井上信子の川柳[2026年04月21日(Tue)]
◆萩市役所のすぐ近くに、井上剣花坊・信子夫妻の川柳碑があった。
飛びついて手を握りたい人ばかり 剣花坊
国境をしらぬ草の実こぼれ合ひ 信子
◆剣花坊(1870-1934)亡きあと戦後まで川柳で活躍した信子(1869-1958)について、高田保が随筆『ぶらりひょうたん』で取りあげている。上の句についても紹介し、それによれば信子83歳の作という。とすれば、戦後1952年ころか。
⇒高田保「烈婦」
【青空文庫】https://www.aozora.gr.jp/cards/001073/files/48336_35091.html
高田は信子の心意気を「烈婦」というずいぶん時代がかった言葉で評しているのだが、この「国境を知らぬ草の実こぼれ合ひ」という川柳は、現代人の胸底にこそしっくり届く。国境という人工的な障壁を軽々と越えてゆくのがむしろ常態となりつつある今、戦争を止める声も国や民族の別なく広がって行く。
実がはじけて散らばった種たちが、あちこちの土に根を下ろすように、しなやかに生き抜いてゆく民草、すなわちふつうの人々こそ、排外主義の偏狭さを乗り越えて自由の空気を運ぶ人たちなのではないか。



