
シロバナマンテマ[2025年05月27日(Tue)]
![]()
![]()
![]()
![]()
![]() |
![]() シロバナマンテマ[2025年05月27日(Tue)]
![]() 木下裕也「魂」[2025年05月27日(Tue)]
魂 木下裕也 壊れてしまった魂を さらに壊そうとする わるい力が わたしたちの社会 わたしたちの身近な場所にも 働いている 壊れてしまった魂が すぐ隣にあることに わたしたちは気づかない 壊れてしまった魂も 流行の服をまとい 布の鞄に入れた文庫本を 電車の中で取り出したりする あたりを見回して 集まっている人々に 調子を合わせたりもする 壊れてしまっているので もう泣くことも 叫ぶこともせず 静かにしている 壊れてしまった魂を抱えて ひとりの若者が電車を降りた が 壊れてしまった魂は まだいくつも 電車に揺られている 詩集『梯子』(土曜美術社出版販売、2022年)より ◆電車の中で揺られている「壊れてしまった魂」が見える人は、自らも〈魂が壊れてしまった〉経験を持つ人だろう。 同時に、そこから恢復を果たした人でもあるだろう。 そうして、いつまた、その崖っぷちの風を受けることになるか、震えつつも、それに耐えることが不可能ではないことを知っている人でもあるだろう。 ◆若者の「事件」が続いている。 その一方で、壊れてしまわないために「無関心」という胞衣(えな)の中から出たがらない人が増えているようにも思える。 「壊れてしまった魂を/さらに壊そうとする/わるい力」の暴威を止めるには、見えないものに向ける想像力が要る。
| 次へ
|
![]()
![]()
![]()
![]() ![]() ![]() ![]() |