訪米するソーリに茨木のり子「握手」を[2026年03月16日(Mon)]
握手 茨木のり子
手をさし出されて
握りかえす
しまったかな? と思う いつも
相手の顔に困惑のいろ ちらと走って
どうも強すぎるらしいのである
手をさし出されたら
女は楚々と手を与え
ただ委ねるだけが作法なのかもしれない
ああ しかし そんなことがなんじゃらべえ
わたしは わたしの流儀でやります
すなわち
親愛の情ゆうぜんと溢れるときは
握力計で握るように
ぐ ぐ ぐっと 力を籠める
痛かったって知らないのだ
ブルガリヤの詩人は大きな手でこちらの手が痛かった
老舎の手はやわらかで私の手の中で痛そうだった
『人名詩集』(山梨シルクセンター出版部*、1971年)所収。
『茨木のり子集 言の葉2』(ちくま文庫、2010年)に拠った。
※*〈山梨シルクセンター〉とは、昨年の朝ドラ『あんぱん』で妻夫木聡が起こした「九州コットンセンター」のモデル、すなわち、のちのサンリオだ。
そこから茨木のり子の詩集も出ていたとは、一昨日、国立市公民館での『近現代詩講座 茨木のり子』の後半で、水島英己氏が同詩集から「大黒屋洋服店」を紹介なさったので初めて知ったのだった。
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◆近々訪米するというタカイチ首相の右手、黒い手袋を見ていたら、トランプとの握手など、今回は握手ナシで会談に臨むのだろう、と推測しつつも、もし先方が手を差し出して来たら、茨木のり子のこの詩を思い出し、前回の横須賀基地のようなバカな真似はもうしませんよ、という面構えで「ソーリー」とお断りしてほしいと心底願う。
自衛隊を出すことも同様に「ソーリー」で丁重に断るべし。
理由はケンメイなプレジデントは先刻ご承知の通り、お国からプレゼントされ、80年かけて磨き上げてきた日本国憲法がありますので、出来ぬものは出来ぬのです、と言えばボンクラ大統領も他の話に転じるだろう。
なおもねじ込んで来たら、「それよりも」とかわすに限る。あと、「タフな交渉術も、お国にいる間にしっかり身に付けましたので」…と感謝の念もシカと伝えてちょうだい。
――というわけで、茨木のり子『握手』、太平洋の”波濤を越えて”の旅に、心ばかりのはなむけのつもりである。



