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四國五郎「ペチカ」[2024年10月29日(Tue)]

◆雨が冷たい。ほとんど動かずに雨音が聞こえなくなるのを待つ一日。

TV、MLBの第3戦は飛び飛びに見た。選挙が終わってそればっかり、という批判も多いとか
――そりゃそうだ。野球でないとすれば、闇ばいとやタレント追っかけのニュース、ゲームがどうのこうの、食べ物がああだこうだ……
いま、この時間も暖かなスープどころか、ひとすくいの水も、ひとかけらの食うものも無い人たち、何らあてどなく追い立てられる人々。


ペチカ  四國五郎


ぬくもりに
頰をよせる
やさしさをこめて

戦友よ
さりげない顔で読まなくてもよい
恋人からの便りは
くりかえし
笑みをたたえて読みたまえ

おそらくは
月の数で死が数えられるがゆえに
え言わずして別れた
いとしいひとよ
空想のなかではすべてを語り
不吉なやさしさをこめた眸のまたたきに
よろこびをこめてくれたものを

なみださえ凍てつくこの地に
ただひとつ身をよせ
いてた頰をゆるめ
まぶたの裏をぬらし
凍傷をときほぐし

ここだけが
ぬくもりにみち
ここだけに
やさしさがある


四國 光 『戦争詩』(藤原書店、2024年)より


◆第3連、「月の数で死が数えられる」とは、いったん戦場に送り込まれれば、数ヶ月、よくても1年も経たないうちに戦死者としてカウントされておしまい、という意味だろう。
冬に突き進めば月数はさらに減じる。月どころか日数でカウントダウンされかねない厳寒の地だ。

他の詩では「名誉は/おのれの体温と等しくある認識票の/ぬくもりの うつろう日」という詩句もあった(「軍隊内務令」)。「名誉」の戦死によって、兵士の認識票(アルミ製の身元確認用の札)が帯びていた持ち主の体温も、たちまちその札から離れていってしまう。


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