士にとっては脅威である。
忘れていた自分のかつての姿を突き付けられる思いがするからだ。
あるいは、服を着てはいるが、尻尾と一緒に魂をも森の中に捨ててきてしまったことが分かってしまうからだ。


『定本 城侑詩集』(青磁社、1988年)より




戦史叢書第60巻(ルソン決戦)[2022年11月17日(Thu)]

221117夕日DSC_0336.jpg

今日の夕日。すっかり晩秋だ。

*******

戦史叢書の第60巻『捷号陸軍作戦〈2〉ルソン決戦』**というのを少しずつ読んでみている。
太平洋戦争末期、ルソン島で戦死した伯父(母の兄)の最期について、何も知らないでは済まされまいと思うからだが、当時の軍の仕組みもルソン島の地理も全く不案内な人間には容易なことではない。

ただ、冒頭の2,30ページ読んだところですでに、大本営と現地の軍、陸軍と海軍、それぞれの間に戦況認識の懸隔があり、また意志疎通がままならぬ現実が困難に拍車をかけたことは分かる。
敵との戦い以前に横たわる障害を思うと溜息が出るばかりだ。

書名は本の背にも扉にも「戦史叢書」と書いてあるのだが、付録のしおりには「大東亞(太平洋)戦争戦史叢書」と書いてある。
正面切って「大東亞戦争」と記すことへの慮りがあるということだろう。全102巻(別に資料集が2巻ある)の第1巻が出たのは1966年、第60巻は1972年である。

**防衛庁防衛研修所・戦史室の著として、朝雲新聞社から1972(昭和47)年11月25日に発行された。
現在はネットでも閲覧できる。





へリック「バラのつぼみを集めなさい」[2022年11月17日(Thu)]


◆古楽演奏のCDを聴いていたら、だいぶ前に2回ほど紹介したロバート・ヘリックの詩に出くわした。

***


バラのつぼみを集めなさい
   ロバート・ヘリック
  佐藤章・訳

バラのつぼみは集められる間に集めなさい。
古い時は疾く過ぎ去り、
今日ほほえむ花も
明日はしぼむ。

輝く天空の灯火、太陽は
高くのぼればのぼるほど、
その進行は早く終わり、
沈む時に近づく。

だから恥ずかしがらずに、時間を使い、
出来るうちに、陽気にやりなさい。
いったん青春を失ったら、
永久に待つことになるのだから。


ウィリアムズ・ローズ作曲の「カウンター・テノールとリュートのための6つの歌曲」より。
CD「ローズ ザ・ロイアル・コンソート」(BMG,1993年 BVCC-1025)に収録。


◆ロバート・へリック(1591-1674)は英国国教会の聖職者でもあった詩人だが、その詩にウィリアム・ローズ(1602-1645)という、チャールズ一世に仕えた作曲家が曲を付けた。

詩は、短い青春を謳歌せよと呼びかける。
バラは青春を彩るかぐわしい、しかしたちまち色あせてゆくものたちの象徴だろう。

◆ローズはこの詩に旋舞をうながすメロディーを付けた。疾く時が過ぎ去ることにおいて洋の東西に違いはないが、感傷に浸るひまがあったら今を楽しめと。


*原詩は岩波文庫版『へリック詩鈔』(森亮・訳)では「乙女たちに」の題で、四連から成る。
へリックの詩の中でも最も良く知られたもののようだ。

**手もとにあるCDは、佐藤豊彦のリュート伴奏でルネ・ヤーコプス(カンターテナー)が歌っている(1978年の録音)。

***YouTubeに女声による歌唱がいくつかアップされていたが、カンターテナーによるものは見つからなかった。

★詩の朗読(テキスト付)が一件あったので、下にリンクをはっておく。
https://www.youtube.com/watch?v=UUppZNOPdRM


★過去の記事で取り上げたへリックの詩は次の2編。

「偶作」⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/690

「ひとつの精神で」https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1449






供花[2022年11月15日(Tue)]

◆相棒が逝って一週間を過ぎた。
お骨は、居間の棚の上に写真とともに在る。

お世話になった動物病院の先生から、「ポーちゃんにお供えください」と届けて下さったお花は、しんがりとしてリンドウが可憐に花開き、どの花も、棚のお骨に語りかけるみたいに色とりどりに咲き揃って慰められる。そろそろお礼に伺わねばと思っていたところに、年賀欠礼の葉書、二人目の方のものが届いた。

可能な限り11月中に届くように書くのが礼儀らしいと知って、とりあえず喪中あいさつ用の葉書を買ってきた。

さて、どう書こうか。
深刻にならず、さりとて現在の気持ちも少しは伝えたいと、悩むことになった。

夢にいまだ登場せず。
どこに居るんだ?と問いかけていることが多い。
ちゃんとここに居るはずじゃないのか。







新実博英+谷川雁「自転車でにげる」[2022年11月14日(Mon)]


自転車でにげる   曲:新実徳英
          詩:谷川雁

          

やばい しばい オートバイ
ちんけなうそ ばれた
トゥートゥル トゥートゥル トゥートゥル トゥ
とんぼのはね くわえて 
すたこらさと にげる
どいつも こいつも ぎぜんしゃ
おれは どっこい じてんしゃ
かんからかんの ちりりりりんさ
ちりりりりんの あかちょこべーさ
トゥートゥル トゥートゥル トゥ


新実徳英=谷川雁の歌宇宙「白いうた 青いうた」より
CD「日本の声楽・コンポーザーシリーズ1 新実徳英T」のライナーノートに拠った。

前回書いたように、このコンビによる歌は曲が先、それに谷川が詩をつけるかたちで創られていった。そのため、出版楽譜では〈作曲:新実徳英、詩:谷川雁〉の順に書いてある由。それにならっておく。


◆何ともゆかいな歌だ。
すぐばれるようなウソを放って逃げてゆく者を憎むわけにはいかない。
何しろ、このおどけ者は、世の大人たちの偽善をしっかり暴いて見せているのだから。

「あかちょこべー」は博多のことばで「あっかんべー」という意味だそうな。

★YouTubeに「合唱団あっぱれ」がリモートで演奏しているのが楽しい。
下記の動画の6分15秒ぐらいから。
https://www.youtube.com/watch?v=1g_bz1y-diw

*「自転車でにげる」の後の「青い花」も良い(同じく「白いうた 青いうた」の一曲)。




新実徳英+谷川雁「二十歳」[2022年11月13日(Sun)]


二十歳(はたち)  
      曲:新実博英
      詩:谷川雁




まぼろしの 噴水に
ぬれたひとところ 胸のあたり
うらぶれた 四月の
昼のいしだたみ 影とあるく
子犬よ わらえ
(なん)にもないはたち
パン屋の匂いから
逃げてきたおれを
(とび)いろの ひとみは
そらの青うつす 風も砂も


うみどりの さけびを
かくすのどの奥 シャツのぬくみ
てのひらの 銀貨に
リラのかおりする 罪を語る
さかなよ わらえ
何にもないはたち
干がたの舟のように
うごかないおれを
鳶いろの ひとみは
そらの音をうつす 風も砂も


新実徳英=谷川雁の歌宇宙「白いうた 青いうた」より
CD「日本の声楽・コンポーザーシリーズ1 新実徳英T」のライナーノートに拠った。

◆持てざるものばかりで身もだえする青春。
鳶いろのひとみにただ空と大地の無限のみを映して。

◆1989年から1994年まで、詩人谷川雁との共作で作ったのが「白いうた 青いうた」で、計53曲が生まれた。
作曲者によれば、すべて曲が先行し、詞は後付けで通常とは逆の順序で作っていったのだという。
曲を聴くと、どの歌も、メロディーと詩が間然するところが全くなくしかも平易であることに驚く。

CDは独唱版で、新実真琴のバリトン、田中瑤子のピアノで1997年の演奏(VICC-60041)。
YouTubeに合唱版がいくつもアップされている。中にはリモートによる合唱+合奏もあったりするが、上のCDが一番しっくり聞くことができた。言葉も旋律も夾雑物なくまっすぐ心に入ってくる。そうして聞き手にも歌うよう促してくる。




湘南社民権講座&自由民権資料展[2022年11月12日(Sat)]

◆伊勢原市の雨岳文庫で開催中の第4回自由民権資料展に合わせて明日13日、第8回民権講座が同文庫で開かれる。

先人の生涯に当てた灯火が大山の麓から未来を照らす一条の光として投ぜられ続けていることに励まされる。



第8回民権講座

盲目の民権家・府川謙斎の生涯

府川謙斎(ふかわけんさい 1850〜1892)は、平塚出身で、明治の初め、高知、神奈川で盲目の弁士として活躍した民権家。

講師:鷹林茂男(たかばやししげお)さん(NPO法人 ガチャバンとともに生きる会)

資料代500円

11月13日(日)13:30(受付13:00〜)〜15:00

★会場:山口家住宅主屋(伊勢原市上粕屋862-1) 
  バス:小田急伊勢原駅北口4番大山ケーブル行、「〆引(しめひき)」下車、徒歩3分

★電話 0463(95)0002(雨岳文庫事務局)

★参加申し込み先 
090-8081-6305(吉水)
080-3010-2210(横井)
090-2142-8677(豊)


221017湘南社民権講座チラシ表A20221008 (2).png


自由民権資料展12月10日(土)まで、土・の10時〜15時、雨岳文庫資料館で開催中(入場無料)

民権講座チラシウラ20221008 (4)A.png

上は山口書輔(しょすけ)(1847-1893)の原稿「主権ハ何ニ帰属スルヤ」(1881年。雨岳文庫所蔵)


〈ふたつない爽やかな風が……〉[2022年11月11日(Fri)]

221111俣野の夕景(ハウス残照)DSCN0603.jpg

俣野の山裾の道沿いは、トマト・ロードと呼ばれるぐらいトマト栽培のビニルハウスが多い。
もう来シーズンのための支度が済みつつある。

*******



「挽歌」より   吉本隆明


遠くから
丘や樹々の騒ぎが告げてゐた
ふたつない爽やかな風が
誘なつていつたのだと――

ふかく果てしない空の色が
つつどりの鳴くやうにせはしく移り
さまざまな形の雲が
すべて極まれる形に至つたとき

しるべするひともない
痛手の旅をいつたのだと――

緑の色や日のきらめきに浴したかつたのに
枯れたものみなが
つめたい音のひびきを送つたのだと
窓からは夜が
冬の苹果や薬瓶をつややかに灯してゐるとき

遠くから
丘の樹々の騒ぎが告げてゐた
ふたつない爽やかな風が
誘つていつたのだと――



『吉本隆明初期詩集』(講談社文芸文庫、1992年)より


◆全部で七連から成る詩の、第五連まで。
原詩は若き乙女の死を悼む歌。
転用を諒とせられんことを。



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