オニユリの季節となった。茎に黒いムカゴ(零余子)をたくさん付けている。
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思いつきのコロナ対策で権力濫用の恐れ◆都内の夜の繁華街で、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に基づく警察の立ち入りにコロナ対策のために行政が同行し調査を始めたという。
7月19日に菅義偉官房長官が方針表明していたことに基づく。しかし専門家からは、法の目的を逸脱した権力濫用の危険をはらむと指摘されている。
【ハフポスト7月25日記事】
風営法で立ち入り、同行はOK?「法的にグレー」と専門家⇒
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f1bd89bc5b6296fbf43062e?utm_hp_ref=jp-homepage◆そうした中、西村康稔経済再生担当相は今日25日の記者会見で、劇場や飲食店の換気徹底を促すために
建築物衛生法*に基づく立ち入り検査を進めることを検討していると述べたという。
*建築物衛生法=建築物における衛生的環境の確保に関する法律
◆発言が風営法名目への批判を意識したものか、網をさらに広げて飲食店以外の施設にも広くかぶせる意図なのかは不明だが、これは実効性という点では迂遠であるばかりか、建築物衛生法を所掌するはずの厚労省とのすりあわせがなされたかも不明で、いかにコロナ対策担当と言っても勇み足、というより越権に当たるだろう。閣内の意思統一がなされないまま、思いつきを口にしたのだろう。
◆たとえば建築物は建築基準法をはじめとする法令によって換気・空調設備が充たすべき基準が定められている。ただし、新型コロナの感染対策としてどのような設備をどのように稼働させるのが有効か、既設の設備では限界があるのか、目下模索中の状態であるだろう(感染のしかたについてもスーパーコンピュータまで動員したシミュレーションなどによってようやく輪郭が見えてきた段階だ)。
万全と評価出来る基準を策定するには、場合によっては関連法の改正を行う必要も出てくるだろう(国会は皮肉なことに閉会中だ)。その場合には、改善命令その他、実効性がある具体的な措置がなされるのは先の話だ。設備の改良で済むとしても既存の建物にただちに導入or適用して行くには相応の時間と費用がかかる。実効性という点で迂遠だ、とは、その意味である。
今頃になって既存の法律を引っ張り出して良く吟味もしない思いつきを並べ立てる。例の「新型コロナ特措法」が、いかに拙速かつ疎漏なものであったかが、分かる。
*ただし、法律に罰則など強制力を持たせれば良いということでは全くない。
◆ひょっとして西村大臣は、法律をいかようにも運用できると勘違いしているのではないか?
罰則規定がない法律についても閣議決定で法解釈を変えれば強制力を持たせられる、と思っていやしないだろうか(まさか、と思うが、これまで安保法制、検察庁法など数々の倒錯した解釈変更を閣議決定一つで強行してきたアベ内閣であるから、あり得ぬ想像ではない。)
◆もう少しここまでの実際的な動きを確認しておくと、実は「建築物衛生法」を根拠とした厚労省から以下の「事務連絡」が3月・4月と各自治体に出されている。
●3月19日付け:「新型コロナウイルス感染症のクラスター(集団)の発生のリスクを下げるための3つの原則」の周知について」
●4月2日付け:「特定建築物における空気調和設備等の再点検について」
これらを受けて、各自治体は対策・点検を促す通知を出している。
*〈福岡県の例〉
【建築物衛生法関係者(特定建築物所有者・維持管理権原者・登録事業者)の皆さまへ】新型コロナウイルスに関するお知らせ⇒
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kentiku-eisei.html◆こうした事務連絡からも、「建築物衛生法」は厚労省の所掌であることが確認できる。
であればこそ、この法律に基づくコロナ対策を行おうと考えているのなら、厚労省との協議を経てコメントするのでなければおかしいわけだが、そうした動きは報じられていない(記者から西村大臣や加藤厚労相に確認したかも報じられていない)。
もっとも、関係方面の了解ナシで突然の方針を表明するのは、西村大臣を含むアベ政権の「いつもの手」である。
そこから推して言うなら、これまでのコロナ対策と同じように、この「建築物衛生法」活用の話も、しかるべき法人や特定の業界にビジネスチャンスを提供する(その見返りに政治献金等による環流を図る)狙いが潜んでいるのかも知れない。
何しろ経済再生担当大臣がコロナ対策を仕切る、という矛盾が未だにそのまま、というおかしな政府であるから、あり得ぬストーリーでもない。