CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 2020年05月 | Main | 2020年07月 »
<< 2020年06月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
ブルーインパルス「医療応援飛行」報道の真相[2020年06月30日(Tue)]

◆1年の折り返しを迎えたが、首都圏のコロナ感染者数は高止まりのまま真夏に突入しそうだ。
東京都では5日連続で50人を超えた。横浜も今日は28人。それでも都がアラートを再発令しないのは医療が逼迫していないからだ、というが、果たして安心できる状況なのか、各種データの明示によって我々に判断材料が与えられることが必要だ。
とりわけ、TVは映像に加えてテロップなどの文字情報がアナウンスと同時に伝えられるだけに、客観性を装いながら人心を誘導する危険性をはらむ。
先月末のブルーインパルスによる医療機関への応援飛行というニュースは、「公共放送」によるヤラセの疑いをはらんでいた。
真相に迫る永野厚男氏の記事を『マスコミ市民』から全文紹介する。

***


白衣の下は鎧〜熱狂していたのは自衛隊中央病院だった
ブルーインパルス”大歓迎”だけ報じたNHK


    永野厚男(教育ジャーナリスト)
        *『マスコミ市民』20年7月号より転載

 航空自衛隊・入間基地(埼玉県)を飛び立った、曲芸飛行軍団・ブルーインパルス6機が、白色のスモークを引き編隊飛行する空に向け、全員が万歳するように両手を振り「ありがとー」と大声で叫ぶ。中には涙ぐむ者も。「救われる。皆で頑張っていて、これからも頑張る」と無邪気に語る女性へのインタビューも映し出す。
 NHKは5月29日の『シブ5時』以降、30日6時台の『おはよう日本』まで、ニュースで計6回も、コロナ禍なのに、100名超で密着・密集する白衣の集団(黄色と緑色の床のヘリポートを兼ねた屋上なので、いわゆる3密のうち、密閉はないけれど)の”熱狂”を、どこの病院か明示しないまま放映し続けた。
 だが白衣の集団は実は全員、ブルーインパルスの”身内”の自衛隊員、即ち自衛隊中央病院(以下、中病)の医官と看護師らだった。
 


NHブルーインパルスおはよ日本200530.jpg
★自衛隊の病院だという事実を隠し、ブルーインパルス"大歓迎"を垂れ流した5月30日のNHK『おはよう日本』


自衛隊中央病院は戦時等、負傷した退院の治療が本務

 中病は、東京都世田谷区と目黒区に跨(またが)る自衛隊三宿(みしゅく)駐屯地内に所在する。同駐屯地の前身は旧日本陸軍駒沢(こまざわ)練兵場であり、同じ駐屯地内に、旧防衛庁技術研究本部当時から人々を殺傷するミサイルや支援戦闘機の設計・開発等をしてきた、防衛装備庁の電子装備研究所・先進技術センターもあるのだ。
 中病は常に一定の空きベッドを確保し運営している。なぜなら、有事、即ち戦時に負傷した自衛隊員を収容・治療し、戦闘地域に復帰させるための施設だからだ。
中病のホームページの新年の「挨拶」で、病院長は・上部康秀(うわべやすひで)氏(病院長は自衛隊医官から転官の防衛技官)は「今年はいよいよ東京オリンピックが開催されます。大変楽しみな一年になりそうです。しかしながら、我が国を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増しつつあり(略)強く懸念されて、います」と語る。
 (略)の箇所には「地震、台風豪雨等の大規模自然災害の発生や新型インフルエンザの流行」も記述してはいるが、安倍首相らが集団的自衛権行使の戦争法の国会審議の答弁で繰り返した「安全保障環境の厳しさ」を「強く懸念する」と「挨拶」に明記することからも、普通の病院ではないのは明白だ。
 中病のHPはコロナ禍の「ステイホーム」に関連し、「私達は病院で 皆様は家で 一緒に日本を守ろう!!」と書いたプラカードを手にした医官と看護師ら、15名(うち、2名は階級章付きの制服)の集合写真も掲載。「人々の命を守ろう!!」でなく、「日本を守ろう!!」)と国家を前面に出すのは、普通の市民・生活者の感覚とは、かなり違う。
 中病のある三宿駐屯地の司令は、陸上自衛隊衛生学校の校長が兼務している。
 衛生学校のHPは、「顔にドーラン(野外戦闘訓練で偽装するカモフラージュメイク)を塗った迷彩服・鉄帽の自衛隊員が自動小銃を構える写真」と並べ、医療部隊の訓練の写真も載せる。その迷彩服の自衛隊員らは、上腕に「赤十字の腕章」を付け、カルテらしき紙を見たり担架で負傷者を運んだりしているが、顔はドーランを塗り、鉄帽には木の葉や草を大量に付けている。また三宿駐屯地にはカーキ色の大型救急車が多くある。
 まさに戦争遂行のための施設なのだ。



都の病院経営本部が前夜、都立病院等に「来る」とメール

 都庁・病院経営本部は28日夜、管轄する8つの都立病院等に「29日ブルーインパルスが来る」というメールを送信。自衛隊出身の、ヒゲの隊長≠アと自民党・佐藤正久(まさひさ)参院議員は29日朝、ツイッターに「本日、12時40分からブルーインパルス東京上空へ、医療従事者への感謝表す。飛行ルートは、都立駒込(こまごめ)病院(文京区)、都立墨東(ぼくとう)病院(墨田区)、荏原(えばら)病院(大田区)、自衛隊中央病院(渋谷区。ママ、世田谷・目黒両区の誤記)、東京都庁(新宿区)の順に、2周飛行します。是非ご覧ください」と投稿した。
 前記・都庁メールを受け都立病院のうち、駒込病院は3階の屋上を医師看護師等に開放し50人以上集結。墨東病院は看護部の公式ブログ『ぼっくんの墨東日記』に「ありがとう!ブルーインパルス!!」と題し、「墨東病院からの眺めです。ちょうどお昼休みだったので、窓から見ることができました! (略) 墨東病院のスタッフ、みんな元気をいただきました!本当にありがとうございます!」と載せた。両病院の少なからぬ職員は、自衛隊ファンクラブのようだ。
 一方、同じ都立病院でも、広尾(ひろお)病院は筆者が電話取材すると、「屋上は緊急時以外、開放しておらず、1階部分も含め、少なくとも敷地内で医師・看護師が集結し手を振るようなことは、一切なかった」と回答。
 大塚病院は、前記・都庁メールを職員に転送し、屋上を開放したが、職員を組織的に動員することはなく、集まった人数は「そこそこだった」という。 



「ブルーインパルス大歓迎は自衛隊病院=身内だ」という事実を伝えないNHK

 中病のHPからリンクで見られた、複数のYouTube(テレビ朝日等が出資し設立した、ネットニュース・アベマTVのLIVE中継を含む)は、冒頭のNHKと同種の中病屋上の熱狂≠放映する際、迷彩服や階級章付き制服(半袖白)の自衛隊員少なくとも5名を映し出した。
 だがNHKは、筆者が現認した29日の『ニュース7』、前記『おはよう日本』では、@画面に中病だというテロップを一切出さず、アナウンサーも、「(場所は)中病だ」と一切読み上げないまま、冒頭の熱狂≠ヤりを垂れ流し、A迷彩服や制服は1名も映さず、白衣の軍人≠チぽくない医官と看護師らだけを映し出した。

 そこで筆者はNHKに6月2日早朝、次の趣旨の質問・取材メールを送信した。
@NHKが5月29日の『ニュース7』等で、「コロナ患者を受け入れてきた病院の上空を、ブルーインパルスが飛んだ」とするうち、「特に手を振る人がいなかった都立広尾病院」等を取材せず、「ブルーインパルスと同じ軍事組織の中病」の屋上ヘリポートに貴局の取材陣が上がり、軍医≠竭煦たる看護師が、仲間(身内)である自衛隊機に大はしゃぎしている映像だけを放映したのは、視聴者に自衛隊に親しみを持たせようと謀(たくら)む意図、政治目的があるのでは?
A「自衛隊中央病院」というテロップを、画面に正直に出さなかった理由は?
B Aは「軍事組織でない普通の病院の医師・看護師がブルーインパルスに感謝している(中病屋上に数名いた迷彩服等の自衛隊員を撮さず白衣の人を前面に撮し、普通の病院である)かのように装う意図」はないか?

これに対しNHKは同日夕刻、次の趣旨の回答を送信するに留まった(回答者の職・氏名は不記載)。

 ご指摘のような意図や目的は全くありません。ブルーインパルスが都心上空を飛行したニュースに関しては、自衛隊中央病院のほかに、都立墨東病院、都立駒込病院、川崎市立井田病院で、飛行の様子を見る人たちの姿などをそれぞれ取材しました。29日のシブ5時、ニュース7、ニュースウオッチ9では、いずれの放送とも、取材した複数個所の映像を使用してお伝えしています。

 だが、墨東・駒込等は中病と同じ自衛隊歓迎派なので、ブルーインパルスに手を振らなかったり特に関心を持たない医療関係者の姿は、視聴者に伝わらない。これでは「政治的に公平であること。報道は事実をまげないですること。意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と規定した放送法第4条に違反する。
 この放送法違反を、筆者はNHKに電話で伝えた上で、6月3日以降、数日に分け3回ほど、
@ 報道の常識である「5W1H明示」に反し、貴局が今回「場所」は「中病だ」とアナウンサーも言わず、テロップも出さなかった理由は?
A @は事実だけでも認めるか?
などと、メールで問うた。
 だがNHKは、「いずれも自主的な編集判断で放送しており、個別の編集判断や、取材や制作の過程に関することは、お答えを差し控えさせていただきます」などと、質問・取材に正対せず、はぐらかす回答を繰り返すだけだった。


ブルーインパルスは大歓迎∴ネ外に、危険性も報道を

 河野(こうの)太郎防衛相は6月1日のブログに、今回の飛行は自ら指示し「約360万円」もの税金を投入したと明記した。一方、ブルーインパルスの起こした墜落事故は、00年7月4日、宮城県牡鹿(おじか)半島で隊員3名が死亡、1982年11月14日の浜松基地航空祭では、隊員1名が即死、住民ら14人がやけどなどの重軽傷を負い、全部で28棟が被害に遭い(うち民家1棟は全焼、工場2棟は半壊)、自動車修理工場にあった新車350台のうち250台もが被害を受けている。だがNHKも河野氏も、これらの危険性には一切言及しなかった。
 今回の軍事問題での防衛省・自民党の施策に偏したNHKの報道は、文科省が社会科等の学習指導要領や教科書検定で、小中高校生に政府・自民党の政策を是と教え込ませようと介入している問題と同根。立憲野党や私たちは厳しく監視し、是正させていきたい。
 



ブルーインパルス自衛隊中央病院HP4200529YouTube.jpg
★NHKとは異なり、ネットニュース・アベマTVは自衛隊中央病院迷彩服の隊員の姿も放映した





森川義信「勾配」[2020年06月29日(Mon)]

DSCN3769ヤブカンゾウ.JPG

ヤブカンゾウ。この時期、用水路に身を乗り出すように咲いている。
別の場所では下の様に、流れに花が浸かってしまっていた。

DSCN3751.JPG

漢名「萱草」の音読みで「カンゾウ」とのこと。
「萱草」は訓読みでは「わすれぐさ」で、立原道造の詩集『萱草に寄す』が思い合わされるが、そこで詩人がイメージしているのは同じワスレグサ属でも可憐な黄色のユウスゲの方だろうか。

*******

勾配  森川義信

非望のきわみ
非望のいのち
はげしく一つのものに向って
誰がこの階段をおりていったか
時空をこえて屹立する地平をのぞんで
そこに立てば
かきむしるように悲風はつんざき
季節はすでに終りであった
たかだかと欲望の精神に
はたして時は
噴水や花を象眼し
光彩の地平をもちあげたか
清純なものばかりを打ちくだいて
なにゆえにここまで来たのか
だがみよ
きびしく勾配に根をささえ
ふとした流れの凹みから雑草のかげから
いくつもの道ははじまっているのだ


鮎川信夫「現代詩との出合い」(思潮社、2006年)より。
「勾配」の初出は1939年11月の『荒地』第四輯。

◆鮎川信夫は詩友・森川義信(1918-1942 ビルマで戦病死)のこの詩を繰り返し紹介して来た。
鮎川はこの詩に「ある原型的なもの」を感じたという。
そうして、彼の詩について次の様に記す。

〈根なくして生きなければならなかった私にとって、森川の詩は、大きな慰めであり、希望であった。これが単なる論理であったら、あの苛酷なナショナリズムの嵐の只中で、こっぱみじんに打砕かれてしまったかもしれない。〉

こぞってナショナリズムに傾斜した時代にあって、水のうねりにさらわれぬように根を張ろうとしながら道のはじまりを示す者。それが鮎川にとっての森川という存在であったとするなら、一方、鮎川自身は、その根が自分にはなく、〈過去と未来の中間に佇んで動かない人間〉だと自覚しながら、〈世界との接触は、けっして失っていない〉(鮎川「現代詩の出合い」)ことを頼りに、未来を見つめることを己に課した者、ということになる。

不在の友に、友が開示した道を自分の足裏は捕らえているか、と問うことは、即ち自らに問い直すことであり続ける。


*鮎川信夫と森川義信については過去に次の記事で触れた。

星のきまっている者は(1)[2016年7月7日]
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/321

星のきまっている者は(2)[2016年7月8日]
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/322


*森川義信の作品は青空文庫に50篇近くが公開されている。
作家別作品リスト:No.1652
https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1652.html





「おわい」の浄化[2020年06月28日(Sun)]

DSCN3702.JPG
ヤブカラシ。
この季節、到る所で足もとに蔓を伸ばしている。
別名、ビンボウカズラ(貧乏葛)だとか。

オレンジに見えるのは短命な白い花が散った跡だそうで、その蜜に群がる虫たちは多い。
自らの生成物で他の生き物を養うのだから、気の毒な名前とは逆に、利他的な植物で、その在りようを讃えたくなる。

*******

河井克行・案里夫妻による買収事件、克行議員が現金を渡した94人のうち地元政界の議員や市長らは42人という大人数で、複数回受け取った者もいる由。
これまで受け取りを否認していた者たちが、一転して受領を認め始めた。
マスコミではドミノ倒し告白と喧伝するが、「アベさんからです」との発言があったことを証言する人も複数いる以上、濁流の源、1億5千万円を交付した総裁自身の罪が裁かれねばならない。

それにしても、国民の血税を勝手に費消する者ばかりが肥え太り、汗して働く納税者はどこまでも塗炭の苦しみを味わう。
世の中が間違っていると焦点をぼやけさせてはならない。
善意の正直者を食いものにする不心得者が一人二人でないことをきっちり指弾し、議員バッジをはぎ取ることが必要だ。すなわち、真っ当な社会にすること。

*******


自己紹介   山之口貘

ここに寄り集つた諸氏よ
先ほどから諸氏の位置に就て考へてゐるうちに
考へてゐる僕の姿に僕は気がついたのであります

僕ですか?
これはまことに自惚れるやうですが
びんぼうなのであります。



*現代詩文庫『山之口貘詩集』(思潮社、1988年)より

茨木のり子『うたの心に生きた人びと』(単行本1967年、のち、ちくま文庫、1988年)はこの「自己紹介」をとりあげ、上京後の”ルンペン詩人" 山之口貘が遍歴したさまざまな仕事を挙げた中に、「おわい屋」をやったこともある、と書いている。
正確には水洗便所のマンホールの掃除人夫ということだったようだ。(*今キーボードを打ったら「にんぷ」が「人夫」と変換されない。恐らく差別用語という扱いになったのだろう)

それなら、自分もはばかりながら、経験があるゾ! と思って山之口貘をさらに身近に感じた。

当方は1973年、学生寮にいたころのアルバイトで、バキュームカーに同乗してくみ取り作業の助手を務めたことがある。個人の住宅ではなく多摩地区の学生寮や自衛隊基地を中心に回った。

イラク戦争開始後の2005年ごろ、「ジャー・ヘッド」というアメリカ映画を観たら海兵隊の新兵がトイレ掃除をやらされるシーンがあって、たちまち自衛隊基地での汲み取り作業を屎尿のにおいと一緒に思い出したことだった。

茨木のり子によれば、〈繊細な神経を持った貘さんには、この仕事は耐えられなかったのでしょう。じっさいにやったのは、四、五回だけという話です。〉 (文庫版上掲書157頁)ということだが、自分がバキュームのバイトをしたのは2回だけ。より「繊細な神経」を持っていたから、ということではなく、びんぼうと格闘せずに済むふつうの学生だった、というに過ぎないのだけれど。

***

何にせよ、金権政治の「おわい(汚穢)」はフタせずに汲み取り、水で浄めなければ収まらない。




八木重吉「空と光」[2020年06月27日(Sat)]

DSCN3735.JPG

ネムノキが花開いた。
梅雨の季節、曇り空を背景にながめることの多い、婉然たる花。

ただし、先日の激しい雨風になぶられて、長いまつげにカールをかけたような花のかんばせ。

DSCN3732.JPG

*******


空と光    八木重吉 

(きざ)まれたる
空よ
光よ


『秋の瞳』所収。
『八木重吉全詩集1』(ちくま文庫、1988年)によった。

◆6月の光が見せるおぼろな景物と対照的に、この詩は梅雨の明けた夏の景だろう。強い日射しが濃い影をくっきりと浮かび上がらせる季節。
空や光を「彫む」という言葉で表すにふさわしい。

詩集『秋の瞳』には、他にも〈宇宙の こころは/彫(きざ)みたい!といふ 衝動にもだへたであらう〉
(「壺のような日」)、のような詩句があり、さらに次のようにはっきりと彫られる木地と「彫る」刃の感触を表現した詩もある。


彫られた 空

彫られた 空のしづけさ
無辺際の ちからづよい その木地に
ひたり! と あてられたる
さやかにも 一刀の跡



一方、その空は、こちらをじっと見つめている瞳でもあるのだった。


空が凝視(み)てゐる

空が凝視(み)てゐる
ああ おほぞらが わたしを みつめてゐる
おそろしく むねおどるかなしい 瞳
ひとみ! ひとみ!
ひろやかな ひとみ、ふかぶかと
かぎりない ひとみのうなばら
ああ、その つよさ
まさびしき さやけさ


これらを読んでゆくと、「彫られた/空」の光は、夏から秋へと陰が傾きを増すにつれて、我が身を余さず透かす光として反照して来るもののようだ。



河野防衛大臣は誰に詫びているのか[2020年06月26日(Fri)]

DSCN3711セダム(万年草)メキシコマンネングサ.JPG
メキシコマンネングサ。
柔らかそうな淡い緑の葉の上方に、黄色い小さな星形の花が散歩の足をしばし止めさせる。

*******

◆イージス・アショア配備計画の撤回を公表した河野太郎防衛大臣。いくつかの会合での彼の説明が、どうもオカシイ。
この人物もまた、眼中にあるのは国民のごく一部でしかないんじゃないか。

毎日新聞 6/25記事
防衛相、落選議員の名挙げ涙 「心よりおわび」 陸上イージス断念、自民説明で
https://mainichi.jp/articles/20200625/k00/00m/010/298000c

◆25日の自民党の会合での説明の様子を報じた記事は、次のように河野氏の様子を伝えている。

昨年7月の参院選秋田選挙区で、配備反対を訴える野党候補に敗れた中泉松司元参院議員の名前を挙げ「今日この場にいらっしゃいません、中泉参院議員にはとりかえしのつかない」と声を詰まらせ、「申し訳ない。電話申し上げておわびした。とりかえしつかないが、心よりおわびしたい」と述べた。

河野氏と中泉氏との関係の深浅は知らない。自党議員を前にしての、いわば身内相手の場であるから本音に近いものが出た、ということかも知れないが、ここにはともに選挙を闘う者への慮りはあっても、彼らに票を投じる国民への申し訳なさは無い。

◆同じ25日の午後、河野大臣は外国特派員協会での会見にも臨んだ。
ここでも目元を押さえる写真が報じられている。

質疑では、今回の政治決定のプロセスが異例であることについて質問が出た。
とりわけ党内への説明が後回しにされ、自民党内からも批判される事態になった理由として、河野氏は、配備予定であった秋田市と萩市への各首長に説明とお詫びを伝えることを優先した、と答えたが、この説明に市民全体への責任という意識は見られない。
特に秋田の場合は、市民生活への脅威となることについて地形の測定値の誤り、虚偽の説明への不信が昨夏の参院選において配備反対候補への支持票となったわけであるのに、その県民多数の意志表明を重く受けとめる姿勢が河野大臣には欠けていた。

河野防衛相の外国特派員協会での会見はYouTubeにアップされている。
(英語でのやりとり。設定でYouTubeの自動字幕表示が出る)
https://www.youtube.com/watch?v=UUEJISayOzY

こうした民意無視の数々はアベ政権の負の遺産としてすでに累卵状態であるけれど、それにしても、である。
いやしくも国務大臣は国民全体に対して責任を負うのであり、党の同志や賛成派の首長にだけ謝罪すれば責任を果たしたことになるわけではない。

◆政権中枢は、イージス・アショア撤回という重大な失敗とこれに注いだムダ金への責任も取らないまま、あろうことか、これに替わって「敵基地攻撃能力」の保有を検討、などと、またぞろ火事場泥棒の本領発揮である。
限定的な失火にとどめるどころか、油を注ぎ火薬もジャンジャン投入しようという構えである。
こういうのを「先軍政治」と言うのではなかったか。


図書館、本格再開へさらに一歩[2020年06月25日(Thu)]

DSCN3709.JPG
雲の向こうのお日様が田んぼの水面を輝かせながら動いてゆく。

*******


◆市の図書館が書棚の本や雑誌を直接手にすることができるようになった。
本格的な再開まであと一歩だ。
新着の本・CDを何点か借りて来た。

◆うち一冊は月刊『現代思想』4月号。〈迷走する教育〉という特集で、大学入学共通テスト・新学習指導要領・変形労働時間制などを取り上げている。
巻頭は大内裕和紅野謙介両氏による討議「逃走の教育から闘争の教育へ」と銘打つ。それほどに「入試改革」を起爆剤にして上からの「教育改革」を進めようとしてきた教育行政は倒錯しており、危機的だという問題意識があってのことである。

◆討議の中で紅野氏は国語の新科目「論理国語」について〈「論理国語」という言葉は本来ありえません。〉と断じている。
中教審の議論において委員の誰一人口にしなかった点である。
識者・専門家委員の学殖の浅さ、というより言語能力の薄っぺらさを物語る例というほかない。

*******

DSCN3708.JPG
苗が風にそよぐ様子から、しっかり根を張りつつあるのが感じられる。


玉城デニー知事の平和宣言[2020年06月24日(Wed)]

22期沖縄92528 130.jpg
沖縄・伊江島遠望


◆昨日の沖縄慰霊の日の玉城デニー県知事による平和宣言を動画で視聴した。
気になった点が2つある。
小さなことだが、宣言は世界と後世に向けた平和メッセージなので、今朝の新聞に掲載されたものを確認した上で書いておく。

◆一つは宣言の結びで用いた「全てのみ霊に心から哀悼の誠をささげる」という表現だ。

かねてヒロシマ・ナガサキでの平和祈念式典でアベ首相が用い、稲田元防衛大臣ら、靖国参拝を敢行する輩が好んで用いてきたことばである。
アベ首相は今回も沖縄でのあいさつにこの表現を用いた。

「哀悼の誠」という言い回しは、これら日本会議議員連盟に名を連ね、ことあるごとに靖国神社に参殿・奉納を行って来た政治家たちの常套句となっている。
「哀悼の意」「哀悼の思い」という簡明な表現があるのに、あえて「誠」という言葉を継ぎ足して己の至誠を証し立てようとする意図がある。その至誠は、失われた無辜の命よりは、彼らが身命を捧げた国家に対する至誠であろう。
そうした意味合いを帯び、かつ今や手垢にまみれた言葉を、沖縄県民を代表する玉城デニー知事が用いることへの違和感がある。

◆以前にも書いたことだが、「誠」は神道色の濃いことばである。
また「まこと」の本義は「〈真〉の〈事・言〉」である。
真心があり、言行が一致していることを意味するこの言葉は、誠意をもって行動する人物への他者からの評として与えられるのが本来であろう。
衆目の見るところ、その「誠」から最も遠い言行不一致宰相がこれを用いるのは烏滸(おこ)の沙汰というほかないが、沖縄県知事までそれに倣う必要は全くない。

参考記事
食言の徒による70年談話 2015年8月14日】
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/162

こちら側だけの「和解」 2016年12月29日】
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/397


◆もう一つは、宣言文末尾の日付けである。
「令和2年6月23日」と元号を用いたことだ。

知事の公式ホームページにはこれまで折に触れて行ったスピーチがアップされているが、いずれも日付けは元号であった。

今回の平和宣言で玉城知事は、冒頭、〈平和を希求する「沖縄のこころ・チムグクル」を世界に発信し、共有することを呼びかけます。〉と述べた。「チムグクル(肝心)」すなわち「心からの思いやりの心」を世界の人びととともに共有したい、と呼びかけたのである。
これと首尾呼応させるように、宣言文はウチナーグチ(沖縄のことば)と英語によって、未来の人類の平和と幸福のために祈る、と結んだ。
であればこそ戦後75年の1刻みを加えるには西暦を用いて宣言を締めくくることこそふさわしかったのではないか。



戦後75年の沖縄慰霊の日[2020年06月23日(Tue)]

沖縄05925-28 アダンの実051-a.jpg
アダン(阿檀)の実。2005年沖縄修学旅行にて


沖縄慰霊の日 若者の詩のことば

◆6月23日、沖縄慰霊の日。
今年も若い世代の詩のことばが凡百のスピーチよりも人びとの心を打った。
今年は首里高校の3年生。

これまで県外から修学旅行で訪れた高校生たちの多くが経験したであろう、ガマでの漆黒の闇、そこで聴き取った証言を受けとめ、未来へとつなぐ決意を語って胸打たれる。

詩の全部を下に写す。
(作者の朗読を視聴して、その息づかいを生かすべく、適宜行空けを挿入した。)



あなたがあの時  
    沖縄県立首里高校3年 高良朱香音(たからあかね)


「懐中電灯を消してください」

一つ、また一つ光が消えていく
真っ暗になったその場所は
まだ昼間だというのに
あまりにも暗い

少し湿った空気を感じながら
私はあの時を想像する

あなたがまだ一人で歩けなかったあの時
あなたの兄は人を殺すことを習った
あなたの姉は学校へ行けなくなった
あなたが走れるようになったあの時
あなたが駆け回るはずだった野原は
真っ赤っか 友だちなんて誰もいない

あなたが青春を奪われたあの時
あなたはもうボロボロ
家族もいない 食べ物もない
ただ真っ暗なこの壕の中で
あなたが見た光は、幻となって消えた。

「はい、ではつけていいですよ」

一つ、また一つ光が増えていく
照らされたその場所は
もう真っ暗ではないというのに
あまりにも暗い

体中にじんわりとかく汗を感じながら
私はあの時を想像する

あなたが声を上げて泣かなかったあの時
あなたの母はあなたを殺さずに済んだ
あなたは生き延びた
あなたが少女に白旗を持たせたあの時
彼女は真っ直ぐに旗を掲げた
少女は助かった

ありがとう

あなたがあの時
あの人を助けてくれたおかげで
私は今 ここにいる
あなたがあの時
前を見続けてくれたおかげで
この島は今 ここにある

あなたがあの時
勇気を振り絞って語ってくれたおかげで
私たちは 知った
永遠に解かれることのない戦争の呪いを
決して失われてはいけない平和の尊さを

ありがとう

「頭、気をつけてね」

外の光が私を包む
真っ暗闇のあの中で
あなたが見つめた希望の光
私は消さない 消させない

梅雨晴れの午後の光を感じながら
私は平和な世界を創造する
あなたがあの時
私を見つめたまっすぐな視線
未来に向けた穏やかな横顔を
私は忘れない
平和を求める仲間として


朗読の様子が動画でアップされている
https://www.youtube.com/watch?v=R-VorccEA78


22期沖縄92528 183.jpg
2005年、那覇市内で



雨に打たれるアメリカデイゴの花[2020年06月22日(Mon)]

◆雨の中、コンビニで車を停めて窓を少し下げると、駐車場に接した家の塀から真紅の花がこぼれているのが見えた。

DSCN9906.JPG

雄鶏の頭部のような不思議な形と鮮やかな赤。
豆科の仲間らしい丸い形の葉が雨に濡れているのも、花を引き立てるためのようで似つかわしい。

青空のもとなら花の色はますます鮮烈だろうけれど、葉も花も雨に洗われることで互いに一緒でなくてはならない定めであることを確かめ合っているようでもある。

◆レンズを向けていたら枝の先が大きく揺れた。花の一つが雨に打たれ重さに耐えかねてか落花したのだった。
しかしすぐに下の葉たちがやわらかく受けとめてくれたようだ。
落ちたばかりの花は下の葉に横たわっていた。
足もとには先に枝を離れたものたちの花片が散っているのだが。

DSCN9907.JPG

◆帰宅後、検索してみるとアメリカデイゴという花らしい。日本名はカイコウズ(海紅豆)。
南米産で我が国には江戸時代に渡来し、鹿児島の県花であると知った。
デイゴという名を持つが沖縄のデイゴ(梯梧)との類縁はなさそうだ。

*******


揺れながら花は咲く  ト・ジョンファン(都鍾煥)


揺れずに咲く花なぞどこにあるだろう
この世のどんな美しい花も
みんな揺れながら花を咲かせ
揺れながら茎をまっすぐに育てるのだ
揺れずに深まる愛がどこにあるだろう

雨に打たれずに咲く花がどこにあるだろう
この世のどんなに華やかで美しい花も
みんな雨に濡れながら咲き
雨風に打たれながらも温かい心の花びらをひらかせる
打たれずに歩める人生などどこにあるだろう


 ★ユン・ヨンシュク+田島安江・編訳 詩集『満ち潮の時間』(書肆侃侃房、2017年)より



*これまで紹介したト・ジョンファンの詩は――

「立葵の花のようなあなた」(部分)&「蔦」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1183

「教師の祈り」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1184

「靴の修理屋で」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/1327

吉野弘「生命は」[2020年06月21日(Sun)]

DSCN3700.JPG

土日の2日間は天気に恵まれた。
昨日の昼前に上の様に母木の傍らに置いたコブシの子どもたち、残っているものに水やりを、と思って如雨露を持って行ってみたら、22鉢すべて引き取られ、トレイは空になっていた。

安堵した。短い付き合いだったが清々しい出発を確かめたような気分。
この近在の方の手元で大きく育っていくことだろう。幸あれかし。

*******


生命は   吉野弘


生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている

すぐ近くまで
(あぶ)の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない


小池昌代編『吉野弘詩集』(岩波文庫、2019年)より


◆良く知られた詩。
世界は他者同士のゆるやかな結びつきで成り立っていて、時に虻と花のように、あるいは虻と彼の飛行を支える風のように、それと意識せぬまま命の連鎖を支えている。
そのことを「らしい/かもしれない」とつつましく歌う。

我々はどこか欠けた部分を持っている不完全な存在。
だがそれをそのままに受けとめる見えない蓮の葉の上にいることは信じて良い、という思いに導かれる。
「拈華微笑(ねんげみしょう)」ということばが思い合わされる名詩だ。




| 次へ
検索
検索語句
最新コメント
伊東
おべだふり (06/20) 岡本清弘
唐木順三のことば (06/13) アルピーヌ
唐木順三のことば (05/23) 根来珠青
銃剣道 歴史に目をふさぐおぞましさ (03/29) 当ブログ管理人
ジャーナリスト・安田純平さん解放との報【追記】 (10/26)
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml