見上司「ROUTE58」[2025年10月10日(Fri)]
ROUTE58 見上司(みかみ・つかさ)
ゆうぐれ
海をみながら
詩のように走るのだ
いちにち
あそびつかれたこどもが
みたされたきもちで
帰るだろう
そうして
夕やけ雲にてらされて
そらがうすあおく
天蓋をおおい
やがて藍いろになずんでいく
ぼくは宇宙をかんじる
音楽のように
そして
とおい故郷の
海ぞいの道を
おもいだすのだ
『虹のような日』(土曜美術社出版販売、2023年)より
◆ROUTE58=国道58号線とは沖縄の幹線道路だが、国道としては鹿児島からフェリーによって種子島や奄美大島を経て那覇にいたる「海上国道」だ。総延長880km超のうち海上部分が7割を占めるという。
◆詩集のあとがきによれば、詩人は秋田生まれの人。沖縄普天間中学校での教職経験を持つ。
それぞれの地で見た夕暮れの海、家路に向かう子どもたちの姿は、記憶の中に幾重にも重ねられているのだろう。
その中には少年の日の自分もいる。
子どもたちのくちずさむ歌が天蓋に響く中、そらが青〜藍へと深さを増してゆき、やがて海の道と一つになる。
時間と空間をつなぐ詩のことばが、宇宙にじかに触れている。



