塔和子「地球で」[2026年01月07日(Wed)]
冬の日ざしとスミレ
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地球で 塔和子
この惑星の一つにすぎない地球で
そのほんのひとすみのことを知っているだけでも
生きているだけならことかかないのだ
書物からの知識やテレビやラジオの伝えるものを加えても
世界中の人がかなでる出来事にくらべたら
ほんのわずか
私は冬の日
カーテンをしめストーブをたき
冬眠のへびのようにじいっとうずくまって
他人の視野の外側にいる
そんな自分を思うとき
人の知ることそれは
一本の樹が芽生えて古木になるまでに
知った世界にさえ
くらぶべくもないほど小さい
『記憶の川で』(編集工房ノア、1998年)より
◆ハンセン病回復者の詩人として知られる塔和子だが、紗を通して届けられるような魂の輝きはどこから来るのだろう。
侵しがたい尊厳を感じる。



