蒲鉾屋の詩人・清水正一[2021年05月31日(Mon)]
◆我が本棚に在る詩人の名を天野忠の詩の中に見つけた。
かまぼこや
清水正一という蒲鉾屋の詩人がいた 天野忠
「ええカマボコは
材料の吟味と塩加減で
きまるもんや」
一日十一時間働き抜いた職人
清水正一七十歳の
おいしいカマボコは貰わずじまい。
いま遺族の贈って呉れた
大事なもう一つの仕事を味わう。
ええ材料に
ええ塩加減をきかせた
おいしい君の詩をたっぷり
一冊分。
天野忠詩集『長い夜の牧歌』 (書肆山田、1989年)
◆この詩に紹介された「一冊」は『続 清水正一詩集』(編集工房ノア、1985年)のことだ。
地元の古本屋で出会った。
1913年に三重県で生まれ、兄が大阪で始めたカマボコ屋の仕事に参加。
詩にも仕事の話が出てくる。上記詩集は亡くなった1985年に詳細な年譜も付いて世に出たもの。
その中から掌篇ひとつ。
割箸 清水正一
ベルリン・フィルハーモニー
名曲ローマの松のきびしき終幕
カラヤンの巨きな手が
ゆるやかにおろされる
指揮棒(タクト)はちいさく割箸のようだ
一万七千円もぎとった
割箸
*「ローマの松」の下線、オリジナルでは傍点。
◆以前、拙ブログで取りあげたのは2回。都合3編を紹介した。
★「秋の歌」⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1021
★「落葉」「どこへも行かぬ」⇒https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1022