「戦争死者376万人余」の重み[2025年11月18日(Tue)]
◆11月17日の朝日新聞、先の戦争における日本の戦死者を376万人余りとする調査を報じた。国立社会保障・人口問題研究所の林玲子所長による研究だという。
これまで戦争による日本人の死亡数を310万として来た政府見解は大幅な修正が必要となる。
従来、根拠を確かめることもなく310万人としてきたが、壊滅的な敗亡や意図的な資料処分で生じた空白を埋める研究者の努力には頭が下がる。
◆一方、日本軍が侵略したアジア・太平洋各地における膨大な戦死者の実態は依然としてはっきりとしない。
国家の責務として真実に迫る努力を怠って来た日本の不作為を補ってきたのは研究者たちの地道な資料をコツコツ積み上げる研究だ。
今回の研究結果に基づいて、歴史教科書など、すみやかに修正がなされることを期待する。
2割もの誤差が生じた事情や背景を含めて子どもたちが学ぶならば、その発展として、自国民の犠牲だけでなくアジアにおける戦争被害の実相に関心を抱く持つ若い世代が育つはず。
さらに目を世界に及ぼせば、現在起きている各地の戦争被害にまで視野は広がり、何をすべきか自分事として考える人たちが多数を占めていくはずだ。
教育の力に期待することのひとつだ。
★【記事:朝日・Yahoo!ニュース】
⇒https://news.yahoo.co.jp/pickup/6559235
◆何編か読んできた長田弘の詩集『奇跡 ー ミラクル ー 』(みすず書房、2013年)から、以前にも紹介した「Home Sweet Home」を再掲しておく。
Home Sweet Home 長田弘
敵なしにはありえない戦争。
憎しみをもって打ち倒すまで敵と戦う戦争。
いつでも戦争は、そう考えられてきた。
違う、とわたしはわたしに言った。
敵を打ち倒すべき戦争によって
危うくされてきたのは、敵ではなくて、
いつでもHomeだったのだ
Homeというのは、人が
そこへ帰ってゆく場所のことだ。
わたしはわたしに言った。戦争くらい、
Homeというものをつよく、
するどく意識させるものはない。
戦争にいったものは、死んだ者も
生き残った者も、かならず、
Homeへ帰らなければならないからだ。
それが戦争だ、とわたしはわたしに言った。
Home Sweet Homeという
ことば、知ってる?
アメリカを激しく引き裂いた
南北戦争に至る時代が生んだ歌のことば。
暗殺された悲しい目をした大統領が
愛したということば。すべての
戦争の目標は、戦闘でなく、帰郷なのだ。
わたしはわたしに言った。
紅茶にしよう。ピラカンサの実が、
日の光をあつめて、今年も赤く色づいてきた。
季節と共にある一日の風景が好きだ。
これがHomeだ、とわたしはわたしに言う。
戦争をしない国にそだったのだから、
わたしは心底に思い留める。世に
勝者はいない。敗者もまた、と。



