まど・みちお「光」[2025年11月03日(Mon)]
光 まど・みちお
手で さえぎると
じめんが暗くなるので わかる
こんなに ここに
太陽の光が 流れてきているのだ
ここに存在する
すべての物に ねだられて
一おく五千万キロの むこうから
川の水のように やすみなく
あとから あとから あとから…
だが川の水は さえぎると溢れて
激しくそれを おし流そうとするのに
光は おとなしい
さえぎる ぼくのてのひらの上に
ひよこのように ちょこなんと…
ああ 何なのだろう
光というのは
地球の夜を 消し去って
自分は無いかのようにして
ここに 昼があるというのは
このかぎりない やさしさは!
伊藤英治・編『まど・みちお全詩集』(理論社、1994年)より
◆昨日の「どうしてだろうと」と同様、「光」が登場する詩。ただし彼を主役にしてスポットライトを当てている。
光は「ひよこのように」「ぼくのてのひらの上に/ちょこなんと」のっているのだという。(みごとなたとえが、かくもさり気ない!)
そのように「おとなしい」存在に「このかぎりない やさしさ」と賛嘆を惜しまない。
こんなにも無私で、いきものをへだてなく祝福してくれるものを他に知らない。



