工藤直子「ふうせん」[2026年01月20日(Tue)]
ふうせん 工藤直子
さなえちゃんが いばっているときは
まゆげが うごくから すぐわかります
さなえちゃんは ふうせんをもって
わたしを よこめで みました
それから ふうせんのひもを つんつんして
わたしに いいました
「なおちゃん ふうせん もってる?」
わたしは ふうせんを みないでおこうと おもったけど
おもったけど みてしまう
そらの あおいところで ふわふわしています
わたしは したをむいて
「さなえちゃん おしばな もってる?」と いった
さなえちゃんは やっぱり
「なおちゃん ふうせん もってる?」と いいます
わたしには ふうせんが ないのだから
なにも もっていない
せかいじゅうが さなえちゃんの ふうせんです
わたしは てに あせが でたので
すかーとで てを ふきました
さなえちゃんが もういっかい
「なおちゃん ふうせん もってる?」と いうので
わたしは もういっかい あせをふいた
『こどものころに みた空は』(理論社、2001年)より
◆この詩の「さなえちゃん」も、おなじせりふを何度でも繰り返す。
その点で、きのう「(支持率が)タカイウチ解散」に打って出た首相に似ていると思ってしまった。
◆さて、「おしばな」を持っているのは価値がなくて、「ふうせん」を持っている子にかなわないと「わたし」は思っているけれど、下を向く必要なんかないんだよ、と言ってあげたくなる。
(言ってあげなくても、かまわないけれどね。)
◆もうひとつ、さて、あなたが持っているのは「おしばな ですか それとも ふうせん ですか」と訊いてみたくなる。
(りょうほう持っていても、どっちも持っていなくても、ちっともかまわないんだけどね。)



