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三好豊一郎「抗議T」[2025年09月29日(Mon)]


抗議T   三好豊一郎


壊れた甕をみたす灰は?
霜柱をくだくように飛散する光は
ただれた皮膚からふきだす血は

 それらは何を約束するか

地球が回転する軽石にすぎなくなるとき
光が灼熱の闇のなかへ地平線をかりたてるとき
心臓がもぎとられた巴旦杏にすぎなくなるとき

島が沈み 渦が吠える
空が割れ 鳥が落ちる
海が燃え 魚が溶ける

 それらは何を予告するか

蜜蜂の翅音が樹立をひきさく悲鳴に変わるとき
愛する女が愛の姿勢のままに崩れる壁にのめりこむとき
見開いた眼がみひらいたまま銃のない銃眼に変わるとき

 きみはみるだろう

人間の悔恨が人間を追いぬいてその行手を断ち切るのを
人間の皮膚が人間のあたたかい共感を消しさるのを
人間の頭が身をぬきとられたかき殻にすぎなくなるのを

猜疑と憎悪と
支離滅裂の
冷酷な狂人

うらぎられた人間の叫び声
その願いと その情熱
その希望と その恋を

 きみは聴くことができるだろうか

そのときすでに死の製造機械にすぎないだろうきみは…
だがわれわれは 生きながら
死の椅子にすわることを拒絶する


  現代詩文庫『三好豊一郎詩集』(思潮社、1970年)より


贅言は不要。詩人とともに次の二行を世界に向けて宣するのみ。


だがわれわれは 生きながら
死の椅子にすわることを拒絶する




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