石垣りん「太陽の光を提灯にして」[2026年08月14日(Fri)]
太陽の光を提灯にして 石垣りん
私たち 太陽の光を 提灯にして
天の軌道を 渡ります。
おそろしいほど深い 宇宙の闇です。
人間は 半交替で 眠ります。
一日背負っている 生きているいのちの重みは
もしかしたら 地球の重みかもわかりません。
やがて 子供たちが 背負うでしょう
海山美しい この星を。
ひとりひとり 太陽の光を 提灯にして
天の軌道を 渡るでしょう。
石垣りん詩集『やさしい言葉』(童話屋、2002年)より
◆この国では、時おり提灯行列に興じる人たちがいる。戦勝報道に沸いた戦時中の話ではない。
元号の代わる節目など皇室に絡めて企画する人々がいる。
あの、姓を持つことを許されない家の人たちが行く先々、たとえば戦後80年だった去年の秋に訪れた長崎では、数千個の「提灯奉迎」が繰り広げられたという。
それに先立つ6月の沖縄訪問では、提灯を捧げ持って集まった人々に呼応するように、あの家の人たち自身が提灯を手に宿舎の窓に姿を見せていた。
幽暗の中にゆらめく鈍く黄色い明かりは何物かを”象徴”していた。
◆石垣りんのこの詩では太陽が「提灯」に譬えられている。
深い宇宙の闇に怖気をふるわないためには、このくらいのスケールで世界を見はるかす心組みが必要だろう。
「人間は 半交替で 眠ります。」という表現も大らかで慈しみ深い。(株価や円相場で目を充血させて暮らす人々が手放してしまった眠りかもしれない。)



