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佐々木洋一「たちまち通り」…〈涼しい男〉[2025年01月15日(Wed)]


たちまち通り  佐々木洋一


たちまち たちまち
たちまち木は剥ぎ取られ
たちまちブルドオザアが唸り
たちまちぐわあぐわあがああ
たちまちビルが建ち
たちまち熱は呻き出し
たちまち夢はひん曲り
たちまち人が群れ
たちまち裏町が生まれ
たちまちネオン街
たちまち たちまち
たちまち通り
一人の涼しい男があたふたと
通り抜けようとしもみくちゃにされ
たちまち呑み込まれ
涼しい男はほうほうの体で先に進もうと
だが たちまち通り
先がない
歩んでいるのに先がない
ふっと涼しい男
立ち止る
しかし
人は群れ人はどよめき人はざわわ
たちまち涼しい男は先に突き落され
人の群れはなだれ込み
たちまち人々は消え失せる
たちまち たちまち
おおおい どうしたんだよおお
たちまち通りは
ただ 淋しい



日本現代詩文庫『佐々木洋一詩集』(土曜美術社出版販売、1997年)より


◆函館に石川啄木ゆかりの立待岬(たちまちみさき)があるが、それとこの詩の「たちまち通り」は関係があるのかないのか(直接の関係はないだろうな、きっと。でも修学旅行か何かで行ってみた遠い記憶が作用していることはあるかも知れない)。

それはともかく、「たちまち」変貌を遂げてゆく「たちまち通り」である。クレイアニメを見ているみたいに町の姿はあっという間に姿を変え音が炸裂し人々が激しく行き来する。

この通りを抜けようとした「一人の涼しい男」というのが謎だ。クールに気取ったふるまいをしているのか、周りとは無縁の冷静さが際立つのか(その割にはこの通りの喧噪に巻き込まれてあたふたしている)、いずれにしても謎だ。
それ以上に彼に降りかかった運命が謎だ。通りには「先がない」。「通り」とは文字通り、そこを通ってどこかに通じているものであるはずなのに、いきなり途中で切れて、奈落に転落するしかけになっているみたいだ――というより、「先に突き落され」て、群れる人々をたちまち奈落になだれ込ませるきっかけを与えられた人物であるようだ。子どもたちを引き連れて湖かどこかに消えてしまった笛吹きみたいな男――本人の慌てぶりはさておいて、運命として彼に与えられたものこそは、「涼しい」顔でやりおおせなければならないミッションだった、ということか。

――そんな想像を連ねているうちに「涼しい男」のハッキリしていなかった目鼻立ちが、イシバ首相の顔となって見えて来た。彼もまた「終わりの始まり」を全うする任を負わされている「涼しい男」なのかも知れない。




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