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三好豊一郎(茨をきりひらく)[2025年09月30日(Tue)]


(茨をきりひらく)  三好豊一郎


茨をきりひらく
瓦礫の土を掘る
身をこごめ のびあがり 打ちおろす
掘りだし 掻きおこし はねあげる
茨の根は執拗にはびこる陰惨な記憶だ
それをたち切る
石くれは怨恨のかたい骨のごとく手強い
それを打ちくだく
地虫はおびえる神経の触角だ
それを踏みつぶす
万難にうち克つ忍耐と努力をかたむけて
ふかく ますます深く 掘る 掘りすすむ

 なにかあるのかね?(発見の必要は無限だ)
 いや
 塹壕かね?(敵はいたるところにいる)
 いや

みずからの手でみずからを律することが
最後の証しとなるとき
自恃ある精神が大地の意志と一つになることが
最良の手段となるとき
肉体はたちあがってあるき出す
みずみずしいみどりの感情も枯れ
内部にくらい洞
(ほら)をかかえた古い
腐った巨木が倒れるように
その底に横になる


  現代詩文庫『三好豊一郎詩集』(思潮社、1970年)より


◆とらんぷ米大統領がガザ停戦を含む20項目の計画を発表したという(9月29日)。
その2つ目に次のようにある。

 〈ガザはすでに十分な苦しみを受けたガザの人民の利益のために再開発される。〉

まだリゾート開発計画を捨ててはいないようだ。
それを実行に移すにせよ、言葉を弄んで時間を空費しただけに終わるにせよ、この詩の第三連はその通りになるだろう。

その5行目までは、パレスチナの人々の姿に重なって見えることを禁じ得ない。
「自恃ある精神が大地の意志と一つに」なり、「たちあがってあるき出す」彼ら。

それに対して「くらい洞をかかえた」まま「腐った巨木」のように倒れるのは、無辜の人々を踏みつけた傲れる大国の末路であるとしか考えられない。


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