
ナ・テジュ「葉っぱになるために」[2021年11月30日(Tue)]
◆ナ・テジュの詩は、言葉遣いはあくまでシンプル、そうしてそこに澄んだ真実が宿る。
葉っぱになるために ナ・テジュ
黒河星子・訳
草の葉の上に
ぼくの身をあずけてみた
ゆらり、
撓(たわ)んだ葉
草の葉の上に
ぼくのかなしみを乗っけてみる
ゆらり、
より深く撓んでいく葉
今日はぼくの体重より
かなしみのほうが 重いみたいだ
ナ・テジュ(黒河星子・訳)『花を見るように君を見る』(かんき出版、2020年)より
◆草の葉に乗っかった露のひとしずくほどに身を縮めてみる。
次いで、「かなしみ」をも、ひとしずくに凝集させて葉の上に乗せる。
そうしたら、僕の体重より「かなしみ」のほうが重いみたいだ、という。
それもそのはず。
この身は今現在、ここに在る限りの重さだが、「かなしみ」の方は幾十年の時の滴りとして在るからだ。