
ナ・テジュ「懐かしさ」[2022年01月31日(Mon)]
◆わずか2ヶ月前に出会った詩集、それも4篇を紹介したばかりなのに、すっかり忘れてまた買い求めた。
過ぎる時間が余りに速くて人を忘却の深い淵に引きずり込むのか、それともすでに淵の中に住していながら、そのことさえ忘れているのか。
◆よほど我が手になじみ、我が心に響くことばがここにはあるのだろう。
重複しないよう、過去の記事を確かめた上で、今日の気分に合う一篇を――
懐かしさ ナ・テジュ
黒河星子・訳
ときどきぼくの目からも
塩水が流れる
たぶん僕の目の中には
海が住んでいる
『花を見るように君を見る』(かんき出版、2020年)より
◆「ぼくの目からも」とあるから、この詩は、涙をたたえたもう一人の人、今目の前に向かい合わせで座っている人に向けたものだ。
詩集名にある「君」がその人だと考えて良い。
この詩に限らず、「君」に語りかけたい思いが、目からあふれた涙と同じく、内なる海の深いところから、余計な綾をまとわずに滲出してことばになった、というおもむき。
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★これまで紹介したナ・テジュの詩は下記の4篇(2021/11/28〜12/2)。
「ぼくが愛する季節」
⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2148
「祈り」
⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2149
「葉っぱになるために」
⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2150
「訪れたことのない街角」
⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2151