
宮本益光「うたうこと」[2025年03月30日(Sun)]
境川べりのソメイヨシノは昨日の冷たい雨で足踏み。まだ三分咲きというところ。
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うたうこと …平和へのソネット
宮本益光
いろいろな名前の海があるけれど
もとは一つの水だった
魚はそれを知っていて
だから自由に泳ぐのさ
いろいろな名前の国があるけれど
もとは一つの土だった
鳥はそれを知っていて
だから自由に渡るのさ
せめて僕らは
この空気
自由に吸おうか
誰かが小さな嘘ついた
誰かが鼻歌うたってた
僕らと同じ空気を吸って
『樹形図』(らんか社、2017年)より
◆オペラ歌手・宮本益光の詩集だ。
◆最終連、同じ空気を吸うのが「小さな嘘」どころか、息するたびに大嘘をつく輩であったとしても、あるいは、鼻歌うたう新婚さんなどでなく、口角泡飛ばして人を打ち負かさずにいられない口舌の徒だとしても、
それでもなお同じ空気を吸うことを彼らにも自分にも許していかなければ。
息する自由を禁じる権利は、誰にもないのだから。