
カヴァフィス「窓」[2025年05月30日(Fri)]

クラピアという日本産の花らしい。
在来種のイワダレソウを改良したものだとか。
葉も花も丈低く、地を緑で覆ってくれる。
花の名は、これを創生した倉持仁志氏にちなむのだろう。
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窓 カヴァフィス
池澤夏樹 訳
暗い部屋から部屋をうろついて
重い日々を送りながらわたしは、
あちらこちらと窓を探しまわった。――開いた
窓は心を慰めてくれるだろう。――
しかし窓はなかった、あるいはわたしに
見つけられなかったのか。その方がよいのかもしれない。
外の光はまた別の圧制者かもしれない。
新しいものの正体がいったい誰にわかるだろう。
池澤夏樹 訳『カヴァフィス詩集』(岩波文庫、2024年)より
◆破壊と殺戮の現代にこの詩を置いて読むとき、「外の光」の正体を知りながら、手出しも口出しもしないのはいつも「わたし」ではない人間で、――それを「人間」と呼ぶことが可能だとして、だけれど――いつも「無関心」という仮面の下に素顔を隠している彼らは、その仮面を「わたし」に向けてぐるりを囲むことで窓をふさぎ圧制者のかばい立てに加担しているのだ。
*コンスタンティノス・カヴァフィス(1863-1933)の詩との出会いからこの詩集へと実を結ぶまで実に60年の息の長さでこつこつ紹介し続けた訳者・池澤夏樹氏に感謝。