• もっと見る
« 2025年05月 | Main | 2025年07月 »
<< 2025年06月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
草間小鳥子「つまらないもの」[2025年06月19日(Thu)]


つまらないもの   草間小鳥子


はなせ
お前が握っているのは私の手ではなく
わずかに残された尊厳

練習をすれば慣れると教わった
歩くのも 跳ぶのも
蝶々結びも
目に映るものを見つめないこと
胸の奥で固く目を閉じ
相手の口を塞ぐ
すごい ほんとうだ

物の価値は上がり続けるのに
ひとの価値は下がるばかりで
粉々に打ち壊した町の断面から
暮らしがこぼれてゆくのを見てはじめて
ここはすでに墓地だったのだと気づく

だから
はなせ
お前が握っているのは私の手ではなく
すり切れた感受性
お前がつまらないものだと思うよりずっと
危険だ


 『ハルシネーション』(七月社、2024年)より


◆「わずかに残された尊厳」が、「相手の口を塞ぐ」とは、傷ついた尊厳それ自体を最後の武器として、敵に立ち向かうということだ。

それほどまでにギリギリのところに追い詰められてなおも、人は闘う。
老若男女を問わず、素手で闘う。

◆今朝の朝ドラ『あんぱん』の少年はピストルを持っていた。
衝撃だった。闘う理由は、この詩の主人公と同じに思えた。






| 次へ
検索
検索語句
最新コメント
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml