花の下の死闘[2021年03月30日(Tue)]
◆境川の土手も桜は満開。チラホラ散る花びらが川面に浮かぶ。
横浜側から境川に注ぐ宇田川の桜はこの辺りでも見応えのある場所だ。
朝の散歩者は年配者が多いが、男女の別なくスマホ片手にしばし立ち止まって撮影中の人が多い。
自撮りというのか、手を伸ばしてアングルを決めるべく画面に見入る若い人もいる。
◆人間たちの風雅と対照的に、必死の格闘を繰り広げるものたちもいた。
常ならば水中に姿を没して魚を捕らえ、長い潜水と束の間の浮上を繰り返すカワウが、水に顔を着け体を水に浮かべたまま下流に流されていく。
時々上げる顔に目をこらすと、獲物を咥えているようだ。朝飯にありついたのなら、さっさと呑み込めば良いのに、と思いながら近づいてみた。
すると、何ということだろう!
咥えていたのは、6~70センチあるのではと思えるウナギ。
尻尾が見えてあと20センチ足らずで呑みおおせるところまで行きながら、戻してしまうようだ。
それを何度も繰り返していた。
そうこうしているうちに散歩同道の我が相棒が用足しをする。その始末をしている間にもウとウナギとは数十メートル流れ下る。
下流でこの格闘に気づいた男性がスマホを出してこの格闘を撮ろうとしていたが、ウナギの姿はもう見えない。
「呑み込みましたか?」と訊くと、「いや……」という返事。
ウナギに脱出する余力があったのか、呑みきれないと諦めたウが吐き出したのか、どちらとも分からない。
ウナギの姿は見あたらなかった。
ウの方は上流に向けて移動を始めた。
ふつうなら飛んで100mほど上流に戻る習性であるのに、さすがに精も根も尽きたのか、羽ばたくことはせず、このあと水中に姿を潜らせた。
目撃した顚末に一部欠損があるが、相棒のせいにしても仕方がない。
満開の桜をよそに、「ウ」と「ウナギ」で何か駄洒落をヒネるのもはばかられるような死闘であったことは間違いない。