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上林猷夫「戦争記」[2025年06月11日(Wed)]

◆日本学術会議法案、今日6月11日、参院本会議で可決させたという。
また一つ国家衰亡の一里塚が加わった。
学者の衷心の訴えに耳を傾けない政府・与党もヒドイが、危険の中味を伝えないメディアの腐敗もヒドイものだ。

参院内閣委通過を伝えた昨日のNHKニュースの見出しがその最たるもの。

日本学術会議 国から独立した法人とする法案 参院内閣委で可決

とあった。
「国から独立した」という表現は偽りの看板に過ぎず、中味は、総理大臣が任命する監事が業務を監査する規程を入れたことによって政府の関与がいくらでも可能な仕組みになっている。だからこそ学者たちから反対の声が湧き起こった。

先の戦争の悲惨を記憶から消してはならない。その念に発する科学者の良心を大切に思うならば、坂田学担当大臣の憲法抵触発言を批判的に伝え、法案の危うさを徹底的に報じるのが公共放送責務。
伝えるべきを伝えない御用放送は受信料を視聴者に返還すべきだ。


*******


        かんばやし みちお
戦争記  上林猷夫

    ――伊藤桂一氏に


俺は今でもはっきり思い出すことが出来る。
あの夜の憎悪に満ちた空の色を――
そして
川の両岸から炎は押し寄せ
無数の死が橋の上ではち合わせをしたことを――
俺はその傍をそっとすり抜けてきたが
あの屍臭は
今でもべっとり衣服に染み込んだままだ。
「オ帰リナサイ
 生キテイル亡霊」――
大陸の戦場で兵士たちは銃を投げ捨てたが
 この山は
 死ぬるに寂し
 水湧かず鳥鳴かず
 樹に雲も逝かざれば
と歌った詩人の顔が透き通って見える。
また生ぬるい風が吹いてきて
暗く長い長いトンネルが見える。



  『上林猷夫全詩集』(潮流社、1976年)より

 *「この山は〜樹に雲も逝かざれば」は伊藤桂一(1917~ 2016)の歌。
  中国で亡き戦友を荼毘に付した折の歌と思われる。

◆「暗く長い長いトンネル」に向かっている我々――そう書くだけなら未だ抽象的だ。だが、頰をなでる「生ぬるい風」を覚えたとき、汗が一斉に引き、体の芯からこわばるのを感じないわけに行かない。






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